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ツンデレラッキースケベ(ロリ)

「ふーざーけーんーなー! 試練が既に終わってるってどうなってんだよっ!」


 レリックさんは興奮した様子で鳥トンさんに食ってかかっているけれど、正直言って私も同じ気持ちだったわ。だって! あれだけ必死に戦って、勝ち目が本当に薄いって分かりながらも立ち向かおうって闘志を燃やしたら、その途端に小腹が減ったから終了!? その上、とっくに試練は終わってるってどうなってるのって話だわ。


「何を憤る理由が有ると言うのだ、青年よ。諸君等は試練に打ち勝ち、そして力を得た。それによって多くの者を助けられると言うのに何が不満なのやら……」


 今にも胸ぐらを掴みに掛かりそうなレリックさんだけれど、試練による弱体化が残っているのか動きはしない。それを見抜いているのか鳥トンさんは明らかに煽って来たわ。大袈裟な身振りで両手を左右に広げ、聞こえよがしに溜め息まで。


「……ちょっとアンタ、何が目的で戦い続けたのか説明なさい!」


 そんな態度に一番先に限界が訪れたのは私達じゃなくてアナスタシアさんだったわ。胸ぐらを掴んで引き寄せながら鳥トンさんを睨む。うわぁ、慣れているわね。シドーが問題児になってから根性を叩き直してさっさと結婚したって聞いたし、伝承と違ってお淑やかな大人の人って感じじゃないとは思っていたけれど、少し不良っぽいわ。まあ、実際に町娘だったらしいし、住んでいた環境によって気が強くもなるかしら。


「説明、と言われてもな。私は電撃を浴び、格上に一定以上の威力の一撃を見舞うという試練を突破した時に告げた筈だ。これで良しとしよう、とな」


「そんな最初の方かよ!?」


 私もレリックさんも驚きの余りにそれ以上のコメントが出来ないわ。だって、その試練を突破するに至った一撃の後から力の差を思い知らされる戦いに発展したのよ!? 視線による無言の抗議にも鳥トンさんは動じない。アンノウンの部下の人達のリーダーだし、もしかしてとは思っていたけれど、アンノウンに匹敵する性格の悪さじゃないかしら!?


「ああ、その辺りだ。このキグルミは防具としても優れているので私にはダメージが通らなかったが、それでも威力は合格に値すると認められたらしくてな」


「あ、あの、だったら戦闘を続けた理由を教えて下さい」


「ふむ。大人の勤めか、子供の頼みを聞くのも。なぁに、簡単だ。君達は正義側に分類して良い存在であり、そんな相手を痛めつけるのは悪だろう? 私は悪逆を嫌悪するのでな。だから問い掛けた。未だ戦闘を続ける気が有るかどうかをな。そして有ると言われたから望まれるままに戦った。何か問題が有るかね?」


「えっと、要するに……私達を合法的に痛めつけてみたかったって事かしらっ!?」


「そう解釈されても反論は出来んな。まあ、私の欲求と人生で培った倫理観のせめぎ合いの結果、この様な選択肢を取らざるをえなかった。ああ、最後に青年。……君がお姫様抱っこされる姿はキグルミ全員と我が主が見られるようにしておいたから安心したまえ」


「何処を安心しろって言うんだよ! この鳥野郎が!!」


 我慢の限界を迎えたレリックさんが動き出すけれど、それよりも前に鳥トンさんの姿が溶けるように消え去って、元々ちゃんと立てれない状態だった彼が倒れそうになった所で視界が暗転する。最後にアナスタシアさんの声が聞こえて来たわ。



「えっと、本当にゴメンね。色々とさ……」


 それはきっと勇者が誰かを間違って試練を与えてしまった事と、あまりにも酷い人材選択をしてしまった事への謝罪だったのでしょうね。……うん。前者は兎も角、後者はフォロー不可能よいや、まさか選んだ格上が彼処までの精神破綻者だなんて分かるはずがないのだけれど。


 無駄だとは思うけれどアンノウンから一言言って貰わないと。絶対無駄だとは思うけれど!


