表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

73/105

【コラボ配信】魔法少女コンビで横浜中華街ダンジョンを攻略します【ヒバナちゃんと】5

「! 雪姫ちゃん、避けて!」


「え?」


 ヒバナの焦った声。

 その直後、ドバンッ! という激しい音とともにものすごいスピードで変色ウイングラプトルが突っ込んできた。


 滑空攻撃!?

 しかも協会のデータの映像より明らかに速い!


「うあっ……!」


 変色ウイングラプトルは俺を鷲掴みにすると、翼を広げて急制動をかける。衝撃は大きかったが、まだ<薄氷のドレス>の効果は使っていないので耐えられた。


 だが安心はできない。

 これ、連続技の前振りだ……!


『――ハァア』


 変色ウイングラプトルは俺を掴んでいない方の足で真上に跳び上がると、翼を激しく動かして滞空。ニタリと笑みを浮かべる。


 ウイングラプトルは獲物を鷲掴みにした後、ジャンプして高所から落下速度をプラスした踏みつぶし攻撃を仕掛けるのだ。


 まずい、掴まれているせいで上に杖を向けられない。このままだと即死だ。


〔やべええええええええええ!?〕

〔雪姫ちゃん何とか脱出してくれ! さすがにそれ食らったらまずい!〕

〔っていうか今の何!? 普通の滑空攻撃じゃなくね!?〕

〔ウイングラプトル、突撃の前に後ろ足で爆発起こしてたような……〕

〔これもしかして、ばなちゃんの爆発魔術を食って使えるようになったってこと!?〕


 ヒバナの爆発魔術を使えるようになった。

 流れるコメントの一つを見て俺は顔をしかめた。どうりで滑空攻撃のスピードが速いわけだ。

 どうやら変色ウイングラプトルは、ロケットのように爆発を推進力にしたらしい。


 とにかくどうにかして逃げないと!


「【氷の視線】!」


『ギャウ!? ……ケェエエ!』


 一瞬だけだが動きを止められた。その隙にもがいて拘束から逃げる。


 ……で、落下ダメージをどうしよう。

 今はガーベラもいないしなあ。


「雪姫ちゃん!」


「わぁっ!?」


 ダッシュで戻ってきたヒバナが地面に落ちる寸前の俺をキャッチした。【ボムガントレット】は解除したようで、触れた瞬間に俺が爆発するようなことはなかった。


「ごめん、敵を抑えられなくて……! 平気!?」


「あ、は、はい。ありがとうございます。助かりました」


 ヒバナがいなかったら俺は落下ダメージでリタイアしていただろう。

 それはいいんだが、またお姫様抱っこをされているのが気になる。


〔お姫様抱っこきた!〕

〔何度見てもいい……ちっちゃく収まってる雪姫ちゃん可愛すぎる〕

〔ばなちゃんの服をちょっと掴んでる手、尊みの鎌足〕

〔スクショ撮って額縁に入れて飾りたい、絵が良すぎる〕


 くそっ、今日二回目のお姫様抱っこをされた俺を見て視聴者が好き勝手言い始めた! どんどん俺の目指す配信者像から遠ざかっていく!


 激しい音を立てて変色ウイングラプトルが落下してきた。

 寸前で獲物を逃がしたからだろう、目が怒りに燃えている。


『キィイエエエエ――――!』


 ドンッ!


 また爆発を推進力にした滑空攻撃が飛んでくる。


「当たらないよ! 炎神フラムよ、我に力を貸し与えたまえ! 我が望むは形なき爆ぜる具足、【ボムグリーブ】!」


 ヒバナの足が爆ぜ、真横に移動する。変色ウイングラプトルは俺たちのいない場所を通り抜けていき、はるか遠くでザザザザザ! と足をこすりながら止まった。


「別れて戦うと、さっきみたいに雪姫ちゃんが標的になっちゃう。だからこのまま戦おう!」


「ヒバナさん! 気持ちは嬉しいんですけど、さすがにこの態勢は恥ずかしいです!」


「でもおんぶにすると……その、雪姫ちゃんのスカートの中見えちゃうから」


「う、ううううう」


 一応スパッツは履いているが、問題なのは画面内における肌色比率の多さだ。

 チャンネルを守るためにはきちんと隠さなくてはならない。というか見せたくもない。

 一方お姫様抱っこにそういった問題点はない。


 し、仕方ないか……このまま戦うしかない…… 


 おのれ、<薄氷のドレス>の裾がもっと長ければこんなことにはならなかったのに!


