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拝啓 終焉

 敵のアジトを発見した。そう連絡を受けたのはゲオルクとの練習試合から3日後の朝だった。

 ルーペントとゲオルクの部屋で会議を開く。

「どうかな、傷の治りは?って聞くまでもないか」

 2日目から包帯も取り自由に動き回ってるゲオルクに調子を聞いてみる。

「おう、俺はオーガの血が混じってるからな!傷の治りも速いのよ」

 びっくりして二の次が告げない。

「こいつなりの冗談だ。いつもうけない」

「なんだ……本当かと思ったわよ。私の魔法を使ったのに生きてるんですもん」

 俺の恋人は俺の隣が指定席になったのがここ数日は人前では甘えてこないのだが、何処にいくのにもついてくる。

「おまえこそ大丈夫か?この三日でやつれてきてるぞ」

 にやにやした顔で言ってくる。

 訳知り顔で言ってくる。思わず動揺して席から落ちそうになった。

「大丈夫よ、寝てる間に私が調合した薬剤を飲ませてるから」

「ほう、疲労回復の薬剤なら興味があるな、エイミー君今度僕にも売ってくれないか?」

「材料が珍しいからちょっと値段張るわよ」

「それってあれか?なんだ、その。普通の奴に使うと、元気になりっぱなしなるのか?最近元気がなくてな」

「やーねー。そんな事はないと思うわ、前に時貞で試したし」

 あの晩から俺の事は以前より名前で言ってくる事が多くなった。

 三人共俺の会話を本人の前で俺を除いてしないでクダサイ。

 本人が居ない所で言われても困るのだが。

 しかも超プライペートな事じゃないですか。彼女に居たっては俺で試してたらしいし。

 下らない会話をしていたが、突入は明朝に決定した。

 朝方の警備が手薄と思われる時間に一気に肩をつける。そう作戦を決定した。


 敵のアジトはゲオルク達が襲われた森の中にあったらしい。

 しかも、此処数十年使われていない魔道協会の隠れかの一つだそうな。

 灯台下暗しとは良くいったもんだ。

 今回の発見もアルム爺さんが協会内を探って貴族と内通してる奴を締め上げたと聞いた。

 そして暗い話だが、今回は秘密裏に行ってほしいと。

 つまり、正規の軍隊は使えない。いや、使わないと言ったほうが正しい。

 敵を捕まえる必要は無いのだ。

 その言葉を聞いて、俺達四人は真剣な顔になった。

 失敗したらアジトを発見された敵の親玉ラズカンはまた雲隠れする可能性が高い、そうなると今度は見つからないかも知れない。

 勿論俺達もその時は命は既になくなっている。

 

 夜の内に宿屋を抜けて徒歩で進む。宿を旅たつ前に店主から一枚の便箋を受け取った。

「兄ちゃんに渡せって頼まれた」

「はぁ」

 全員で森の中を歩く。

 意識はしていないが、先頭からゲオルク。ルーペント。俺。そして最後にエイミーの順番で歩いてる。 戦士。戦士。戦士。魔法使い。なんて偏ったメンバーなんだ。商人や回復が使えそうな僧侶。いやここは旅が楽しくなる遊び人でも良かったのか?一人真剣に考える。

「手紙だれからだったの?」

 俺に追いつき声をかけてくるエイミーに一気に現実に戻される。

 そういえば、まだ確認してない事を思い出した。

「いや、便箋には何も書いてない」

 中を開けて広げて読んで見る。

 『アルムじーちゃんから可愛い孫娘の一人内の愛を全部もっていきよって、じーちゃん明日から寂しくて倒れそう。』

「…………」

「…………」

 二人して無言になる。

「多分、私達に密偵を使ったわね」

 俺は次にどんな顔をしてアルム爺さんに会えば良いんだよ。

「あ、したにも小さく書いてある」

 『私情になるが、作戦は失敗してもいい。おぬし達四人は生きて帰れ。』

「もう馬鹿ね。作戦は成功させるし、四人とも生きて帰るに決まってるじゃない」

「士気をあげるのにも、前の二人に伝えてくるね」

 小走りに走るエイミー。

 俺ってはつぐつぐこの世界の人に愛されてる。

「いや、もう俺もこの世界の住民だ」

 手紙を丁寧にたたみしまい込む。


 先頭のゲオルクが立ち止まる。

 静に顎と指を使って小さな二階建ての建物を指を指す。

 建物の前ではゴブリンが門番をしている。

 事前にもらった情報では地下も同じく二階。この建物の中にラズカンがいる。

 窓には黒いカーテンをしているが、所々に光が洩れてる。

 俺達四人は顔を頷きあう。

 黒いフードで顔を隠し、暗闇から建物を見詰める。

 これじゃどっちが悪党なのかわからない格好だ。

 

