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69話 活版印刷?

「す、すごいです!!本当に文字が読めるし書ける!!」


 セルヴァさんやシャルティ、ワンちゃん達がとってきてくれた文字が読み書きできるようになるマジックアイテムの指輪をつければ、本当に今まで読めなかったものが読めるようになっていた。


 村の人たちが願いを書いた短冊とかもばっちり読める。


「ふふーん。どうじゃ!!我たちのおかげじゃな!!」


 と、シャルティが言うので、「そうだね、ありがとうね」と、シャルティから順番に撫でてあげれば、物凄く嬉しそうな顔になる。

 アルがもっと撫でてとお腹をだせば、シャルティがずるいのじゃーと、隣にくるので仕方がないので、二人ともまたナデナデしてあげた。


「これで、文字の読み書きは困りませんね」


 と、セルヴァさん。


「そうですね!これで目標の学校も作れます!」


「どの程度の規模の物をお考えなのでしょう?」


「規模ですか?」


「はい、本格的に神殿の神官養成所のような教育の場なのか、一、二時間やる程度なのか」


「そうですね、やっぱりみんな生活があるから一、二時間が限度ですよね」


 と、私。


「ただ、子供たちは職業訓練みたいなこともしていいかなって」


「職業訓練?」


「はい、鍛冶屋さんとかパン屋さんとか、ダンジョンでの狩り方とか、全部の職を一通り修行させて、適性とやる気のある子はそこで修行をするみたいな」


「なるほど、子が継ぐのではなく、才能で、ですか」


「はい、ここってただでさえ外の世界と隔離されちゃってますから、技術は一度失ったらそこで終わりになっちゃいますし。薄く浅くでもみんな一通り体験しておくのって違うと思いますから」


「なるほど、確かにそうですね。ではそうしましょう」


「文字の読み書きは表とか作っておくと楽かもしれないですね」


「では、私が作っておきます。文字を書けない獣人の方に配るとなると……100枚くらい作ればいいでしょうか」


 と、事も無げにいうセルヴァさん。


「はい!ではお願いします……って、100枚ってどうやって作るんですか?」


「写経しておきます」


「え?」


 写経って100枚!?全部手書き!?


「……?何かおかしいでしょうか」


「100枚ですよ!?単語を全部一つ一つかなりの量ですよ!?」


「はい。写経はよく、学生の時にやっていましたから文字の手癖等は問題ないと思います。」


「あ、いえ、表を疑っているわけじゃなくて、セルヴァさんが大変という意味で!

 こちらに印刷技術はないのでしょうか!?」


「インサツ……?」


「はい、こー手書きじゃなくて、機械で何枚も同じの作るみたいな?」


「ああ、なるほど。

 以前はコピーをつくる技術はあったと聞き及びますが、ある錬金術団体がその技術を独占したあと、内部闘争を繰り広げてしまい、技術が失われてしまいました。

 残り少ないコピーを作る魔道具は教団が所持しているはずですが、私は見た事がありません」


「じゃあ作りましょう!」


「そのような便利なものが作れるのでしょうか?

 私は魔道具に関する知識はもっておりません」


「はい。セルヴァさんがいるから作れます」


「わ、……私……ですか?」


「はい!!!」


 私が元気いっぱいに返事をしたら、セルヴァさんが物凄く不思議そうな顔をするのだった。



□■□



「文字を書いた紙を石化ですか?」


「はい。お願いします」


 あの後、いろいろ用意して私がセルヴァさんが書いてくれた文字表を差し出せば、セルヴァさんは不思議そうな顔をしながら石化の闇魔法をかけてくれる。

 そして文字表の紙は石化して文字のみが浮き上がった石板が出来上がる。


「これをどうするのでしょうか?」


 と、セルヴァさん。私は鍛冶屋のジャックさんにつくってもらったローラーにモンスターの皮を巻いたものにインクをつけて、石化して浮かび上がった文字の石板に木枠をしながらインクをつけて紙にぺたんとはれば、プリントしたものが出来あがった。

 活版印刷のノリでぺたんと印刷したのである。

 ちなみに紙は、ダンジョン産でインクはタコみたいなモンスターの墨袋から取り放題なので割と困らない。

 それを印刷したものをまた石化してもらえば原版の出来上がり!


「ほら出来きました!!」


「ああ、これは……なるほど、ハンコの原理ですね」


「はい、この前みんなの願い事を書いた短冊を保存するのに石化してもらった時、いい感じに文字だけ盛り上がるの見ていつかやってみようと思ってました」


 と、私。


「何故いままで思いつかなかったのでしょうか。

 確かにこうすればすぐに写せますね」


 と、セルヴァさんが物凄く感心してくれた。


「セルヴァさんの魔法はいろいろ便利ですから」

 

 私がそう言えば、セルヴァさんが嬉しそうに笑って


「凄いのはクミ様ですよ。皆恐れて使う事すらなかった私の魔法をこのように役立てる事に使う方法を見いだせるのは、クミ様だからだと思います」


 と、はにかんで言うのがちょっとかわいいと思ってしまう。


 セルヴァさんは魔法にコンプレックスがあるみたいだったけれど、最近は獣人の人の前でも使えるようになったとちょっと嬉しそうに言っていた。


 ――少しずつでも気にしている事がなくなるのはいい事だと思う。


 そのまま女性に触るのがダメなのも治ってくれたらうれしいな。


 ……そしたら……


「クミ様?」


 妄想の世界に飛びかけたのが名前を呼ばれて現実に帰る。


 うっ。セルヴァさんと幸せな家庭を築けたらいいなとか思ったのは流石に内緒。


「じゃあ、この調子で100枚ちゃっちゃとやっちゃいましょう!」


 と、私が言えばセルヴァさんが「はい」と笑ってくれるのだった。

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