愛の話
俺達は高月博士の研究所へとやって来た。この応接室も大分見慣れたものだ。
俺達の前には高月博士自慢らしい、淹れたてのコーヒーが湯気をたてている。
俺はアミィが見たという夢の内容について高月博士に話した。最も、俺に解っているのは紅い髪の女性の夢を見たというだけの話だけど。
細かい内容についてはどうもアミィが話したがらないようなので仕方ない。
「今日はまた面白い話を聞かせてもらったよ。メイドアンドロイドは紅い髪の女の夢を見るか、なんてね。何だか小説のタイトルにでもありそうじゃあないか」
高月博士はコーヒーをすすりながら窓の外を見る。
「しかし、何とも奇妙な話だねぇ。アミィちゃんの場合、充電中の意識は無いはずなんだが。私にとっても初めてのケースだね……このようなこともあるもんなのかね。いや失礼、私も人格プログラムの神秘については門外漢なもんでね、お役に立てず申し訳ない」
どうも高月博士の態度が鼻につく。話の内容も何だか要領を得ない。
しかし、こちらとしても高月博士に頼るしかないのも事実だ。今日の所はこの話についてはここまでにしておこうか。
「いえ、今日はわざわざお時間を取って戴きありがとうございました」
「いやいや、君と私の仲じゃあないか! それはそうと、私からも君にお願いがあるのだが、いいかな?」
高月博士からお願い? 珍しい話もあったもんだ。断る理由もない、俺はひとまず高月博士の話を聞くことにした。
「何でしょうか?」
「いやなに、ちょっとアミィちゃんのチェックをさせて欲しくてね」
「と、いいますと?」
「よくよく考えると、アミィちゃんがウイルスに感染しているか一度も診ていない事に気付いてね、いい機会だからどうかと思ったのだよ」
そうだ。アミィが攻撃的な性格になったのはあくまでバグのせいであって、ウイルスに感染しているかは別問題だ。
なぜ今まで気付かなかったのか、まぁ色々あったからな。
「そうですね、是非お願いします」
「任せたまえ。それじゃあアミィちゃん、ついておいで」
高月博士とアミィがソファーから立ち上がる。何だか、初めて高月博士のところに来たときのことを思い出してしまうな。
「はい! 宜しくお願い致します! それでは行って参ります! ご主人様!」
「あぁ、行ってらっしゃい、アミィ」
俺は応接室の扉から出ていく二人を見送った。そして、俺は静かな応接室でしばらく手持ちぶさたな時間を過ごした。
…………
30分程すると高月博士が応接室に戻ってきた。アミィの姿はない、戻ってきたのは高月博士だけのようだ。
「待たせてすまないね、ちょっと機器の調子が良くなくてね、もう少しかかりそうなんだ」
「いえ、特に急いでないので、大丈夫ですよ」
「悪いね、そうだ! コーヒーのおかわりはいかがかな? 研究所はこんな成りだが、コーヒーだけはお金をかけているんだ」
「そうですね、いただきます」
高月博士が高そうなコーヒーメーカーから新しくコーヒーを注ぐ。応接室の中に、あまり嗅ぎ慣れない豊潤なコーヒーの香りが漂う。
「……」
「……」
応接室を沈黙が包む。その静かさは時計が時を刻む音がハッキリと聞こえてくるほどだ。
アミィがいないとこんなにも空気が重いのか。俺はこの空気に耐えきれず、あらぬ話題を切り出してしまう。
「高月博士」
「何かね?」
「高月博士は、人間とアンドロイドの間に愛が芽生えることはあると思いますか?」
「!!」
僅かだが、高月博士が表情が強ばった。しかしすぐにいつもの飄々とした表情に戻った。
「それは、真面目な話かな?」
「はい、真面目な話です」
なぜ、こんな話を高月博士にしようと思ったのだろうか。俺はどんな答えを期待しているのだろうか。
いや、ただ誰かに何かしらの答えを貰って俺がアミィに抱いている気持ちを正当化したいだけなのかもな。
「そうかい、それじゃあ、私も真面目に答えるよ」
高月博士は浅く息を吸い込み、ゆっくりと話し始めた。
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