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浮かぶ疑問とチョコバナナ

 突然現れて……は普段からだけど、こうして明確に怒っているアンノウンを見たのは初めてな私は戸惑っていたわ。あの小さな竜との間にどんな因縁が有るって言うのかしら……。


「おい、オメーと俺様は初対面だよな? そっちは本体は別に居るっぽいがよ」


「そりゃそうさ。君みたいなトンチキな見た目の奴は一度会ったら忘れないよ」


「オメーが言うな、オメーが! ドラゴンのブレスに蜜柑投げて対抗とか訳の分かんねぇ事しやがって! 大体、俺様の何が気に入らないってんだ! まあ、オメーに何を言われようが俺様は俺様……だがよ!」


 不機嫌そうに会話を続けている途中、ザハクの口から再びブレスが放たれる。でも、直進する極大の火柱。今度は放出を続け、パンダが乗る黒子さんを狙っていたわ。慌てふためく黒子さんは咄嗟に片手を前に突き出し魔力を腕に集中させるけれど、パンダが目の前に何かを差し出した。あの細長くて黒い物は一体……。


「相殺しても火が飛び散るからこれで弾き返して!」


「!」


 黒く少し湾曲した物体から生える短い木の棒の持ち手を掴んだ黒子さんは迫り来る火柱を怖がった様子も無く、渡されたその物体を振りかぶる。一体それが何なのか、突如吹いた風が運ぶ香りが教えてくれたわ。とっても甘い香りで、広場に行く途中に実は見掛けていたの。


「チョコバナナぁ!?」


 そう、黒子さんが持っているのは間違い無くチョコバナナ。それを真下からすくい上げる様に振り上げて火柱を迎え撃てば、一切溶ける事も折れる事も無く真上に弾き飛ばした。ええ!? いや、チョコバナナよね?


 軌道を無理矢理変えられ真上に突き進む火柱。吐き出したザハクは信じられない光景にブレスを止めて唖然としていたわ。


「いやいやいやいやっ!? 幾ら何でもチョコバナナでドラゴンブレスを弾き飛ばすとか有り得ないだろ!? どうなってんだよ、そのチョコバナナ!」


 流石に我慢の限界なのか果肉と果汁で全身を汚した状態のレリックさんが叫び出す。可哀想に、未だ慣れていないのにあんな光景を見せられてパニックに陥るわよね。指先を向けて叫ぶレリックさんに対し、黒子さんは近付いてチョコバナナを差し出したけれど……あれ? ちょっぴりチョコが分厚い?


「気が付いたみたいだね、ゲルちゃん。そう! チョコを少し厚めに塗った事で強度を上げたのさ。でも、それだけじゃ溶けていない説明にはならない。でもさ、事前に冷やしておいたらどうだい? 冷えて固まった事で僅かに熱に強くなったのさ」


「ふっざけるな! 俺様のブレスがんな事で防げるもんかよ! 冷やした分厚いチョコのコーティングで強化だぁ!? 物理法則に反してるだろ!」


「物理法則も世界観も盛大に無視する事が許されている。それが僕みたいなギャグキャラさ。所詮君はシリアスキャラ。僕には勝てはしないのさ」」


「……いや、何言ってるんだ、オメー」


 ザハクの言葉に思わず頷いてしまう。それ程までにアンノウンの言葉は意味不明で、何よりも危険な感じがしたわ。これ以上は話させたら駄目って私の心が語り掛けるの。


 でも、それは私がアンノウンに慣れてしまっているから。不慣れな人には無理だったみたい。


「いや、許すって誰が許すんだよ。ってか、誰が許可すれば可能なんだよ」


「これもギャグキャラだから許されているメタ的な発言になるけど、この小説の作し……」


「レリックさん、今はアンノウンと遊んでいる場合じゃないわ! 今はこの状況をどうにかする時よ!」


 危険な台詞を途中で遮り、私は小さくして仕舞っていたデュアルセイバーを元のサイズに戻して構える。レリックさんも納得行かない様子で黒子さんの頭の上のパンダを見るけど、パンダは何故か動かない。何故か喋らない黒子さんがジェスチャーで教えてくれたわ。


「……お説教中にパンダを操って遊んでいたのがバレたのね」


 しかも賢者様じゃなくて女神様に。多分暫くは動かない。つまり私達だけで武雷カンとザハク、そしてネルガル君の相手をしなくちゃならないのだけれど、そのネルガル君はさっきから黙っていると思ったら私達を見て……いえ、観察していたの。


