かかってこいよ!
「大丈夫か! ジュリさん! 進君!」
俺は上空で浮いているジュリさんに、口の周りを手で覆って呼び掛ける。すると、それを聞いたジュリさんから大声で返事が帰ってきた。
「あぁ、オレも進も無事だ! 待ってろ、今そっちにいく!」
ジュリさんがこちらへゆっくりと飛んできて地面に着地する。ジュリさんの着地と同時に、俺達の周囲に一瞬強い風が吹き付けた。
「どうした、お前ら。何でお前らがここにいるんだ?」
「いや、俺達も近くでアンドロイドに襲われて、辺りを見回したらジュリさん達が襲われているのが見えたから駆け付けたんだ」
「そういうこった。ま、二人とも怪我が無さそうで何よりだ」
「……! アミィ……?」
ジュリさんはアミィの口調に少し驚いているようだ。そして、ジュリさんはまじまじとアミィの方を見る。
「どうしたアミィ、何か雰囲気違うじゃねぇか」
俺はジュリさんのアミィに対する質問に割り込む。アミィが説明すると何だか面倒なことになりそうだし、ここはひとまずうやむやにしておこう。
「いや、これには事情があってね……」
「そうかよ、まぁ、今はそれどころじゃねぇよな」
俺の雰囲気を察したジュリさんは、それ以上深くは詮索しなかった。俺にも詳しくは説明できないから、正直助かる。
「それにしても、お前ら、ありがとうな。わざわざオレ達を助けに来てくれたんだよな? 気持ちは嬉しいよ。でもな……」
ジュリさんが転がるアンドロイド達に向き直る。アンドロイド達は起き上がり、こちらに鋭い視線を向けていた。
「あいつらは許せねぇ! 進に何かしようとする奴はオレがぶっ潰す! お前ら、少しの間、進を頼む」
ジュリさんは俺に進君を預けると、アンドロイド達に向かってズンズンと歩を進める。
このまま逃げれば逃げ切れるんだろうけど、ジュリさんから有無を言わせぬ迫力が漂う。
そうだった、ジュリさんは進君の事になると見境が無くなる性格だったんだ。
こうなると俺には何もできない。俺は黙って、進君を抱き寄せながらジュリさんを見守ることにした。
「まぁ、あいつがそこまで言うなら、ゆっくりとお手並みを見せてもらおうじゃないか。安心しな、何かあったら俺がやるよ」
アミィもひとまずはジュリさんのことを静観するようだ。アミィはただ静かに腕を組んで、ジュリさんを見据える。
「さて、覚悟しろよ、お前ら。オレを怒らせたらどうなるか身をもって解らせてやるからな!」
ジュリさんはアンドロイド達を睨みつけ、口許に怒りを込めた笑みを浮かべながら指をボキボキと鳴らし、徒競走のスタートのように腰を低く落とす。
ジュリさんの感情の昂りに答えるように、ジュリさんの掃除機の向きが真後ろ方向に可変して、エンジンのアイドリングのように唸りを上げる。
徐々に風圧を上げていく掃除機、噴出する旋風は周囲のゴミや木の葉を巻き込んで大きくなっていく。
そして、十分に勢いを増した掃除機からの風の噴出で、ジュリさんが目の前のアンドロイドに低空飛行で真っ直ぐに飛んでいく。
「てめぇら! ウチの進に何しようとしてくれてんだコラァ!」
ジュリさんは右足を前に突きだして、アンドロイドの一体の前で片足で飛び上がり、足の裏で鋭い飛び蹴りを見舞う。
その足の動きに合わせて、掃除機の向きがジュリさんの足の水平方向に可変して、その風圧で飛び蹴りを更に加速させる。
そのままジュリさんの足の裏がアンドロイドの胸のど真ん中に直撃し、その強烈な衝撃音と共に、アンドロイドは体をくの字に折って茂みの方へ派手にぶっ飛んだ。
そして、その勢いのままアンドロイドは数メートル向こう側の太い木に激しい音と共に叩きつけられ、力なく木に沿ってズルズルと落下していく。
