全員集合です!
「さて、いよいよだな!」
「はい! 楽しみですね、ご主人様!」
いよいよコンサート開催の当日になった。俺とアミィは集合場所の会場近くの『葛西中央公園』にやって来た。
俺達の周りに人影はない、どうやら俺達が一番乗りみたいだ。
辺りを見回すとそれらしき格好の人がちらほらといるようだ。なかなか気合いの入った服装の人も少なくない。
こんな日にアンドロイドが暴走するなんて考えたくもないけど、頭の片隅には入れておきたいところだ。どうも俺は運がないみたいだからな。
しばらくすると、昌也とキッカさんがやって来た。よかった、キッカさん、来てくれたみたいだな。
「よう! 恭平、アミィちゃん。あれ、まだお前らだけか」
「……」
何だかキッカさん、機嫌があまりよくなさそうだな。ちょっと話しかけてみるか。
「よう、昌也。それとキッカさんも。今日は来てくれてありがとうね、キッカさん」
するとキッカさんは結構きつめの口調で答える。
「この際ハッキリ言っておきますが、正直あんなちんちくりんの歌をわざわざ聴きに行くというのは気が進みませんね、あくまでご主人の付き添いです、そこをお忘れ無きよう……とはいえ、ご招待戴いたことには感謝いたします」
「ちんちくりんか、手厳しいな」
キッカさんも解っているとは思うが、本人に聞こえるように言うのは勘弁してくれよ。
それからしばらくすると、ジュリさんと進くんがこちらにやって来る。
「よう! 恭平、アミィ、それと……」
「あぁ、紹介するよ。昌也とキッカさんだ」
「やぁ、俺は関 昌也。宜しくな!」
ジュリさんも俺と出会った時と同じように八重歯を輝かせながら答える。
「おう、オレの名前はジュリ、こちらこそ宜しくな! 昌也。それと……キッカも宜しく頼むぜ!」
「……宜しく」
大体予想はついていたけど、キッカさんの返事は素っ気ない。そのキッカさんの態度に、ジュリさんの表情が曇る。
「あ!? 何だその態度は、どういうつもりだ? おい」
「どういうつもりも何もありませんが、何か?」
まずいな、何だか険悪な雰囲気だ。俺は昌也に仲裁するよう目配せし、昌也も察して仲裁に入る。
「ゴメン! ジュリさん! キッカさんはこういう性格なんだ! 気を悪くしたなら謝るから、勘弁してくれ!」
ジュリさんも昌也の仲裁に耳を貸してくれたようだ。ジュリさんは昂る気分を押さえて話を続ける。
「あ、あぁ、そうかよ、まぁいいや、それじゃあ、進、お兄ちゃんとお姉ちゃんに挨拶しな」
キッカさんとジュリさんの口喧嘩に圧されてビクビクしていた進君が前に出る。
「片瀬 進です……宜しくお願いします」
進君はペコリと頭を下げる。昌也もそれにニカッと笑いながら答える。
「おう! 宜しくな! 進君」
声がでかいぞ昌也。進君はビックリしてジュリさんの足にしがみつく。
「大丈夫、昌也は悪い奴じゃないから安心していいよ」
「え? 俺、何か悪いことしたかな?」
察しの悪い奴め、それより、キッカさんの様子が少しおかしい。
「……」
キッカさんは進君の方をチラチラ見ながらほんのり顔を赤くしている。これは……なるほどな、そういうことか。
俺は進君をキッカさんの所へ行ってみるよう促した。
「ほら、進君、このお姉さんは怖くないから、行ってきな」
進君は俺の言葉を聞き、キッカさんの元へポテポテと歩いていく。
「……(ナデナデ)」
キッカさんは黙って進君の頭を撫でる。やっぱり、キッカさんは小さい子供が好きなようだ。キッカさんの様子に昌也も意外そうに見入っていた。
そんなやり取りをしていると、最後に紫崎とメリーさんがやって来た。そして皆、一様に紫崎の格好を凝視する。
その格好は海のような深い青のハッピで、その背面にはテガデカと二人の人魚が描かれていた。侮っていた、紫崎は正真正銘のガチだ。
「お待たせしました、いや~ 今日は皆さん宜しくお願いします。あ、僕、紫崎 琢磨っていいます。こっちはメリーっていいます」
何か会社での口調と違ってナヨナヨしてるな、オタクモード全開だ。続けて、メリーさんが挨拶する。
「始めましてぇ~ わたし、メリーっていいます~ 宜しくお願いしますねぇ~」
相変わらず気の抜けるしゃべり方だ。挨拶を聞いた皆が、一斉にメリーさんに見入る。
「デカいな……色々と」
「ご主人?」
「あ、いや、ゴメン! キッカさん!」
なぜ謝る。
「でっけぇ……」
「すごい……おっきい……」
メリーさんの目が進君を捉える、これは、また行くのか?
「キャ~♥️ かわいいぃ~♥️」
やっぱり行った!
進君がアミィの時と同じようにメリーさんに捕獲された。進君はビックリしながらメリーさんの抱擁を受ける。
「あっ! 何しやがるこのおっぱいお化け! 離せ! 進、大丈夫か!?」
ジュリさんが半ば強引に進君をメリーさんから引き剥がす。
「何だか、お母さんの匂いがした……」
進君はうっとりた様子でボーッとしていた。
「おい! しっかりしろ、進! 戻ってこ~い!」
俺達は進君が正気になるまでしばらく待つことになった。
…………
「さて、これで全員揃ったな。それじゃあ、そろそろ会場に向かおうか」
俺達は会場に向かって歩き始めた。引率は紫崎に任せれば間違いないだろう。
生まれて初めてのコンサート、正直俺は未知の空間への楽しみを押さえられないでいた。





