8/10 混線中2
「アレ、一番ぱにくってたのってさー」
「鎮さん、だったね」
公志郎が笑いながら鎮兄から預かったインカムを渚ねぇに渡している。
渚ねぇも頷いてる。
「じゃあデート相手、別? それとも二股?」
疑問だ。ていうか鎮兄の場合、ただの待ち合わせでも「デート」って言いそうだしな。
「んー。さぁ? つーかテラス席がさすがにうざい」
隆維がそう言いながら宗一郎さんのほうへ行く。
「宗兄ちゃん、鎮兄の付き合ってる相手知ってる?」
「そんな暇、なさそうだったけどなー。まだ帰ってきてないんだ?」
まだ絶賛家出続行中だよねー。
視線、そらしてたけど、ちらりとテラス席を見れば、テーブルに突っ伏している千秋兄の友達。
海ねぇの焼きそば冷めるじゃん。
「暇がない?」
隆維が不思議そうに宗一郎さんに先を促す。
「なんか、新聞配達の手伝いに借り出されてるらしくて生活パターンがってぼやいてたし。あと、最近、メールのやり取りが多いっぽい。SNSかもだけど。コンテスト前まではあの受信音はなかったから最近増えた知り合いかな?」
友達じゃないって言い張る割には情報を把握してる宗一郎さん。
「鎮兄。相変わらずだね」
家出中に新聞配達にいつもどおりのARIKA手伝い。夜はどこかに転がり込んで就寝?
そんな生活パターンなら恋人作ったりとかはしてなさそう。
そこまでゆとりがあれば、帰ってきてるだろうしなー。
芹香がゆとり無くしつつあるからちょっと心配なんだけどな。
おばさんも引っ込んでるし、父さんも最近でかけてること多いし。
「千秋兄」
「ん?」
気がつくといつの間にか隆維がテラス席の千秋兄のところに行っていた。
「涼維」
横から公志郎に声をかけられる。
むこうの様子も気になるけど、あとで聞こう。
「なに?」
「問題を抱えてるのはどっちだ?」
小さな声。
他に聞こえないよう意識された声。
「天音ちゃんを傷つける可能性のある問題なら許さないし、認めない」
周囲の雑音が遠のく。
「公ー。洗い物増えてきたー」
「あ。すぐ行くー。天音ちゃんは拭いてねー」
ポンッと肩を叩かれる。
「お客さん増えてきたねー」
手元にインカムが落ちてくる。




