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出会ってしまった彼ら

「チッ……本当にクソ忌々しいガキだな、雪姫ぇ……」


 吹場座虎也は組の構成員が運転する車の中で、スマホを見ながら呟いた。


 見ているのは雪人と日花に関するネットニュースの記事だ。

 座虎也がわざわざ記事を探しているのではなく、二人の記事が大量にアップロードされすぎているため、嫌でも目に入るのだ。


「新規ガーディアンボスを倒した挙句、エルテックから支援を受けて花火大会だぁ? ダンジョンはガキの遊び場じゃねえぞ。好き勝手やりやがって」


 スマホを操り他の記事を探す。


 余談だが、ヤクザの組長の息子である座虎也がスマホを所持できているのは、対外的には座虎也は吹場組と無関係ということになっているからだ。もちろんいくつもの小細工があってのことではあるが。


 ふと、ある記事に目が留まる。

 記事のタイトルは『【そろそろ】日本最強のギルドについて語るスレ【決着をつけようぜ】』。

 吸い込まれるように座虎也は記事を読む。


―――――


【そろそろ】日本最強のギルドについて語るスレ【決着をつけようぜ】


321:名無しの探索者

決着はついてるんだよなぁ


322:名無しの探索者

白竜の牙に決まってんだろ


323:名無しの探索者

戦力的には酒呑会も強い 傘下のギルドも含めると人数がアホほど多い

白竜の牙は少数精鋭だから総力戦したらどうかなって話よ


324:名無しの探索者

酒呑会、残念ながらトップが弱すぎる


325:名無しの探索者

座虎也さんの話はやめろォ!


326:名無しの探索者

お飾りもいいとこだからな……だいたい幹部がSランクばっかりなのにギルマスがAランクの時点でお察しですわ


327:名無しの探索者

全力でキャリーしてもSランクのガーディアンボスを座虎也と一緒だと倒せなかったらしいからな……


328:名無しの探索者

フォーメーション“介護”の限界


329:名無しの探索者

最後に座虎也を抜いてパーティが完成です


330:名無しの探索者


331:名無しの探索者

シンプルにザコ


332:名無しの探索者

やはり酒呑会はギルマスがネックだな


333:名無しの探索者

白竜の牙のギルマスはごりごりの武闘派だってのに酒呑会のギルマスときたら!


334:名無しの探索者

なんか可哀そうになってきた。強く生きろ、座虎也


――――――


「クソが!」


 ガンッ!


 座席を蹴飛ばした座虎也に怯えて運転手が悲鳴を上げる。


(いつもこうだ……! くそ、俺がザコだと!? どいつもこいつもわかってねえ! 俺は部下に恵まれなかっただけなのに……!)


 酒呑会という大勢力の中で座虎也は馬鹿にされる存在だ。ランクが幹部よりも低いのは事実だが、座虎也はそれに納得していない。


(チャンスさえあれば俺だって、本当の力を知らしめられるってのに……!)


 ……と。

 信号待ちの時、隣に座っているナイトバナードの青年がぽつりと言った。


「喧嘩だ。路地裏で殴り合いを……いや、一方的だな。暴力が振るわれている」


「あん?」


 座虎也が青年と同じ方向を見ると、ビルとビルの奥で何やら揉め事が起こっているようだった。通行人がちらちらと見ては我関せずと通り過ぎていく。


 殴っているほうの顔を座虎也は知っていた。


 酒呑会のメンバーだ。若者数人をボコボコにしている。殴られているほうにも見覚えがあった。あれは確か、酒呑会のハメられて借金を作った連中だ。


 確か名前はスカイフォックスと言ったか。


(……待てよ? これは面白いことができるかもしれねぇぞ)


「なあ、お前はまだ日本にいるんだよな」


「あと数日の契約期間が終わるまで、俺はお前の指示のもと働くことになっている」


「よぉーし」


「?」


 座虎也は運転手に車を止めるように指示し、青年と一緒に車を降りる。

 青年に念押しするように言う。


「お前、これから路地裏を出るまで一言も話すなよ」


「? よくわからないが、承知した」


 座虎也は青年を連れて路地裏に入った。


「よう、取り立てか? 精が出るな」


「座虎也さん! お疲れ様です!」


「あとは俺がやっとくからお前は行っていいぞ」


「え? は、はい」


 若者たちを殴っていた男――酒呑会の構成員は、疑問を感じつつも、座虎也の指示に従い去っていった。残された若者たちに座虎也は質問する。


「お前ら、スカイフォックスだな? 酒呑会(うち)に借金作ったガキども」


「は、はぃい……」


「それ、帳消しにしてやるっつったらどうする?」


「!?」


 スカイフォックスの面々が弾かれたように顔を上げる。座虎也はニヤニヤしながら言った。


「ダンジョン配信者の雪姫とヒバナ、知ってるか?」


「知ってます……もちろん知ってます! 俺たち、ヒバナのやつに……」


「そうだよなあ。知ってるぜ。お前らヒバナってガキに配信でボコられて、向こうはそれで有名になった。今じゃ世間はあいつらの話題ばかり。わかるか? お前らは踏み台にされたんだ」


「――ッ」


「なあ、復讐したくねぇか? あいつらの大事なもんを踏みにじってやりたくねえか?」


「したいですよ……でも、できないんです! やり方が思いつかない! あいつ、白竜の牙に守られてやがるんです! 手なんて出せないですよぉ!」


 座虎也は笑みを深くした。後ろについてきている青年を指さしながら言う。


「――できるんだよ、それが。こいつが力を貸せばな」


「それは……本当ですかっ?」


「ああ。俺の言う通りに動け。うまくやりゃあてめえらの借金はチャラにすることを考えてやってもいい」


「ありがとうございます! ありがとうございます!! 俺たち何でもやります!」


 スカイフォックスの構成員たちは座虎也の提案を呑んだ。

 中には座虎也を崇めている者すらいる。

 非道な手段で自分たちに借金を負わせたギルドの長であるにもかかわらずだ。


 座虎也は彼らと連絡先を交換し、路地裏を出た。

 青年は不思議そうに座虎也に尋ねる。


「吹場座虎也。……さっきの若者たちは頭が悪いのか? なぜお前の言葉を簡単に信じる? 具体的な手段も明かされないのになぜ頷く?」


「追い詰められた人間なんてあんなもんだろ。だが、面白いことになりそうだ」


 座虎也は邪悪な笑みを浮かべた。


「親父にぶん殴られたこと、忘れてねえぞ……雪姫、てめえも一緒に思い知らせてやる」

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