混線中3
「紬ちゃん」
うん。言葉が出ない。
「ごめんなさい」
ビーチを歩きながら謝罪を聞く。
紅い和傘が紬ちゃんの表情を隠す。
「相談しとこうと思ってただけだったんだけど、逸美がいたものだからね。うん。つい?」
つい。ですかー。
「あのさ、俺、今日人に会う約束があるんだけど、たぶん、時間はかからないと思う。場所はモールだしさ」
紬ちゃんが足を止めている。
「用事終わったら、一緒に気分転換する?」
「アリガト」
紬ちゃんが可愛い。
少しでも元気になってくれるといいな。
「あ」
ん?
「ウチの両親が」
?
「鎮君、泊めてもいいって言ってたから、いつでもきてね」
ありがとう。
笑顔で言われてもなんか娘溺愛なあのおじさんは恐いので遠慮します。
「じゃあ、モール行こう。ここで止まってても濡れるしな」
夏の雨はじっとりとまつわりつくようで嬉しくはない。
「混んでる、かな?」
「だろーな」
傘を受け取り、支える。
気分は重い。
あいつに会うのはこれで三回目。
「映画? それともショッピングメイン?」
紬ちゃんが笑う。
「あのね、美味しいアイスクリーム屋さんに行きたいの。ジェラートが美味しいんですって」
「おお。甘味はいいねぇ」




