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71話 教団側(少しだけ前の話)

「聖女様おはようございます」


 キリカが自室から出れば、そこにはずらりと美形の神官達が立ち並び、キリカに挨拶をしてくれる。金髪の美しい顔立ちの美形に、赤髪のワイルド系美形、緑髪の眼鏡美形。

 キリカが取り巻きに欲しいとねだれば、神官達はすぐにキリカの夢を叶えてくれた。


「キリカ様お食事です」


 お気に入りの銀髪の美しい長髪の神官がキリカに食事の場所へとエスコートしてくれる。


 今日こそお米が食べられるかな?


 と、キリカは思う。

 ここの生活は何一つ不自由がない。

 時々宝珠にスキルを使ってほしいと頼まれ遠征するくらいで、あとは豪華な宮殿で暮らしていればいいだけなのだけれど……不満がまったくないわけではなかった。


 食事のレパートリーが物凄く少ない。


 最初は毎日だされる西洋系の料理に満足していたが、一か月もたつと似たような味付けの似たようなメニューに飽きてくる。和風系の料理をリクエストしてみたけれど、調味料や食材がないと、断られてしまった。

 それならせめて、お米を頼んでみたけれど、ダンジョンでとってこないとないと、わけのわからない説明を受けた。


 宝石とかは、綺麗なものがたくさんあるし、老若男女問わずチヤホヤ褒めたたえてはくれるけれど、食べ物と娯楽が少なくて不満がある。


 食事の席についてみれば、いつものパンで、また今日もかとがっかりする。


 美形にチヤホヤされて、毎日お姫様の生活も悪くないと思ったけれど毎日は流石に飽きてきた。


 何か刺激的な事ないかな?

 そういえば、クミやカズヤはどうなったのだろう?

 カズヤは失敗を犯して、牢屋行きになったと聞いたから、少しからかってみようかな?


 男をはべらせて無視すると悔しそうな顔をして面白かったっけ。


 キリカはにやりと笑うのだった。



□■□



「大神官様っ!!!」


「おや、どうかしましたか聖女様?」


 神殿の大神官の執務室で、仕事をしていれば、キリカがずかずかと部屋にはいってきた。


「クミ先輩が生きてていて、私より凄いって本当ですか!?」


 と、血相を変えて詰め寄ってくる。

 その様子にロンディエンは目を細めた。


「誰がそのような事を?」


「勇者です!!あの人が、私より魔物を追い払って凄いとか、自分を助けてくれたとか言うんですよっ!?

 しかもお前みたいな、屑じゃなくて、クミこそ本当の相手だったとか、酷い事っ!!!

 私許せないですっ!!!!」


 顔を真っ赤にして詰め寄ってきた。


 ……本当に馬鹿な女だ。

 と、ロンディエンが心の中で悪態をつく。

 大方、暇になって勇者をからかおうとして、逆になじられて頭にきてこちらに詰め寄ってきたといったところか。

 死んだことになっている勇者の情報をだれが聖女に漏らしたか、後で確認する必要があるだろう。聖女への点数稼ぎのために漏らしたのだろうが、そのような野心のあるものは殺しておかねばならない。


「あの女は私を殺そうとした人なんですよっ!!ちゃんと殺しておいてくださいっ!!

 あと私を馬鹿にした勇者は絶対に逃がさないでくださいね!!!!」


「かしこまりました。仰せのままに」


「ならよかったです。安心しましたっ私怖くてっ♪」


 我を忘れたのを思い出したのか、急にいつものぶりっ子口調になるキリカに微笑みながらロンディエンは思考を巡らす。


 フェンリルがあちらについている以上、こちらが手出しするのは無理だろう。

 だが、聖女に内通者がいる以上、形だけでも兵をだしておかねばらならい。


 あちらにはセルヴァがいる。教団の致命傷になるような行動は絶対にとらない。

 それに争いごとを好まぬあいつのことだ、兵を差し向けても相手にもしないで籠城するだろう。


 ……ならば、出兵させ、いつまでたっても成果がでないと、難癖をつけて裁く口実になる。

 セズデルク王国のアレンにでもやらせればいい。


 ……それにしても。



 馬鹿の方が担ぎやすく、無理難題を他の国に押し付けやすいといままで大目に見てきたが、少しこの女も自由にさせすぎたか?


 美形な男たちを侍らせながら、嬉しそうに去っていくキリカを見ながらロンディエンは舌打ちするのだった。

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