「あ、でも雪姫ちゃんは【滑走】のスキルがあるんだっけ」


「あるにはありますが……さすがにあの速度の突撃を避けられるほどじゃありません。すみませんが、このまま抱えてもらってもいいですか?」


「うん、こっちは最初からそのつもり。任せといて!」


 ヒバナはそう言ってにっこりと笑った。

 頼もしいな。


「では、ヒバナさんは回避をお願いします。私は隙を見て魔術で攻撃します!」


「わかった!」


 ドンッ!


『ケエエエエ!』


 また突っ込んでくる変色ウイングラプトル。


「見えてるよ!」


『――ッ!』


 変色ウイングラプトルの突撃をヒバナは危なげなくかわす。俺を抱えていてもまったく苦にならないようだ。力のステータスはどのくらいなんだろうか。


 ヒバナに回避をまかせているぶん俺が敵にダメージを与えなくては。


 <初心の杖>を構える。


「【アイスショット】、【アイスショット】、【アイスショット】!」


『ケエェッ!』


 すさまじい速度で真横にすっ飛んだ変色ウイングラプトルは、連続の【アイスショット】を全弾避け切ってみせた。かなりのスピードだ。


「うわ、やるなー。雪姫ちゃんの魔術を見てから避けたよ」


「あの爆発を使った高速移動が厄介ですね……」


 さて、どうしたものか。

 まずは【フロスト】あたりで動きを鈍らせてみるか?


 なんて思っていたが、変色ウイングラプトルの様子がおかしくなり始めた。


『…………ヘェ、ヘェエエエ……ヘブッ』


 よだれを垂らしてその場に倒れ込んだ。

 目を回している。


 ……は?


〔ウイングラプトルぅううううう!〕

〔急に倒れてて草〕

〔何してんのあの鳥……?〕

〔雪姫ちゃんとばなちゃんのコンビを苦しめてたはずの恐ろしい敵がいたはずなんですが、みなさん知りませんか!?〕

〔そこでへばってるんだよなあ……〕

〔あれか。普段しないような高速軌道を繰り返したから目が回ったんだな〕

〔しかも後ろ足の炎が消えてるんだが〕

〔え? 爆発魔術もしかして切れた?〕

〔浮かれて使いすぎたか〕

〔そんな新しいおもちゃを買ってもらった子供みたいな!〕

〔やっぱあいつアホじゃねーか!〕

〔結論:変身しても知能は上がっていない模様〕


 どうも変色ウイングラプトルの脳は爆発能力を使っての高速軌道に耐えられなかったらしい。いや三半規管か? そして爆発能力ももう品切れと。


 ええ……さっきまでの緊張感は……?


 い、いや、何にしてもチャンスだ!

 攻撃速度を優先し、<薄氷のドレス>の効果はあえて使わず呪文を唱える。


「氷神ウルスよ、我に力を貸し与えたまえ。我が望むは敵を穿ち削る氷槍、【アイシクル】!」


 氷の槍を放つ。倒れている変色ウイングラプトルは避けられない。


『ギャアッ!』


 命中。

 だが――倒れない。

 嘘だろ、耐えられた!?


