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New Life  作者: basi
30/69

今日も武器屋でトンテンカン

武器屋回です

ちょっとやっつけ気味

ご了承ください

「こんにちわ~。イアンナさーん、居ませんかー?」

 久しぶりに来た店は誰も居ない。でも閉まって無いから何処かに居るはずだけど。

「はいよ、ちょっと待ちなって。ってアンタかい」

 そう言ってイアンナさん奥から出てきた。俺の横でエリザがびくっとしたのが分かった。初めてだとビビるよね~。

「お久しぶりです。ちょっと顔を見せにきました」

「そうかい。そっちは新顔だね。客かい?」

 客……じゃないよな。

「いえ、付き添いです。気に入った物が在れば買いますけど」

「ふぅん。まあいい。丁度お茶してたんだ。ちょっと来なよ」

 そう言って工房とは別の扉を開けて誘う。ん~、今日はいつもほど怖くない気がする。誘われてみるか。

「だってさ。エリザも来なよ」

 そう言って一緒に奥へ行く。

「あら、お客さん?」

「ああ、お前も会ったことがあるはずだよ」

 あれ? この声は……

 奥に入るとテーブルに座った女性が居た。どっかで見たことある人だ。

「あっ! あの時の。無事にイアンナに仕事もらえて良かったですね」

 仕事……ああ、メリーザさんか。

「お久しぶりです。お陰様で、色々ありましたけど」

 メリーザさんの紹介でここ来んだよな。死にかけたり色々あったなぁ。

「色々?」

 あ、やべ。何かイアンナさんが怖い。

「いえ、なんでもないです。でも二人はどういう知り合いなんです?」

「ふふふ。私とイアンナは幼馴染で元冒険者なんですよ」

「冒険者!? メリーザさんもですか?」

 イアンナさんなら違和感も何も無いけどメリーザさんは違和感バリバリだ。

「私が冒険者なのは疑問に思わないのかい?」

「イアンナ、それは当然でしょ」

 イアンナさんがムッとして言うとメリーザさんがやんわりと抑える。ふむ。いいパーティだったのかもしれない。

 でもちょっと世間知らずのお嬢様風なメリーザさんはよく冒険者なんかしようと思ったものだ。

「でもな、私よりメリーザの方が怖いって評判だったんだぞ」

「あら、虐殺のバルディッシュマサークルバルディッシュと呼ばれてたのは誰かしら?」

「ほう、なら滅びの風と言われた無差別な魔法の使い手は誰だったかな」

 二人で見つめながら、ふふふふ、と笑うのは止めて欲しい。こっちが怖いわ。

「ところで」

 いきなりメリーザさんがこっちに話を振ってきた。

「っはい」

 ずっと同じ笑みを浮かべているのでかなり怖いです。

「二人は何を使うの?」

「わ、私はロングソードを」

 エリザもかなりビビっている。怖いもんね~。

「俺は刀を使ってます」

「じゃあ二人とも前衛なのね」

「あ、でもユルさんは弓も使いますよね?」

 そのエリザの言葉を聞いてイアンナさんがぴくりと動いた。

「ほう。アンタは弓も使うのかい。へぇ、初耳だねぇ」

 うっわ、こっわ! 

