ゴメンな
ゴンドラの鍵が開けられる。俺達は観覧車を降りて遊園地の出口へと歩いていく。
その足取りは、観覧車に乗る前とは違い、晴れやかなものだった。俺達の関係は、一時間前とはもう違うものになっていた。
遊園地の中は人がまばらで、ほとんどのアトラクションが営業を終えていた。
昼間とは全然違う、静かな遊園地。歩道の両脇の電灯だけが、遊園地全体を明るく照らし出す。
「……ご主人様」
「何だい? アミィ」
アミィはモジモジしながら俺の方を見つめてくる。その顔には、ほんのりと赤みがさしている。
「もし宜しければ……手を、繋いでくれませんか?」
「もちろんいいとも、さぁ、アミィ」
俺はアミィに手を差しのべ、アミィはその手を握り返す。そして、俺はすかさずアミィの指に自分の指を絡ませる。
「あ……! ご主人様……!」
どうせなら恋人繋ぎ、俺達はもうそんな関係だ。俺はガッチリとアミィの手を握る。
「これならもう離さない。アミィはこの手の繋ぎ方は嫌かな?」
「いえ、そんなことは……ありがとうございます……ご主人様……」
アミィの手からはジワリと熱を感じた。多分アミィも同じように俺の手から熱を感じていることだろう。
二人並んで遊園地の歩道を歩いていく。時々周囲から奇異の目で見られた気もしたがそんな事はどうでもいい。俺達は手を繋いだまま遊園地を後にした。
…………
「それではお休みなさいませ、ご主人様」
「あぁ、お休みアミィ」
俺達は部屋に戻ってきた。風呂を済ませると時刻は既に23時。明日も休日とはいえ今日はさすがに疲れた。
今日は俺の人生の中でも格別の一日だった。明日からの事を考えると楽しみで堪らない。今日はいい夢を見ることができそうだ。
…………
ここはどこだろう? 周りには何も無い、ただ真っ白な空間、私は辺りを見回す。
やはり何も無い、誰もいない、ただ白いだけ。どこまでも続く白、私は何だか不安になってしまう。
「ここ……どこ……?」
私の不安を感じ取ったかのように、どこかから声がしてきた。柔らかくて、暖かくて、すごく落ち着く、優しい声だ。
「アミィ……アミィ……」
私は、声がする方へと歩いていく。目の前の白に私は吸い込まれるように、歩いていく。
…………
しばらくすると目の前に誰かが立っているのが見えた。私はその誰かの方へ、夢中で駆け寄った。
やがて私は一人の女の人の前に辿り着いた。その女の人は、紅い髪で、青色の瞳で、背が高かった。
その女の人は、白いTシャツとジーンズを身につけて、私の方に微笑みかけている。
「やぁ、はじめましてだな、アミィ」
「あなたは……誰?」
「俺はお前さ」
「あなたは……私?」
「そうさ。まぁ、本当の所はもうちょっと複雑なんだが、今日はその話はいいだろ」
その女の人は細くて白い手で、私の頭を撫でる。私の目の前まで迫ったその顔は、とても優しそうな微笑みを浮かべている。
「それにしても、今日は頑張ってたじゃないか。恭平、喜んでくれて良かったな。あいつは俺の目から見てもなかなかいい男だ。これから先色々辛いことはあるだろうが、恭平の事、離すんじゃねぇぞ。俺はいつでもお前達のこと、見てるからな」
私はただ目の前の女の人の話に聞き入ることしか出来なかった。とても口を挟めない、それ程までにその女の人の声は私の意識を持っていってしまう。
「さて、そろそろ時間かな。最後に一つだけ」
そう言った女の人の瞳がうるむ。
「恭平を守るためとはいえ、いつもアミィを辛い目に遭わせちまって、ゴメンな。本当はアミィは乱暴が嫌いだってことは解っているんだが、それでも恭平を守れるのは傍にいるアミィしかいないんだ」
女の人はその場にしゃがみこんで、私を抱き締める。私の頬と女の人の頬が触れ合う。
女の人からは何だか心が落ち着く香りがして、その体はとても暖かい。
やがてその女の人は私から手を離し、立ちあがってこちらに笑顔を向ける。
「それじゃあな、アミィ、お前達の事、俺は応援してるからな!」
女の人はそう言うと、振り返ってそのまま真っ直ぐに歩いていく。こちらを振り向くことなく、手を振りながら、歩いていく。
私はその女の人を追い掛けた。でも、その女の人はどんどん遠ざかっていく。追い付けない、そんなに速く歩いている訳じゃなさそうなのに。
「待って……待って下さい……! あなたは……あなたは……!」
女の人に追いすがろうとする私の目の前がどんどん白くなっていく。しばらくすると、私の目の前にはもう何も見えなくなっていた。
ここまで読んで頂き有り難うございます!
もし気に入って頂けたら、感想、評価、ブックマーク等宜しくお願い致します!