 仕方が無いとは言え人を切る事になる。場合によっては殺す事になるだろう。

 そこから生まれる悲しみを見てきた俺としてはため息がでる。

 横にいるエイミーが「大丈夫?」と目で合図してくれてる。

 俺も黙って頷く。

 ゲオルクのが指を五本立てている。

 それを順番に折っていく。

 カウントダウンが零になった時、俺達は一気に門へ向けて走り出した。

 ゲオルクとルーペントがそれぞれゴブリンを一太刀に切りつける。

 鍵が掛かっているだろうドアへエイミーが爆風の魔法で破壊する。

 そしてその中を俺が一番で乗り込む。

「ラズカンと同じ考えの奴以外の命は入らない!向かってくるなら土に返ると思え!」

 腹の底から思いっきり叫ぶ。

 ルーペントに言わせると、『殆どは金に雇われた奴と下級モンスターだろうと。ラズカンを倒してしまえば傭兵は逃げるはずだ』と。

 そこでワザと向上を述べて逃げる傭兵は見逃そうと話しなった。

 誰だって切ったり切られたり、生きるか死ぬかの事は少ないほうがいい。 

 建物に全員入った頃には地下から傭兵崩れが向かってきた。

「下は俺達二人に任せろ!」

「上を頼む」

 ゲオルクとルーペントに頼まれ上へ急ぐ。

 急いで二階に上がるといかにも後から作りましたと。と直ぐわかる豪華な扉があった。

 ここは少し下がってエイミーに任せる。

 爆風と共に豪華な扉はあっさり破られる。

 部屋の中には後ろ手を組んだ老人が一人いた。

「何者じゃ!」

 質問というより、恫喝に近いだろう。扉が壊されたからといって動じない姿で俺達に問いかけてきた。

「何者かは、貴方自信が知ってるはずです、ラズカルさんですね。残念ながら今回は逮捕以上の事になります。

 俺は剣を構えてラズカルとの距離を測る。

「ふん!アルムの血縁者か!」

 エイミーのほうを見て睨みつける。

「まぁいい。此処が発見された時点でここでの勝負は付いた。が、何故お前らゼーゼマン家は毎回毎回邪魔をする?」

「何故力あるものが我慢をしないといけない!」

「何故選ばれた人間が奴隷と同じ生活をしないといけない!」

「ゼーゼマン家だって全員が同じ身分ではなかったはずだ!」

 エイミーを睨みつける。

「そ……それは……」

 エイミーも言葉に詰っている。俺もその迫力にまけて斬り付けに行けない。

「力こそ全てじゃないのか?お前らこそ力があるから此処を襲撃してるんじゃないのか?」

「だからこそ、力がある俺に殺されるべきだ!」

 突然手を後ろ手が前に出される。その手には拳銃が握られている。

 発砲音が連続でなる。

 俺はエイミーを守るように廊下に逃げる。

「大丈夫か!」

「ごめん。足やられちゃったみたい」

 見ると足首から血を流している。

「ち、逃したか。小僧どうだこれこそ力だ!選ばれた人間だけが使える力なんだ!」

 壁越しにラズカルの声が響く。

「あいつらも、アルムのせがれも良い物を作ったわ、俺に相応しい力だ!」

「わざと戦乱を起したかいがあったな」

「この力を使って全てに復讐してやる!」

「まずは小僧と小娘お前達からじゃ!」

 おそらく弾も再装填しながら撃っているのだろう。

 威嚇の為なのか遠くから撃って来てるのが分る。俺達の隠れてる壁がじわじわと削られている。

 『お手上げね』エイミーが呟く。

「向こうの壁を壊すから、貴方だけでも逃げて」

 青い顔をしながら微笑んでくれる。

「あのねー……」

 俺はため息とともにエイミーを見る。

「どーして、君は俺の気持ちを無視するの?」

「元の世界へ帰れから始まって、告白もキスも君からだし」

「そもそも俺だけ生き残ったら、この世界に居る意味ないでしょ」

「何のために苦労してここに居ると思ってるの?」

「大丈夫、多少怪我はするかもしれないけど、愛するエイミーの為に頑張るから」

 最後は赤面しながらキスをする。

 心此処にあらずのエイミーから少し離れる。 


「ラズカル!」

 大きな声で叫ぶ。銃弾がやむ。

「なんじゃ」

「難しい事は俺にはわからないけど、力あるものこそ自分の為に使うのじゃなく、人を導く者と思う」

「力があるからって何をしてもいいとは思わないんだ」

「人には身分があっても、それでも皆精一杯生きてる」

「それに……その銃を作った人達は自分達を特別な人とは思ってなかった。力を持っていても皆守る為に使っていた」

 

「世迷言を、それがお主の遺言か?」

 ラズカルが叫んでくる。

「ああ。あんたのな!」

 俺は扉の合った場所に飛び出すと、中腰になり腰に隠していた銃を構える。

 ラズカルの目が驚いてる。

 俺に発砲する動作がゆっくり見える。

 このさい何発かは受けるつもりだ。

 ラズカルの心臓に狙いをつけ銃弾を全弾打ち込む。

 

 俺はラズカルの銃弾を受け後ろの壁に吹っ飛ぶ。

「時貞!」

 足を打たれて動けないエイミーが懸命にこっちにこようとしていたのが見える。

「大丈夫、肩と足をちょっと打たれただけだから」

「あいつは……ラズカルは倒した」

 その言葉を聞いたのかちょっとほっとしてる。

「私、過去で修行したって聞いたけど。拳銃の事とかきいてないんですけど」

「傷が治ったら詳しく教えてもらえるかしら?」

 地下も終ったのだろうゲオルクとルーペントが走ってくるのが見える。

「まずは一安心だな」

 誰に言うわけでも俺は呟いた。

 


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