水族館に入場です!
ジュリさんとの約束から数日後の休日。俺達は高天崎水族館近くの広場でジュリさんと進君を待っていた。
高天崎市に引っ越してきてから大分経つけど、水族館方面まで来るのは初めてだな。
天気は快晴、やっぱり少し肌寒いけど、雲一つない絶好の行楽日和だ。高天崎水族館は、イルカのショーなんかもやってるみたいだから、晴れて本当によかった。
「ご主人様、私、変じゃないですか? やっぱり、いつものメイド服で来たほうがよかったんじゃないでしょうか」
「大丈夫だよ、みんなアミィのこと見てるよ。『何だ、あのかわいい女の子は!』ってね。自信を持てって! アミィ!」
「そんなぁ……からかわないでくださいよぅ……ご主人様ぁ……」
アミィは顔を真っ赤にして俺の方を恥ずかしそうに見つめる。予想通りの反応、まったく、アミィらしいったらないな。
今日、アミィは早速この前買った服を着て来ていた。昨日、アミィは迷いに迷って、二着目に選んだワンピースとジャケットを着ていくことに決めた。
一着目はともかく、三着目のベビードールはさすがにこの季節には合わなすぎる。それに、アミィの肌を大衆の前にさらすのはなんだか悔しく感じる。あの服は、たまに俺の前で着てもらうだけになりそうだ。
俺達が広場に着いてから10分ほど経つと、ジュリさんと進君がやって来た。ジュリさんの表情はこの前よりかは晴れやかなものだった。
「待たせたな、恭平! 今日は宜しくな!」
「うん、宜しくね。進君も、今日はきてくれてありがとうね」
「うん! ぼく、今日が待ち遠しくって、昨日は夜更かししちゃった! 今日はぼくの為に誘ってくれてありがとう! 恭平お兄ちゃん! アミィお姉ちゃん!」
そして、ジュリさんと進君がアミィの方を見る。
「おっ! 何だアミィ、今日はめかしこんじまって、似合うじゃねぇか! な、進」
「うん! アミィお姉ちゃん、とってもキレイだよ! 何だか、お姫様みたい」
「そんな、ジュリさんまでそんなことを……進くんも、お姉さんのことからかっちゃダメだよぉ……」
アミィはますます顔を赤くしてうつむいてしまう。このままだとちょっと可哀想だ、俺は早速、水族館のチケットを取り出す。
「それじゃあ、みんな準備はいいよな?」
「はい、私も、今日が楽しみで楽しみで……それでは、行きましょうか、ご主人様」
「それにしても、本当によかったのか? チケット代まで出してもらっちまって。やっぱり悪いよ、恭平、オレ達もチケット代出すからさ」
「大丈夫、今日は進君の思い出を作ってあげるために、水族館に来たんだ。ジュリさんも進君も、余計なことは考えずに、めいっぱい楽しもう!」
「そうか……ありがとうな、恭平。本当に、ありがとう」
「ジュリさんがそんな顔してちゃ、進君が心配するって! さ、行こう? ジュリさん、進君」
「あぁ……! 行こう! 進も、二人にお礼、言いな!」
「恭平お兄ちゃん、アミィお姉ちゃん、今日は本当にありがとう!」
こうして、俺達は水族館の中へと向かった。ジュリさんと進君の最後になるかもしれない思い出。俺は二人の思い出が最高のものになるよう、願った。
…………
水族館に入った俺達を出迎えたのは、廊下の周りを囲むガラス張りのトンネルだった。
薄暗い廊下の、青くライトアップされた水槽のなかを、大小様々な魚の群れが優河に泳ぎ回る。
「わぁ……! 凄い! 凄いよ、ジュリお姉ちゃん!」
「あ、あぁ、これは確かに凄ぇな、進!」
進君は、早速トンネル内をくまなく見回し、目を輝かせている。そんな進君のことを見守るジュリさんは、やっぱりいつもより元気が無さそうだ。やっぱり、まだ進君のことを考えて、無理してるのかな。
「ご主人様! 水族館って、こんなにたくさんのお魚が泳いでいるものなのですか!?」
「いや、まだまだこんなもんじゃないよ? アミィ。奥に進めばもっとたくさんの魚が観られるよ」
「そうなのですね……これより凄いなんて、私、想像出来ません……!」
アミィはアミィでこれから先の光景に胸をときめかせていた。ここまで喜んでもらえたら、今日の計画をした甲斐もあるってもんだ。
俺達はしばらく水槽を眺めながら奥へと歩を進める。そして、俺達がトンネルを抜けると広いホールへと出た。
ホールの壁一面の大きなガラスのなかを、さっきのトンネルと比べ物にならない数の魚が、ところ狭しと泳ぎ回っていた。
進君とアミィは、二人並んで、ただただその圧倒的な光景に見入っていた。そして、その後ろで、俺とジュリさんは二人の背中を見守る。すると、ジュリさんが後ろから二人に話しかける。
「進、アミィ、お前ら二人で、魚、観てこいよ」
「お姉ちゃん?」
「ジュリさん?」
アミィも進君もジュリさんの方を不思議そうな目で見る。俺も、このジュリさんの提案の意図についてはよく解らないな。
「たまには進もオレ以外ともお話しておかないと、あっちにいってからも困るだろ? アミィお姉ちゃんで慣れておけよ! さぁ、行った行った!」
ジュリさんは二人を強引に大水槽の前へと送り出す。そして、ジュリさんが俺の方を向き、話し始めた。
「なぁ、恭平、ちょっと話をしねぇか? いや、そう身構えるなって、そんなに難しい話じゃねぇからさ」
俺の目の前にいるジュリさんは、いつもの豪快で、元気なジュリさんじゃなかった。
その雰囲気に、俺はすこし妙な空気を感じ、身構えてしまっていたみたいだ。
そして、ジュリさんは一呼吸おいて、再び口を開いた。
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