「どんな弓を使っているのか見てみたいもんだね。どれ、見せてご覧な」

 笑顔が逆に怖い。

「こ、これですが」

 恐る恐る渡してみた。

「アンタ、手を抜いたね? 私がこんな弓で許すと思ってるのかい?」

「ひぃ! すみません。造り直します」

「当たり前さ。腕は鈍って無いだろうね?」

 げ。そういや、あれから鍛冶してない。冷汗が背中を伝っていくのがよくわかる。

「まあ、すぐわかるさ。そうだね、嬢ちゃん。名前は?」

「あ、え、エリザです、けど」

「そうかい。エリザ、あんた達は他にも仲間がいるのかい?」

「はい。後二人ほど」

「じゃあ、その子達の得物を教えてくれるかい?」

 げげ、まさか……

「い、イアンナさん?」

「アンタはちょっと黙ってな。それで、どんな得物を使ってるんだい?」

「ひ、一人は短剣と、後はえ~と、柳……何とかっていう投げる武器です。もう一人は魔導士で杖を使ってます」

「柳……、ああ、柳葉飛刀か。魔導士の得意属性は?」

「大体一通り使いますけど、主には火と風です」

「よし。じゃあユル。アンタは弓とロングソード、短剣に柳葉飛刀、それと杖を造りな」

 うわぁ、やっぱりか。まぁ一応製造系鍛える予定だったしいいけどさ。ここなら材料費が安く済むと思ったけど選択間違えたか……。

「はぁ、わかりました」

「おっと、言い忘れた。私の注文通りに造るんだよ」

「げ、それって上位製造しろってことですか?」

「当たり前だろ。今から言うとおりの性能を重視しな。性能が低かったときには……わかってるね?」

「り、了解であります!」

 やべぇ、下手したらポーションがぶ飲みコースだ。

「じゃあ、まず弓だ。これは命中制度を上げるためにDexを重視。勿論武器としての威力も必要だから強弓で無いとね。次にロングソード。嬢ちゃんの役割は?」

「え? あ、えっと防御専門の時と攻撃の時と両方を場合により切り替えます」

「よし、ロングソードはVitを重視。それにStrも。お次は短剣だ。そうだね、その子が今使ってるのは何だい?」

「あれは……ぐるぃで? ナイフ、とかなんとか」

「ぐる? わからないねナイフだから片刃のはずだね。よし、片刃でAgi重視。状態異常で麻痺のおまけだ。柳葉飛刀はDexとStrを付けな。最後、杖は今回、銀を使え。言うまでもなくIntとMin重視だ。それとこれを付けるんだ」

 脳内メモで忙しい俺にイアンナさんが謎の石を投げてよこす。なんじゃこりゃ?

「なんですかこれ?」

「それくらい自分で見な」

 見る? どうやって見るんだろう。

 つついたり、ひっくり返したり様々な角度から見る俺にメリーザさんが大笑い。

「アンタ……鑑定できないのかい?」

 鑑定?

「どうやるんですか?」

「……製造者には必須なんだけど、あ~……教えた記憶無いねぇ。これは教えなかった私が悪いね。鑑定は鑑定する物に魔力を通して視るんだよ」

 え、それだけ? 教えたって言うのか、それ。ん~、魔力を通す……よくわからん。これに魔力を与えるんか? ……無反応。あ、魔力って事は魔法扱いか。じゃあイメージの問題だろうな。えーっとスキャン? レントゲンみたいなのかな? それともMRIのほうがいいのか? 原理は謎だけどMRIのイメージで……お、ウィンドウが来た。成功か?

『炎石:火の石と風の石を合成したもの。風が火を煽り炎を作る。装備品に使用すると火属性魔法の効果を増幅させる。風属性も微増幅する』


《ピンポン。アビリティ《鑑定》修得》


 っし。アビリティも来た。成功だな。

「なるほど。これつければ良いんですね」

「そうだ。ただ上位製造で付けると当然だが、製造者の腕によって効果が上下する」

「わかりましたよ。やりますけど、今回は材料費が結構しますよ?」

「いつも通りで、と言いたいが流石に今回はな。そうだな、何かないか?」

 何かって言われてもね。ああ、そう言えばあの鳥の羽がまだあったな。

「こんなもんでどうですか?」

 取り出した羽を渡そうと思ったが、一応鑑定してみる。

『シャインヘロンの羽:シャインヘロンの羽。軽さに反して防御力が高い。この羽を使用して造った装備は軽く、Agiが上昇する。耐水属性(小)』

 おおう。結構いい素材なのね。

「ほほう。懐かしいな。シャインヘロンの羽か。なかなかのサイズだな。五枚程あるか?」

「ありますよ」

 五枚なんて微々たる物だ。これで装備作ったら結構いいものが出来そうだな。後でデイルさんとアルトさんの所にも行ってみよう。

「よし。じゃあ工房は好きに使え。楽しみに待ってるからな」

 イアンナさんの笑顔はなんだかサディスティックだ。恐ろしい。気合を入れて作らねば。

 ……デイルさん達の所は何も無いよな?


