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【旧】アミィ  作者: ゴサク
七章 オレは進のお姉ちゃん
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イルカのショーです!

 俺達は、何とか落ち着いたジュリさんを連れて、水族館のロビーで休んでいた。ジュリさんもそうだけど、アミィの精神状態も良くないようだ。それでも、俺はアミィに聞かなければならない。


「アミィ、こんなときに悪いんだけど、ちょっと聞いていいかな?」


「はい、何でしょうか? ご主人様」


「アミィは、進君を助けたときのことを覚えていないんだよな?」


 アミィは少し落ち込んだ様子で答える。


「はい、私、気付いたら進君を抱き締めていて……何だか私、怖いです。今までは何となく自分が何をしたのか覚えていたので……」


 これは、アミィの症状が悪化しているということなんだろうか? しかも、俺がいないときにこの症状が出るのも初めてのことだ。

 それでも、俺にはこの症状をどうすることも出来ない訳だけど。また迷惑をかけてしまうけど、高月博士に話をしてみようかな。


「ゴメンな、アミィ。せっかくの水族館だったのに、こんなことになっちゃって。俺がもっと気を張っているべきだったよ」


「いえ! やっぱり私が進くんを連れ出したのが……」


 ダメだ、これじゃあ遊園地のときと同じ流れになってしまう。そんなことを考えていると、ロビーに館内放送が流れる。


『ご来館の皆様、先程の警報の件、大変ご迷惑をお掛けしました。当館にて対策としまして、当館のアンドロイドの職員につきましては、全て帰宅させましたので、以降は安心して当館をお楽しみ下さい。本日はご来館戴き、誠にありがとうございます』


 よかった! これを一番心配していたんだ! せっかくの水族館なのに、このまま帰るんじゃ進君が浮かばれない。俺はこの空気を振り払うべく、大袈裟に明るく振る舞う。


「よかったな! 進君! これならイルカのショーも観られるぞ! アミィも、楽しみにしてただろ!? 俺も実は楽しみにしていたんだ!」


「は……はい! ご主人様! 私、イルカのショー、とても楽しみにしてたんです! 良かったね、進くん、イルカさんが観られるよ!」


 アミィも進君を元気付けるのに乗ってくれているみたいだ。アミィだって辛いはずなのに、本当に、ゴメンな、アミィ。


「うん! ぼく、イルカさん大好き! 水族館に誘ってもらったときから、ず~っと楽しみにしてたんだ!」


「進……」


 ジュリさんは進君の反応に少し驚いている。確かに、進君は思ったより落ち込んでいないみたいだった。この場で一番落ち込んでそうなもんなんだけど、何かあったのかな?


 俺達はイルカのショーが始まるまでに、レストランで食事を済ませ、ショーのチケットを確保した。

どうやら、アンドロイドの暴走の時点で帰った客が多かったようで、すんなり前の方の席を確保することが出来た。


 そして、いよいよイルカのショーが始まる。俺達は四人並んで、最前列でビニールを掲げ、ショーの開始に備える。


「楽しみだね! 進くん!」


「うん!」


 本当は、俺は濡れるのが嫌だから、あんまり楽しみとは言えないんだけどな。それでも、アミィと進君が喜んでくれることの方が重要だ。そして、しばらくしてイルカのショーが始まった。


 プールを泳ぐのは三匹のイルカ。プールの周囲を隊列を組んで優雅に泳ぐ。そして、飼育員の合図で様々な芸を披露する。

宙返り、ジャンプ、輪くぐり、ボールのパス回し。それを見るアミィと進君の顔には、さっきまでの陰鬱な空気は微塵も感じられなかった。


「凄いね! 進くん! イルカさんがあんなにたくさんの芸が出来るなんて、お姉さん知らなかったよ!」


「うん! ぼくも目の前で見るのは初めてだから、とっても楽しいよ! あっ! 見て! アミィお姉ちゃん!」


 進君がプールを指差すと、三匹のイルカが同時にジャンプをしているところだった。イルカの着水の瞬間、激しい水しぶきが俺たちに降り注ぐ。 


「きゃあ!」


「うわあっ!」


 これは、ビニールが無かったら全身水浸しだっただろうな。そんな状況でも、アミィと進君はとても楽しそうだった。

 そして、ほどなくしてイルカのショーはフィナーレを迎えた。何だかんだで、俺達四人はイルカのショーを満喫することが出来た。


 それでも、俺も、ジュリさんも、二人が喜んでくれたことのほうが何よりも嬉しかった。これで、進君の為の最高の思い出を作ってあげられたんじゃないかな。終わりよければ全てよし。俺はそう信じている。


 …………


 イルカのショーも終わり、そろそろ閉館の時間がやって来た。俺達は外に出て、体に夕日の光を一杯に浴びる。


「今日は楽しかったかい? 進君」


「うん! とっても、と~っても楽しかったよ! 本当にありがとう! 恭平お兄ちゃん! アミィお姉ちゃん!」


「それなら良かった。アミィはどうだった? 初めての水族館は」


「私もとっても楽しかったです。また、みんなで一緒に来たいですね」


「あぁ、そうだな、アミィ」


「恭平、アミィ、今日は本当にありがとうな。これなら進も心置きなく海外に行けるよ。な、進」


「うん、ぼく、大丈夫だよ。アミィお姉ちゃんと約束したから。みんなとお別れするって、決めたよ」


 進君の顔には寂しさは微塵も感じられなかった。何だか、進君は今日会ったときよりも大人になったようにも見えた。


「それじゃあ、進君が旅立つときには見送りに来るよ、またね、ジュリさん」


「あぁ、本当に何から何までありがとうな、恭平、アミィ」


「それじゃあ、お姉さん達、帰るね。バイバイ、進くん」


「うん、バイバイ、アミィお姉ちゃん」


 こうして俺達は、進君とジュリさんに別れを告げた。次会うときが進君との最後の別れ。俺は、何だか年がらにもなくしんみりしてしまっていた。

ここまで読んで頂き有り難うございます!

もし気に入って頂けたら、感想、評価、ブックマーク等宜しくお願い致します!

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