12月1日 コミカライズ記念小話
「子ども……ですか?」
「はい。安定期にはいったみたいです」
そう伝えると、セルヴァさんは固まった。
「………」
「………」
「……セルヴァさん?」
返事のないまま固まっている頬を、私はそっと覗き込む。
「は、は、はい!! と、とりあえずミルクを用意すればいいでしょうか!? 今すぐ調達してきます!!」
勢いよく我に返った……と思いきや、まだ挙動不審なまま落ち着かない。
「落ち着いてください。生まれてくるのはもっと先ですよ?」
そう宥めると、セルヴァさんはしゅんと肩を落とした。
「……申し訳ありません」
しばらく沈黙が落ちる。
「……その、あまり嬉しくなかったですか?」
思わず不安になって問いかけると、セルヴァさんはぶんぶんと首を振った。
「も、申し訳ありません!! 嬉しいのです! 本当に嬉しいのですが……!
自分が父親になるという実感が追いつかず……真っ先に喜べなかったこと、本当にお詫びします……!」
全力で首を横に振る姿があまりに必死で、私は思わず笑ってしまう。
「お父さんになるのが、不安なんですか?」
そう言うと、セルヴァさんは困ったように視線を伏せた。
「……はい。子どもが嫌とかではなく……私の家庭環境が特殊でして。
“家族として正しく接する”というものに自信がなく……」
その頬に、私はそっと手を添える。
「大丈夫ですよ。セルヴァさんなら」
驚いたように彼が瞬く。
「初めて会った時のこと、覚えてますか?」
「初めて……?」
「はい。召喚された私を、自分の命を晒してまで助けてくれました。
根が優しい人なんです。大神官とは全然違います。だから——胸を張ってください」
そう告げると、セルヴァさんはふっと目を細めた。
「クミは優しいですね」
「そうでしょうか? もし優しいとしたら……好きな人だからだと思いますよ」
囁くように言うと、セルヴァさんは私の手を包み、そのままそっと唇を重ねてくる。
優しくて、温かくて、未来を誓うみたいなキス。
「完璧な親になれるかはわかりませんが……全力は尽くします」
「私も頑張ります。お互い“お父さん・お母さん一年生”ですから。一緒に頑張りましょうね?」
そう言うと、セルヴァさんは柔らかく笑った。
お互いに複雑な家庭環境で育った。
きっと、うまくできないことだってあるだろう。
でも——。
「主ー!! 妊婦に良い薬をもらってきたのじゃー! ほっかほかになるのじゃー!」
勢いよくシャルティが飛び込んできて、
「わんわんわんっ!!」
その後ろからアル・ベガ・デルが元気よく吠えながら駆け込んでくる。
——そう。私たちは一人じゃない。
「一緒に頑張りましょうね、セルヴァさん」
「……はい。頑張りましょう」
手を握り合ったその温度が、
新しい家族の始まりをそっと祝福してくれている気がした。
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大変お世話になっております!てんてんどんどんです!
コミカライズがついに始まりましたぁぁぁ!!
これも皆々様の応援のおかげです!!いつも本当にありがとうございます!!
素敵コミカライズが始まりましたので是非!!
椎山先生の素敵漫画本当にかわいいっ……!!
クミが可愛すぎて尊いし、セルヴァさんはイメージ通りの優しいイケメンだし、
フェンリル兄弟はもふもふだし、ドラゴン幼女の食いしん坊イラストもたまりません!!
もう全部が最高です!!
原作者として幸せすぎる!!(´▽`ʃ♡ƪ)
何卒何卒よろしくお願いいたします!!
竹コミ!様で連載開始ぜひ第1話覗いてみてください!!
URL
https://takecomic.jp/series/e6e49c12ae191








