8/20 ショータイム再び②
「好きだと思う。
そばにいると楽しいし、知らない世界が見える。
出会えて良かったと思うし、これからだってそばにいたいと思う。
だから、
ちゃんと友達になりたいんだ」
軽くバトりながらの口説き文句。
その言葉の口調と音に照れや躊躇いは一切感じられない。
あくまでも真摯に告げられる言葉。
はっきりいえば聞いているノワールの方が恥ずかしくなりそうだ。
「くどい! 友人になどと考えたこともない!!」
羞恥を隠すかのように叩ききられる告白。
バトル武器はカラスマントはマントを駆使。
ノワールはストールのような布を武器として操っている。
「考えたことがないんなら考えてくれればいいだろうが!」
少しムッとしたのか、カラスマントが勢いをつけて踏み込む。
捕まえようと伸ばされた手を掻い潜り、勢いをつけて足元をストールで払うノワール。
たたらを踏むように崩された体勢のカラスマントの肩を支点にその背後へとジャンプし着地。
「考える余地はないよ。いいかげん、物分りが悪いよね」
首を傾け見下ろすノワールとそれを見上げる体勢のカラスマント。
子供達はアクションに。
少し腐女子の観客はその光景に歓喜の声をあげる。
「それでも、ノワールと友達になりたい。そのための物分りの悪さやかっこ悪さは厭うべきものとは思わない!」
仮面越しで表情が見えない。
どこまでも本気の声とノワールに向けて差し伸べられる手。
その伸ばされた手を引き上げ、立たせながらノワールは息を吐く。
「むり」
言葉と同時にカラスマントの足元を捌き、砂上に投げ飛ばす。
転がるように受け身を取り、そのままノワールの足元に蹴りを入れ返すカラスマント。
そしてマントを大きく捌き、視界を塞ぐ。
ばさり
「なっ!?」
タイミングを見て外されたマントがノワールに纏わりつく。
「捕まえた」
◇◆◇
「美人ばかりで海の家やってるんだってね。大変じゃないかい?」
「みんなでやってますし、皆さんに手伝ってもらってますから大丈夫ですよ」
天幕内ではパイプ椅子に座ってのんびりおしゃべり。
「総督さんは観光ですか?」
「せっかく夏休みだからね、孫と遊ぼうと思ったんだよ。呼んでも来ないから、こっちからね」
「お若いおじいちゃんなんですね」
「いやー。格好だけは若くある努力をしているよ」
若いというよりチンピラ風だ。
「ああ、勝負がつきそうだね。最後は、反逆されたか」
不思議そうな空に笑いかける総督。
「まぁあの妙な空間に他の出演者は厳しいだろうしなぁ。ひと暴れしたかった気もするが仕方ないな」




