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悪魔の寵妃と呼ばれる令嬢

今日のパートは、長くなったので分けて連続投稿します。

『悪魔の寵妃』

それはこの王国に伝わる御伽噺だ。人に愛されたことのない少女が悪魔と出会い、契約することで老若男女を魅了する力を得るお話。物語の中で、悪魔と契約した少女を悪魔の寵妃と呼んでおり、それが御伽噺の題名にもなっていた。


「‥‥‥ダリアは、本当に面白いことを言うのね。悪魔の寵妃は、この王国に伝わる御伽噺よ。実在しているはずがないわ」


にこりと取り繕うような笑顔に、シマキ様の動揺が見て取れた。

そう、御伽噺、実在しない話。

乙女ゲームでも、「悪魔の寵妃」は空想の話とされていたが、ゲームの終盤に悪魔の寵妃が実在していたことが判明するのだ。



王太子殿下ルートで、シマキ様の腹を破って出てきた悪魔によって。



「首の後ろに噛まれた様な痣がありますよね?」

「──ッ!?」


瞬間、私と繋がれていた手をパッと離して、自身の首を触った。シマキ様の首元には、いつも首を覆い隠す様なデザインのチョーカーが付いていた。お風呂に入る時は取っていたが首の後ろのため、髪に隠されていて直接は見たことがなかった。


ゲームの通りなら、その下には、痣が隠されているのだろう。


御伽噺「悪魔の寵妃」には、悪魔との契約の儀式が詳細に書かれていた。

悪魔は、魅了の力を人間に与える代わりに、契約者の腹の中に悪魔の子を孕ませるのだ。

というか、腹にいる悪魔の子のおかげで契約者は魅了の力を手に入れることができるという仕組みだ。

そして、契約の儀式は契約者と悪魔で体液を交換することとされている。御伽噺の中で、悪魔が契約者の首の後ろを噛み血を啜るシーンがある。そこから、悪魔と契約したものは首の後ろに噛まれた様な痣があると言い伝えられているのだ。

この国に住むものなら子供でも知っている様な話は、シマキ様も当然知っているだろう。

この御伽噺は、乙女ゲームにも出てきて王太子殿下ルートでは重要な役割を担っていた。


「シマキ様なら知っていると思いますが、悪魔は自分の子孫を人間の腹の中で、育てるために契約します。そして、悪魔は人間の弱い心を食べて育つ」

「‥‥‥弱みを見せるごとに腹の中の悪魔は育ち、軈て契約者の腹に収まりきらなくなり腹を突き破って外界に出てくる。確か、御伽噺の結末の少女は、それで死んでしまった。漸くわかったわ‥‥‥コートラリ様ルートのわたくしは悪魔を育ててしまったのね」


嘲るような笑みを浮かべて頷くシマキ様を見ながら、御伽噺について考える。弱さを持たない人間なんていない。悪魔はそれをわかっていたから、人間に悪魔の子を孕ませ育てることを思いついたのだろうか。


「‥‥‥貴方の言う通りよ。わたくしの首には生まれつき痣があるわ。でも、誓ってわたくし自身が悪魔と契約したわけではないの。それだけは信じて欲しい」

「勿論、信じます。ゲームでもそうでしたから」

「ありがとう‥‥‥今までずっと只の痣と思い込ませようとしていたけど、わたくしはやっぱり悪魔の寵妃だったのね‥‥‥わたくしは、腹の中の悪魔に殺される‥‥‥惨めね」

「死なせません! 私がきっと守ってみせます」


考えなしに言い放った時、ふと思い出したことがあった。そうだ、悪魔の子を育てさせない方法がひとつだけあったじゃないか。


「‥‥‥悪魔に弱さを見せない。腹にいる悪魔に自身の強さを見せ、屈服させることができたら、悪魔は契約者と一体化して二度と身体から出てくることはなくなる。そうすれば、首の痣も消えると御伽噺には書いてありました!」

「そういえば、そんなこと書いてあったかもしれないわね。どうして、思いつかなかったのかしら」


シマキ様は、光を見出したような嬉しそうな顔になった。

どちらにしろ、私にできることはシマキ様の情緒が安定する様に勤めることと、これから出てくるであろうヒロインが王太子殿下ルートへ行かない様に妨害することくらいだ。確かゲームでは、ヒロインと王太子殿下が仲良くなるにつれて、シマキ様の情緒は不安定になっていった。なんせ、悪魔は不安という感情が大好きで食べれば成長してしまう。兎に角、シマキ様に不安を感じさせないことが一番だ。


「シマキ様が不安な気持ちを抱かないために、ヒロインが王太子殿下ルートに入らないよう妨害しましょう!」

「ありがとう、頼りにしているわ」

「はい、一緒に頑張りましょうね」

「そのためには、他の攻略対象者も知る必要があるわね。全部で四人と言っていたから、王太子を除いて、あと三人いるはずよね。思い出せる?」

「えっと、シマキ様は十五歳になったら貴族子女が通うミールパ学園へ入学しますよね?」

「よく知ってるわね‥‥‥それも、乙女ゲームの情報なのかしら」

「乙女ゲームの舞台は、その学園ですから」


富のあるものだけが勉学を許されていた、この時代。貴族子女向けに王国が建てた学園が物語の舞台となる「ミールパ学園」である。其処へ男爵令嬢であるヒロインも入学するのだ。


「ということは、ゲームが始まるのは五年後ね」

「はい、そして残りの攻略対象は学園の生徒会長と保険医です。ごめんなさい、此方も名前がどうしても思い出せなくて。でも、顔を見れば思い出せると思います。シマキ様の時も見た途端に思い出しましたから」

「なら、其方は思い出せたら教えて‥‥‥あら?」


ここでシマキ様は、何かに気がついたように首を傾げる。


「でも、攻略対象者はあと三人と言っていたわよね。生徒会長と保険医、あと一人はだれなの?」

「あと一人は‥‥‥」


この情報を言おうかどうか、実はずっと迷っていた。これ以上、混乱させるのも良くないと思ったが事前に伝えておいた方が対策が立てられるとも思っていた。

私は、意を決して口を開く。


「あと一人は、シマキ様です」


氷のような冷たい瞳と、目があった。

シマキ様の秘密が明かされる回になりました。

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