8/10 混線中
「千秋。何が悪かったのかな?」
「うん。たぶん告白を遮っちゃったことじゃないかな?」
海ねぇ特製海鮮やきそばを食べながら、逸美がボヤく。
友達としてそばの席に座って聞いている。
席はテラス席の隅っこ。
周りの目が生ぬるい。
カラスマントも妙に居心地悪げに接客している。
意識をこっちに向けているのがわかる。喧嘩中だよな? まだ。
先輩は逸美が引き篭もり志望なのを知ってて告白しようとしたわけだから素直に「はい」と答えてればよかったんだろうにな。
両想い。か。
サツキさんと一緒に……ぁー高望み高望み。
今の作った料理を食べて笑顔をもらえることに満足しとかないとな。
今日まで散々メールで相談。
『泣き出して謝られて走り去られた。状況がわからない』
そんなメールをいきなり貰って俺もわかんない。
そして今日はとうとう部屋から出てきて泣きつきにきた。
中学で出会って穏やかな友人づきあい。ほのかな恋心を経て告白はしてないが付き合っているような関係。と、とんとん拍子で進んでいて。将来はお互い結婚までなーんて少なくとも逸美が思っていたのは知ってる。
その行動力で先輩にアタックすればいいんじゃないか?
……
無理、かな?
サツキさんにアタックって答えを聞くのこわいしな。
ああ。人のこと言えないな。
「太陽さーん」
「どーしたの?」
「呼び出しきたからデート行ってきていい?」
え?
「鎮、彼女とかいたっけ?」
首を傾げる逸美。
確かに最近の鎮の行動は見えない。
時々、ラジオ体操にもいってないらしいし。
休憩時間にスマホを操作してる姿もよく見る。
『声も聞きたくない』
そんなことを言われてまで気にかけるのはむかつく。
少なくともあの夜からまともに目を合わせてない。
というか、まともに目を見て話をしたのはいつだったのかと思うとなんか沈む。
もしかして、あのクトゥルフの夜からまともに目を合わせていなかったかもしれない。
その前はどうだっただろう?
「ち、千秋?」
逸美の声に顔を上げる。
逸美の視線の先には加藤紬先輩がいた。
青いワンピースとジャケット代わりの白いワイシャツ。普段はみつあみお下げをサイドできらきらしたヘアアクセでまとめている。
「あ。紬ちゃん、そのコームかわいいじゃん。似合ってるー」
カラスマント装備を隆維に預け、笑顔で先輩を褒める鎮。
まぁ、褒めどころだとは思うけど。
「鎮君とショッピングデートだもの。褒めてくれてありがとう」
先輩はかすかに頬を染めて言い切るとぽふっと鎮の懐にすり寄った。
一呼吸置いて先輩は鎮を見上げる。
「お手伝い抜けても、大丈夫?」
え?
ええ?
まじ?!
サツキちゃんで妄想発動
舞台はARIKA




