拝啓 仲間
「どういう事が説明してもらいましょうか」
ベッドの上で足をく組むお姫様事エイミー。
その顔は少し怒ってる。
ゲオルクとルーペントもそれぞれ壁に寄り添ったり、椅子に座ったりしている。
俺はというと何故か床で正座。
「なんでここに居るのよ。それにその装備と体系、とても数日じゃ考えられないわ」
「確かにそうだな僕がみた時貞君はもっと普通の人だった」
ルーペントが言葉を選んで言ってくれる。
「軟弱だったな」
ゲオルクはストレートに伝えてくる。
言葉に詰る。
「えーっと、なんていうか送られて目が覚めたら過去に居たんだ。そこで生き残るのに修行を積んだら、君のお爺さんにあってね」
「なんとか未来に帰る方法を探してもらったんだ、んで帰ってきた」
「それで、そのお返しに今回の作戦に入れてもらった」
「装備は会長から借りた」
一同無言になる。
嘘は言ってない。ただ、やっぱあの夫婦に会った事は黙っておくべきだろう。
「それを信じろと?」
白い目で見てくるエイミー。ミラーに似てる。
そういえばベスはどちらかと言えば斉藤さんに似ていたな。
「まぁ時貞君も相当強くなったみたいだし、信じるしかないでしょう」
「たしかに、前よりも修羅場を潜った顔だ。最近の冒険者にはない気迫はあるな」
フォローをしてくれる二人に感謝。
ため息をつくエイミー。
「そうね。何か隠してるけど確かに信じるしかなさそうね」
ドキっとする俺をみてエイミーは、笑ってくれる。
「お帰りなさい、そしてようこそ。冒険者時貞君」
まずは再会を祝してと四人で食堂に下りる。
俺はらいっぱいなんだけど。そんな言葉は全員聞いてくれない。
食堂で注文する時ウエイトレスのナンは『なんだ、そんな彼女いたんじゃん』な顔をしている。
女の感なのかエイミーがテーブルの下で俺の足をかかとで踏んでくる。
「いっ」
「どうしたの?」
エイミーが聞いてくる。
「そうだ、坊主ってもう坊主じゃなさそうだな。時貞。後で手合わせをするぞ」
骨付き肉をかじりながらゲオルクが喋ってる。
「何でって顔してるな」
「僕達はこれからお互いに背中を預ける身だ。ある程度の力を知っておきたい」
スープを飲みながらルーペントが教えてくれる。
「私もどれだけ貴方が強くなったか知りたいわ」
変な期待を込められる。胃が痛い。
食事が終わった後、俺達四人は街から少し離れた広場に来ていた。
「手の内を全部見せろってわけじゃない。軽く稽古をつける感じだよ」
俺に笑いながらルーペントは教えてくれる。
「特に君も戦士タイプっぽいからね。アイツも嬉しいのさ」
そういわれたゲオルクは既に愛用の剣を振っている。
「何かあったら降参しなさい。それじゃ私達はあっちに座ってるから」
二人とも俺から離れていく。
「ゲオルク~本当に真剣でするの」
ゲオルクに叫ぶ。
「おう、訓練用の剣もここにはないからな」
「二人とも~合図の石投げるよ~」
少し離れた所からルーペントが叫んでくれる。
エイミーは不安そうな顔をしている。正直俺も不安だ。
実践なんてあの惨劇の時だけだ、それまでは稽古による稽古。
剣の相手なんてミラーしかしらないし、それにも勝てた事がない。
考え事をしていると、合図があったのだろう目の前にゲオルクが迫っていた。
「げっ」
稽古といっているが、頭上から迫って繰る攻撃。黙って立っていたら脳天を割られる。
頭で理解するよりも、先に体が動く。
剣で防御をし左に受け流す。
ゲオルクの剣が地面に刺さるが、お構いなしにそこから振り上げる。
俺は振り上げるゲオルクの腕に蹴りを入れ反動で距離を取る。
注意して見ると、ゲオルクの動きが見える。
ミラーって偉大だったんだな。
相手の顔を見ながら今度はこっちから仕掛けに入る。
『いい?大きい相手に無理に組む事もないわ、力負けしちゃう物。そういう時は細かく行きなさい』
ミラーの教えを思い出す。
「細かく細かく」
剣と剣がぶつかりあっても俺は直ぐ後ろに下がる。相手を休ませないように直ぐにぶつけに行く。
ゲオルクの顔が少し赤いが、楽しそうに笑っている。
「時貞。強くなったな」
