お昼はおそばです!
俺達が婦人服店を出る頃には、時刻は11時になっていた。ちょっと早いけど、混み出す前に早めの昼飯といこうかな。
「アミィは何か食べたいものとかあるかい?」
「いえ、特には。ご主人様にお任せします」
そうだな、たまには和食っていうのもいいかもしれないな。この辺に確か、旨いそば屋があったはずだ。今の時間ならそこまで人はいないだろうから、行ってみるか!
「アミィはそばって食べたことなかったよな?」
「おそばですか? おそばは、お箸の使い方を教わったときに一度だけ食べたことがありますよ」
「メイドアンドロイドって、そんなこともするんだな」
「はい! 他にも色々お勉強してから、私達メイドアンドロイドはご主人様の元へと行くんですよ!」
「その辺は人間と変わらないんだな。まぁ、いきなり何でもって訳にはいかないか」
俺達はそんな会話をしながらそば屋へと向かう。すると、向かい側から何やら見知った顔が見えてきた。
ド派手な金髪を後ろでまとめたポニーテール。脚の両脇には大きな黒い筒。そして少しワイルドな裂け目のメイド服。
「お! 恭平とアミィじゃねぇか! 久しぶりだな!」
「久しぶり、ジュリさん。相変わらず元気そうだね」
「おう! それだけはいつも心がけてるからな! アミィも久しぶりだな! 元気してたか!?」
「はい! ジュリさんもお変わりないようで何よりです!」
そんな会話をしていると、俺は違和感に気づいた。ジュリさんの隣には、いつも一緒にいたはずの進君の姿がない。
「そういえば、ジュリさん、進君は今日は一緒じゃないの?」
俺の指摘に、ジュリさんの表情が一瞬曇る。
「あぁ、それがな……まぁ、立ち話もなんだ、一旦どっかに落ち着いてから話さねぇか?」
「それもそうだね。それなら、俺達、これからお昼にしようかと思ってたんだけど、ジュリさんも一緒にどうかな?」
「そうですね! 一緒におそば、食べましょう?」
「そばか……オレ、一人のときはあんまり飯は食べないんだけどな。ま、二人がそういうならついていこうかな。もちろん、おごりだよな?」
「参ったな、解ったよ。それじゃあ、行こうか、二人とも」
こうして、俺達三人はそば屋へと向かった。進君が隣にいないジュリさんの表情は、何だか少し空元気で笑っているようにも見えた。
…………
俺達はそば屋でそばが来るのを待つ。俺の予想通り、まだ人もまばらで、すぐに座ることができた。
しばらくすると、俺達の前に三枚のざるそばが運ばれてくる。そして、俺達は三人一緒にそばを食べ始めた。
評判の店だけあって、そのそばの味は絶品だった。そば粉100パーセントがいいなんていうが、俺は断然ニ八派だ。俺がそばをゆっくり味わっていると、対面から声がする。
「ごっそさん! 何だ、恭平、アミィ、食うの遅ぇぞ!」
「早っ!! もう食べたの!? ジュリさん」
「バカ、そばって奴はサッと食べてサッと出ていくのが粋ってもんだろ?」
ジュリさんが江戸っ子の様なことを言っている。前々から思ってたけど、ジュリさんは相当短気だ。なんだか、メイドアンドロイドらしからぬ性格をしているな。
「それにしても、早すぎるよ、ジュリさん。アミィなんてまだ3分の1も食べてない。アミィ、ジュリさんにつられて急がなくていいからな」
「はい、申し訳ありませんが、ちょっと待っててください……」
アミィは小さい口で音を立てずにツルツルとそばをすする。その間、ジュリさんはテーブルの上をつつきながら、落ち着きがない様子で俺達がそばを食べ終わるのを待っていた。
…………
そばを食べ終え、そば茶で一服し、俺はジュリさんに切り出した。
「それで、今日は何で進君と一緒じゃないのかな? もしかして、家で一人で留守番とか」
「バカ! 進を一人にしておけるか! いや、悪い、そうだよな。こればっかりは言わないと解らねぇよな」
何だか、いつものジュリさんと違って歯切れが悪い言い方だな。何か深い事情があったりするのかな、ちょっと突っ込んでみるか。
「もしかして、何か悪い病気とか、そんなことなのかな?」
「いや、そんなんじゃないんだ、進は元気だよ。実はな、進の両親がまとまった休みがとれたらしくってさ。家族三人で旅行に行っちまったんだ。オレはその間、お屋敷で一人お留守番って訳だ。悪ぃな、妙な心配させちまって」
「いや、こっちこそ妙なこと言ってゴメンね、ジュリさん」
そうだったのか。それでジュリさんは少し寂しそうだったのか。すると、ジュリから思ってもいなかった提案を受けた。
「そうだ! 恭平! アミィ! これから家に遊びに来ないか?」
「え!? 勝手に行ってもいいの!?」
「大丈夫! 誰もいないから、実質、オレの家みたいなもんだ! ここからそんなに遠くないから、お茶でも飲んでけよ! な!」
せっかくのデートだ、ジュリさんには悪いけど断るのも手かもな。ここはひとまず、アミィの意思を尊重しよう。
「どうしようか、アミィ」
「私、ちょっと進くんのお家、興味があります! ジュリさんが宜しかったら、是非行ってみたいです!」
「よっしゃ! それじゃあ早速行くか! そうと決まれば善は急げだ! 恭平、さっさと会計済ませろ! 置いてくぞ!」
ジュリさんは、やたらハイテンションで俺をせかす。やっぱり、進君がいないと寂しんだろうな。
俺達は会計を済ませ、ジュリさんに連れられて、進君の家へと向かった。
ジュリさんの足取りは、何だか妙に早足で、とにかく早く家に辿り着きたくてしょうがなさそうだった。
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