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91話 最終話


「クミ先輩助けてくださぁぁぁぁい」


 兵士たちに連れられたキリカが私に向かって大声で叫ぶ。

 その場にいた人たちの視線が一気にバルコニーにいた私達に集まった。


 キリカが縋るように私の方に寄ってきて、


「私が間違っていたんですぅ。何でもできる先輩に嫉妬しちゃっただけなんですぅ!!

 本当は先輩の事憧れていたんですぅ!!!許してくださぁぁぁい」


 と、夢にも思っていない事を言い出す。

 もし仮に百歩譲って事実だとしても、あこがれて嫉妬すると人を殺そうとする人なんて全力でお付き合いをお断りするわ。

 何故それが免罪符になると思うのか意味がわからない。


 私がドン引きしていると、キリカの後ろにいた女性がセルヴァさんに手を差し出した、


「セルヴァ……あんな加護をかけてごめんなさい。許してとはいわない、でも愛していたのこれだけは信じて……」


 と、必死な形相のキリカとは対照的に、本当に慈愛に満ちすがるような表情で金髪の美女が涙を流した。気持ちセルヴァさんに似ている気もする。

 もしかしてお母さんか、おばあさん?


 私が慌てて後ろにいたセルヴァさんに視線を向ければ、「祖母です」と苦笑いを浮かべた。

 そしてにっこり笑う。

 その笑顔に迷いはなくて私は安心した。セルヴァさんはもうおばあさんの呪縛を乗り越えたんだなぁって。


 私とセルヴァさんはぎゅっと手を握って微笑んだ。


「見捨てておいて今更助けてとかごめん無理」「はい。そうですね。罪を償ってきてください」


 と、二人で手をふれば



「いやぁぁぁぁぁぁぁぁせんぱぁぁぁっぁぁい」


「せるヴぁぁぁぁぁぁ」


 と、二人はずるずると兵士に連れて行かれていった。

 周りの群衆から物凄くやじられ連れて行かれる二人を見るとちょっとだけ可哀想にはなるけれど、キリカの思い付きの娯楽のせいで重税に苦しんで食べられなくて死んだ人もいるのを考えれば、これくらいで済んだのはこちらの世界の人たちの恩情ともいえる。



 キリカやセルヴァさんのおばあさん、それにロンディエンはこれからゴールデンドラゴンの里で働かされるらしい。もちろん厳しい監視付きで。

権力の側にいた人間がこき使われると言うのはさぞかしきついものがあるだろう。


ちなみにカズヤなのだけれど……なぜかみんなにあれには会わない方がいい。

おかしいから隔離する。と、その後の顛末すら教えてもらえない。

セルヴァさんが非人道的な事はしませんと言っていたから、目を背けるような酷い事はされてないと思うので放っておこうと思う。


「さ、これからが本番ですね」


 私が微笑めば、セルヴァさんもにっこり笑ってくれて


「はい。頑張りましょう」


 と言ってくれた。


 これからゴールデンドラゴン達との約束で、この世界に出来るだけ日本の食べ物を再現して作れるようにするって約束したし、食文化が世界全体で底上げされれば、私がいちいち教えなくても、こちらの世界の人たちも独自の発想で美味しいものを作り出す事になる。


 貧しい状態では発達しなかったけれど、世界を豊かにすれば日本みたいに美味しいものを作り出して楽しむ余裕がでてくるはずだ。


 ゴールデンドラゴン達も始祖のゲームマスターがいなくなった途端美味しいものを食べられなくなったのに懲りたらしく、ある程度の協力は惜しまないといってくれた。


 原初のゲームマスターの世界の平和が何百年も続かなかったように、私やセルヴァさんががんばっても続く平和は百年もないかもしれない。


 それでも……平和だった時生まれた文化や医術、食生活はどこかしらで継がれていくはずだ。決して無駄じゃない。


 何よりーー。


 セルヴァさんが笑ってくれるなら私はなんだってするよ?

 だって大好きだから。


 家族はずっといなかったけれど、きっとテレビで見た、両親や兄弟のために無償で何の見返りもなくても頑張れるってこういう事だと思うんだ。


「主―!!そろそろご飯なのじゃー!!」


「わんわんわんっ!!!」


 下の階で食事をとっていたはずのシャルティとアルがなぜか口の周りに食べ物を付けた状態で登ってくる。


「君達今食べたばかりじゃ……?」


「うぬ!!食べた結果やっぱり主の料理が一番うまいという結論にたっしたのじゃ!!」


「わんっ!!!!」

 と、仲良く胸を張る二人。

 本当にこの二人は普段は仲悪いのに妙なところで気が合うよね。


「じゃあ今作るから待っててね」


 と、言えば


「やったのじゃぁぁぁぁぁぁ!!」

「わんんわんわんっ!!」


 と、二人でくるくる回りだす。


「では、私も手伝います」


 セルヴァさんが張り切って言うので


「大丈夫ですよ、ここは台所用品全部揃ってますし、一人でも」


 気持ちが嬉しくて笑って言えば


「アレンさんには負けていられませんから」


 と、セルヴァさん。最近なぜかこの二人が競いだした気がするのは何でだろう?

 二人とも料理の楽しさに目覚めたとか?


「じゃあ、お願いしちゃおうかな」


「もちろんです」


 と、二人で手をつないで歩き出す。


 どうかこれからも――側で一緒に笑ってくれるのがセルヴァさんやシャルティ、それにワンコ達やみんなでありますように!



~終わり~




最後までお付き合いいただきありがとうございました!!


ポイント&ブックマーク&誤字脱字報告本当にありがとうございました!!

関わってくださったすべての方々に感謝です!!お付き合いありがとうございました!

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