 日が沈む前に何とか終わった。良かったよ。あぁ、でも死にそう。結構しんどい。

「ユルさん、大丈夫ですか? お疲れ様です」

「あ~、エリザ。待っててくれたの? ありがとね。イアンナさぁん、チェックお願いします」

 実は最初に造った弓がDexの数値低くて何度かやり直したんだよね。でもこれは内緒。

「あいよ。ちょっと待ってな」

 能力限界まで頑張ったよ。それでもイアンナさんの御眼鏡に叶うかすげぇ不安。これでダメとか言われたら精神的に死にそうだ。

「……ほう…………むぅ。んん? よし。おい、ユル。よくやったな、合格だ」

「ホントですか? 良かった~」

 本当に良かった。弓を造り直したかいがあった。

「じゃあエリザ。これあげるね」

 イアンナさんから返して貰った装備を渡す。

「いいんですか? ありがとうございます」

 受け取った装備を見て、嬉しそうに装備した。

「『ステータスオープン』。あれ? え? はぁ!?」

 装備後のステータスを確認したんだろう。そんなに驚くことあったかな?

「ゆ、ユルさん! コレ、本当にもらっていいですか? 幾らか出しますよ」

「え、何で? 今の俺じゃそれが限界だからさ。適当に使っちゃってよ」

 今回ので武器製造のレベルも上がったし、上位製造も少し上がった。ただし、上位を上げるには今回みたいにステータス付加しないとダメみたいだけど。ステータスも上昇するから時間があるときになるべく頑張ってみようかな。

「まぁ、またレベル上がったらもう少しマトモなの造るからさ」

「そうだぞ。こいつが造るモノなんてまだまだだ。材料費も羽五枚だしな。気にせずにもらっとけ」

 イアンナさんの言葉に一応納得した風のエリザ。

「ユル、デイル達の所にも行くつもりだったんだろう?」

「ええ。でも今日は流石に止めとこうかな」

「ああ、そうしておけ。そうだ、あの羽で何か作るのなら靴系統にしておけ。一番相性がいいはずだ」

「そうなんですか。ならそうしようかな」

 ホントは全部羽装備にしようかと思ってたけど。

「間違っても全装備に羽を使おうなんて思うなよ。素材にも適正使用ってのがあるからな。いい素材だからどこにでも使えばいい、というもんじゃない」

 おぉう。流石イアンナさん。俺の考えなんてお見通しだ。

「はーい。じゃあ今日はこれで。しばらく旅に出るんで、また帰ってきたら顔出しますね」

「ああ、行ってこい。帰ってくる時には自作の武器を持ってこいよ」

「わかりましたよ。では、お邪魔しました。おやすみなさい」

「ああ、おやすみ」

「武器、ありがとうございました。おやすみなさい」


 あ、宿決めてなかった。どうしよう。

「エリザ、もう宿決めてる?」

「あ、まだです。でもいつも利用するところがあるんで、そこに行こうかと」

「へぇ。俺も行ってもいい?」

「もちろんです。まぁ、部屋が空いていたら、ですけどね」


 幸いにも部屋は空いていた。が、部屋を取る時にひと悶着。エリザが宿代を出すと聞かない。

「これくらい自分で出すって」

「ダメです。私が出します。あんな武器もらっておいて何もしないなんて出来ません」

「だから、大した武器じゃないってば」

 正直言って、たぶんあの武器はイアンナさんの合格ラインの少し上、程度だと思う。何せ、顔が険しかったからね。

「イアンナさんも言ってたじゃんか」

「ダメです。私の気が納まりませんから」

 うにゃ~。頑固ちゃんめ。

「はぁ、わかった。わかりました。ではお言葉に甘えます」

 そう言うと、エリザは嬉しそうに支払いを済ませ、部屋に入っていった。

 最後の最後で余計に疲れた。

 飯はいいや。もう寝よ。

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