〔すげえ! あの鳥、雪姫ちゃんの魔術を耐えた!?〕

〔【一撃必殺】が乗ってないとはいえビビるわ〕

〔生命力強すぎるだろ……〕

〔さすがバカ以外弱点がないと言われてるだけある。純粋なスペックで見たらCランクのガーディアンボス並みって話だし〕

〔むしろ平均並みの知能があったらEランクの探索者は誰も倒せないからな、あいつ〕


『ゲッヘ……ヘェ……ケェエエエエエエエエエ!!!!』


 変色ウイングラプトルは叫ぶと、自分の頭を地面すれすれまで近づけ、足の爪で冠羽を掴んで引きちぎった。ヒバナの爆発魔術を吸った後に生えた羽だ。


 それを口から取り込むことで、変色ウイングラプトルに大きな変化が訪れる。


 ゴウッ! という音とともに炎が逆巻いた。


〔燃えた!?〕

〔なんだこの変化ァ!?〕

〔変身するタイプのボスだったのかお前!〕

〔最終形態で草〕

〔これが本当の焼き鳥ってな!〕

〔↑死罪〕

〔は?〕

〔燃 え 上 が っ て き た〕


 変色ウイングラプトルの全身が炎に包まれたのだ。

 もはや完全に普通のウイングラプトルとは別のモンスターである。


 だんっ、だんっ! と変色ウイングラプトルが爪で地面を踏み鳴らす。するとなくなったはずの爆炎が舞った。今までで一番の威力だ。


 ……嫌な予感がする。


「雪姫ちゃん、ごめん。下ろすね」


「え?」


「次はきっとすごい攻撃がくる気がするから……避けられないかも。だからあたしが受け止める。雪姫ちゃんはその間に攻撃の準備をお願い」


「ヒバナさん!」


「大丈夫、任せて!」


 抱えていた俺を下ろし、止める間もなくヒバナは前に出る。

 まさか盾になるつもりか!?


『クケェエエエエエエエエエエ――――ッッ!』


 獰猛な声を上げて変色ウイングラプトルの足元で爆発が起きる。それを推進力に変えて突っ込んできた変色ウイングラプトルに対し、ヒバナは正面から受け止めにかかる。


「ふぐっ……!」


 ドゴゴガガガガガガッ! とヒバナの足が地面を削りながら下がる。


 突撃の威力を殺し切れない。

 個体としての重量。助走の勢い。あるいは能力値の差。そういったものが降りかかってくる。まして相手は能力値の高さで知られるキーボスなのだ。


 対するヒバナは耐久力に優れたタイプではなく、敏捷の高さが売りのスピード型前衛。普通に考えればこの立ち回りは悪手以外の何物でもないだろう。


 それでも、ヒバナは吠えた。


「負けるもんか……! ここは通さない!」


『――ッッ!?』


「雪姫ちゃんはあたしに優しくしてくれた。困ってる時はすぐに気付いて、手を引っ張ってくれた。お姉ちゃんみたいだけど、大事な友達! 傷つけさせない!」


 ドウッ! という音が連続して響く。

 ヒバナの両手から爆炎が生まれ、変色ウイングラプトルの炎を相殺する。


「雪姫ちゃんは……あたしが守るんだ――――っ!」


 ヒバナは態勢を立て直し、押し返した。


〔ウッ……〕

〔待ってごめん泣く。ほんとに泣く〕

〔ばなちゃん(´;ω;`)〕

〔そうだよな……今日のコラボずっと楽しそうだったもんな……雪姫ちゃん守りたいよな……〕

〔熱すぎるって……〕

〔っていうかウイングラプトルが下がった!〕

〔チャンスじゃないか!?〕

〔今しかない!〕

〔雪姫ちゃんぶちかませぇええええええええええええええ!〕


「――氷神ウルスよ、我に力を貸し与えたまえ。我が望むは氷のつぶて、天より出でて鉄槌を下せ」


 変色ウイングラプトルはヒバナの防御によって押し返され、姿勢を崩している。だが全身の炎は怒りによってさらに強まっているように感じる。


 <薄氷のドレス>の効果はヒバナが変色ウイングラプトルを抑えてくれている間に発動させた。あとはヒバナを巻き込まず、その目の前にいる敵を倒すだけだ。


 せっかくヒバナが作ってくれたチャンスは無駄にしない。

 必ず仕留める!


「【アイスショット・フォール】!」


『――ァ?』


 変色ウイングラプトルの真上に巨大な氷の塊が出現した。



 レベル54で新たに習得した【アイスショット・フォール】は任意の場所から氷の塊を落とすことができる。


 俺が<初心の杖>を唐竹割りの軌道で振るうと、勢いよく氷の塊が落下した。


『アァ……アアアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!』


 轟音。

 砂埃が舞う。

 変色ウイングラプトルは全身に纏った炎ごと押し潰された。



<レベルが上昇しました>

<新しいスキルを獲得しました>



 脳内に魔力体の成長を伝える音声が響く。

 よし、倒した!


「雪姫ちゃーん!」


 ヒバナがダッシュでこっちに戻ってくる。手を大きく上げて行った。


「手出して!」


「え? は、はい」


「いぇーい! あたしたちの勝ち!」


 ぱん、とヒバナは俺が掲げた手にハイタッチをしてきた。元気いっぱいの笑顔が眩しい。


「……そうですね。私たち二人の勝利です」


 俺が言うと、ヒバナはさらに嬉しそうに「ねーっ」と笑みを深めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