「……ザハク、帰るよ」


「あっ? おい、ネルガル。オメー、ビビったのかよ」


「計画実行の日に予想外の邪魔者が入ったんだよ? 引くのが賢いやり方さ」


「……ちっ! まあ、良いさ。次会ったら糞パンダをぶち殺す!」


 飛び去って行くネルガル君。このまま追撃を仕掛けたいけれど何時もビームを撃っているアンノウンは動けないし、私達は逃げ遅れた人達を守りながら戦わなくちゃならない。


「待って! どうしてこんな事をしたの!」


「復讐。この町の人達がした余計な親切で迷惑を被ったんだ」


 悔しさから思わず叫んだけれど、まさか返事が来るとは思わなかった。聞こえたのは底冷えのする冷たい声。あんな子供が何を体験すればあんな目と声を……。


「ボサッとすんな!」


 レリックさんの叫び声にハッとすれば目の前に迫る武雷カンの前脚。激しく放電を続けていて、受けるのは痛そうだし紙一重で避けても電撃に当たりそう。距離からして私に出来るのはどっちかだけれど、私が動くよりも前に黒子さんのナイフが私に迫る前脚を切り落とした。


「有り難う御座います!」


 お礼を言いながら前足の切断に苦しむ武雷カンを蹴り飛ばし、デュアルセイバーを分割、レッドキャリバーとブルースレイヴの刃に魔包剣を纏わせた。武雷カンの数は約三十。幸いな事に私達を集中して狙っているから誰かを守りながら戦う必要はそれ程でも無いけれど、面倒な事に武雷カンを召喚するのに使ったらしい地面の魔法陣は未だ光っている。ショーを見ていた人の背後を取り囲む様に展開されているし、本当にこの町の人達を狙ったのね。


「……一体何が」


 武雷カンを斬り伏せながら呟く。思い起こすのは逃げる人達の姿。我先にと他人を押し退ける事無く、逃げるのが難しい人を逞しい人が担いで運んでいた。人の本性が追い詰められた時に出るなら、あの優しい姿がこの町の人達の姿なのね。だから尚更分からない。ネルガル君が言っていた復讐の理由が。只、ショーの前に言っていた事が気になったのだけれど、嫌な予感が的中して魔法陣から武雷カンの追加が登場。しかも無頼カンまでオマケで居るわ。


 ちょっと多いし、こっちも数で対抗するしかなさそうね。幸い避難は順調に進んでいるし、乱戦になっても大丈夫そう。だから私の大切な家族達の出番だわ。


 おいで、私の家族達。どうか私に力を貸して! 羊の宴(シープバンケット)! 私の魔法によって羊達と牧羊犬のゲルドバが召喚される。されたのは良いのだけれど……。


 前脚を振り回して私達を威嚇するカンガルーの集団。その前に現れて立ち塞がるのは可愛らしい羊……でも。


「……そうよね。今、毛刈りのシーズンだものね」


 そう、羊達は毛が生えていなかったの。牧羊神のダヴィル様がお世話をして下さってるだけあって羊達は健康的な体になったけど、硬質化する羊毛が無いのは痛いわね。でも、そんな事は知った事かとばかりに羊達は凶悪な顔付きになり、四肢が逞しく膨らんで行く。あれれ? あんな風になった事無いわよね、今まで。


「バウ!」


 そしてゲルドバ、貴方が一番変わってるわ! 大きさは普通の犬だったのに、今じゃ大熊並みのサイズになって狂暴そうな顔付きでカンガルー達を威嚇する。少しの間睨み合う両陣営。でも、ゲルドバの正面に居た武雷カンが目を逸らして後退りした拍子に仲間にぶつかって数匹を巻き込んで転けて一気に均衡が崩れる。


「バウ!」


「メー!」


「メー!」


「メー!」


 雪崩の如く押し寄せる牧羊犬率いる羊の群れにカンガルー達は一切抵抗出来ずに挽き潰される。えっと、容赦無いなぁ。物量差による圧倒的な暴力って脅威だわ。でも、皆が私の為に駆け付けてくれてくれたのは嬉しい。だから魔法陣が消えたのを確認して皆を呼べば元の可愛らしい姿ですり寄って来たわ。



「冗談で言ったが、あの犬はマジで……」


 あら? レリックさんがゲルドバを見ながら何か呟いているわね。ゲルドバもレリックさんを見ているけれど……。








アンノウンのコメント アイアム・ギャグキャラクター

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