 そんな風に無意味で虚しい決意をした所で闇が晴れて視界がハッキリして来る。私が立っているのは神殿奥の水の中、ティアさんとレリックさんと手を繋いだ状態で立っていたわ。試練を開始してどの位の時間が経過したのかは分からないけれど、精神的な疲れが酷いわ。主に鳥トンさんのせいで。


「アンノウンったら性格が彼処まで悪い人をどうして選んだのかしら? 性格が悪いからよね、きっと」


 悪戯大好きで他人が困ったりするのが大好きなアンノウン。そして短い間だったけれど鳥トンさんも同類だって確信したわ。良識とか常識とか、そういうのをちゃんと持っているけれど、それ以上に非道徳的な行動が大好きな狂人。その上で何かしらの正当性を主張しようって悪質な人。本当に困っちゃうわね。レリックさんは多分アンノウンや鳥トンさんみたいなのに慣れていないでしょうし、今後を考えると私以上に大変そうね。


「……やべ」


「レリックさんっ!?」


 考え事をしていた時に聞こえて来た声に反応すれば、レリックさんが疲労困憊な様子で倒れ込んで来る。私達の手を握っていた手からも力が抜けたのか離して、このままじゃ水に頭から突っ込みそう。一気に水を飲んで肺まで入ったら危ないのよね? 私は詳しくはないけれど今の彼は危ないと咄嗟に判断して正面から受け止める。伝わって来たのは力が抜け切った様子だった。


「……悪ぃ。ちょっと力が入らなかったが、ちょっとずつ戻って来たわ」


「大丈夫? もう少し支えておきましょうか?」


「いや、良い。餓鬼にお姫様抱っこされただけでもって屈辱なのに、何時までも支えて貰ってられるかよ」


 男の人って意地っ張りなのかしら? 私は未だちゃんと力が入っていないって伝わって来ているから知っているのに、私に掴まって無理に立とうとしているだなんて。少し呆れつつも強がりを強がりだと理解していない演技も気遣いなのかと思った私は大人しくレリックさんが立ち上がるのを待っていたわ。でも、勇者の試練の影響が残っているのか中々立ち上がれずに足が滑りそうになっている。


「ゲルダ。ティアも手伝う?」


「いえ、大丈夫よ。レリックさん、少し調子が悪いだけみたいだもの」


 ティアさんが少し心配した様子だけれど、流石にレリックさんが可哀想だもの。年下の女の子に体を支えて貰って、その上で年上のお姉さんにまで力を借りるだなんて。本当に見栄っ張りな人が仲間だと大変よね。……それと何かの間違いで、滑った際にティアさんの胸を掴むとかあったら賢者様が怒りそうだもの。親馬鹿がな人が仲間って本当に大変よ。


「おわっ!?」


 そんな風に思っていたらレリックさんは本当に足を滑らしてしまったわ。でもティアさんの体の何処も掴んでいない。そう、ティアさんの体は……。



「あ、あぅうううう……」


「……むぅ。まさか本当に変態?」


 転んだ際、レリックさんは私の体に寄りかかり、両手で近くにあった物を思わず掴んじゃったの。それは何かって? 答えは私のお尻。レリックさんが両手で私のお尻を鷲掴みにした瞬間、私は思わず足を振り上げていた。足の間の柔らかい物に蹴りが命中して水中から出て行くレリックさん。既に意識は無かったわ。



 事故だとは分かっているわ。そう、これは事故なの。だけれど言わせて欲しいの、乙女的に! 



「レリックさんのスケベぇええええええええっ!!」

アンノウンのコメント  よっしゃ! ゲルちゃんの頼みだしトンちゃんにお仕置きだぁ。しかたないなあ、いやだな(すごい棒読み)


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