「もうそろそろ、終わりにしません?倒れそうです」
「嘘をつけ!本気になりそうだ」
俺の提案も却下される。
幾度かとぶつかり合いでゲオルクが囁いて来る。
「時貞、お前は本気じゃないが俺はかなり本気でやってる」
「俺とお前の剣士の可能性を見たい、次で俺はお前を殺すつもりで行く。避けてくれ」
「そして、もし、お前が死んだら俺は潔く殺されよう」
真剣な目をしている。俺としては折角生き延びてる命をこんな所で失いたくない。
しかも、訓練なのに。エイミーと暖かい家庭も築く予定だ。
場の空気が『はい』しか選べない所を『いいえ』を選んでみる。
「断ったら……?」
「一生付きまとってお前のケツを狙ってそれを広める」
「そしてその手の奴らにお前の情報を売る」
なんて恐ろしい話だ。
ゲオルクが自ら俺との距離を取る。
「行くぞ!」
上段の構え一気に距離を詰めてくる。今までのスピードじゃない。
ゲオルクは『避けろ』と言ってくれたはずだ、無理に防御に徹する事もない。
俺は後ろに下がる。
剣は俺の心臓の位置まで下がったときに突如伸びてきた。
流れるような連撃に体が反応する。剣の起動もまだ目で追える。
俺はとっさにしゃがみ渾身の力を使ってゲオルクの剣を跳ね上げる。
突きの姿勢のまま固まったゲオルクの顔は笑っている。
「かわすと思って突いたんだけどな。俺の完敗だ」
座り込み握手を求める手を出す。
結果よければ全てよし、そんなことを思い手を差し伸べようと動く。
「ぐほ!」
突如ゲオルクが横に三十メートルぐらい吹っ飛び俺の視界から消える。
「大丈夫!」
エイミーが飛んでくる。よほど心配したのだろう顔が青い。
「まってね。今仕留めるから」
剣を片手に今にもゲオルクを刺しに行こうとするエイミーの手を掴んで止める
「まって、まって、俺は大丈夫だから、ねぇ聞いてって」
「に、しても、あの馬鹿はやり過ぎだ。何本気になってるんだ」
いつの間にか横にきた、ルーペントも少し怒ってる。
「それでも、それに勝つんだ時貞君は強い」
落ち着いたのかエイミーも此方を見ている。
「勝ったからって慢心しちゃだめよ」
師匠が師匠だったから慢心はすることはないだろう。
全治4日。傷の手当てをし、包帯だらけのゲオルクを宿まで運び俺達は作戦会議に入った。
ゲオルクをベッドに乗せ思い思いの場所に座る。
「お爺様が敵の隠れかを見つけるまで私達は待機よ」
「そういうこった時貞。俺達は今は待つしか出来ない状態だ、希望を言うなら出来れば5日ぐらい見つけないでほしいぜ」
そういうエイミーに、ベッドの上から白い歯を見せて答えるゲオルク。
「しかし、被害は既に出ている。アガタに諜報部員も何人か確認とれないという話だ。時間が立つほど被害は出るだろう」
「しかし、僕も疲れた今日は各自休もう、時貞君も疲れてるだろう。体調を整えるのも任務のうちだ」
ルーペントも疲れた顔をしている。因みにゲオルクを手当てする時にエイミーと俺に『こんな奴でも殺さなくて助かる。友人なんだ。』と言ってくれた。
当のゲオルクは悪びれた様子もなくベッドの上で豪快に笑っている。
「そうね、今日はもうお開きって事で」
俺の手を握り部屋を出る。後ろではドアが閉められる。
「そういえばエイミー、俺の部屋って何処?」
「隣よ」
隣の部屋のドアを空け、俺を引っ張り込む。
「っとっとと、引っ張らなくても、それじゃ明日」
手を振り近くの椅子に座るもエイミーはたったままだ。
「ん?部屋いかないの?」
にへら~と笑う顔を見つめる。これが魔女の笑みって奴なのか考えるとだらしがないな。そうおもって見詰める。
「此処、私の部屋でもあるんだ」
「え?ええ??」
だって、ベッド1個しかないよ?あれ?これって。
考える間もなく、エイミーは助走をつけて俺をベッドに押し倒す。
鼻に甘い香りが漂ってくる。体温も体全体に感じる。
「お帰り私の王子様、あの時の『約束』果たしてもらおうかしら」
「え、ちょっと」
「もう、静に、こう言う事よ」
なおも混乱する俺に唇を重ねてくる。
こういうのって男からするもんじゃないのかな~と思いながら、エイミーとの甘い夜は始まった。