「もう謝っても絶対に許さんからな。オレの言ってることを解っているか解ってないかは知らねぇけど、そんなの関係ねぇ、オレはオレの気が済むようにやるだけさ」
ジュリさんは近くにいたアンドロイドを睨み付け、その近くまでツカツカと歩みを進める。
アンドロイドもそれを黙っては見ていない、アンドロイドはジュリさんに向かって腕を振り下ろす。
「馬鹿にしてんのか! そんなもんでオレを倒そうなんざ100年早いぜ!」
ジュリさんはアンドロイドの腕の振り下ろしを、バレリーナのように体を横にクルリと回転させながら華麗に避ける。
それと同時に、ジュリさんの足の掃除機の向きがそれぞれ真逆の方向に横向きに可変する。
そして、掃除機からの風の噴出で、ジュリさんの体がコマのように唸りを上げながら回転する。
「これだけ加速すれば十分だ! これでも喰らえや!」
ジュリさんの右足から放たれる竜巻のような回転を伴った後ろ回し蹴り。勢いよく繰り出されるその蹴り足に、ジュリさんの体が激しく捻転する。
風切り音を上げる蹴り足の一閃が、正確にアンドロイドの脇腹を捉える。
そして、その強烈な一撃を受けたアンドロイドは横倒しに倒れ込み、そのまま地面の上を激しい摩擦音と共に滑っていった。
「っとと、さすがにちょっとキツいな。だが、こんなんじゃ足りねぇ、お前ら全員ブッ飛ばすまでオレは止まらねぇ! 止まれねぇんだよ!」
あれだけの激しい回転だ、ジュリさんだって平衡感覚がおかしくなっていても何も不思議じゃない。それでも、ジュリさんはしっかりとした足取りで残りのアンドロイド達に闘志に満ちた眼光を向けている。
「次はお前だ! どうした! 来ないのか? それじゃあ遠慮なくこっちからやらせてもらうぜ!」
何だかジュリさんの様子が少しずつおかしくなってきた。その顔にはまるでこの状況を楽しむかのような笑みを浮かべている。
ジュリさんは目の前のアンドロイドの懐に走り込み、急速にしゃがみこんで、体を後ろに反らしながら飛び上がり、アンドロイド目掛けて大気を両断するような鋭いサマーソルトキックを放つ。
ジュリさんの動きに反応できずにサマーソルトキックをあごにまともに受けたアンドロイドは、一瞬足が地面から離れ、そのまま着地し、その場に崩れ落ちた。
ジュリさんはサマーソルトキックの勢いで空中でクルクルと回転し、背筋をピンと伸ばして手から着地して、そのままバク転して立ち上がる。
驚くべきはジュリさんの抜群のバランス感覚。さっきの回転からの復帰といい、ジュリさんの動作はまるでダンサーのように安定している。
「なんだお前ら、寄ってたかって襲っておいてこんなもんかよ! どうした! どんどんかかってこいよ! お前ら!」
ジュリさんは、荒々しい声でアンドロイド達を挑発する。どうやら、ジュリさんは戦闘で大分テンションがハイになっているようだ。
「ギャアッ!」
ジュリさんの挑発に反応して、一体のアンドロイドがその場で飛び上がり、ジュリさんの方に真っ直ぐに向かっていく。
しかし、ジュリさんの目は既にアンドロイドを捉えていた。ジュリさんは左足で地面をしっかり捕らえ、右足を振り上げた。
「遅ぇ! ハエが止まるぜ!」
ジュリさんは高々と右足をかかげ、鞭のようにしなやかなハイキックでアンドロイドを迎撃する。重さが乗った蹴りを側頭部に受けたアンドロイドは、はたかれたような鋭い破裂音をたてながら横に吹き飛んだ。
「この際だ、お前ら全員、オレが相手してやる! どんどん来いや!」
ジュリさんはアンドロイド達の中心で、両手で手招きしながら立っている。相当な数のアンドロイドを相手取りながら、その戦力差をものともしないジュリさんの殲滅能力は圧倒的だった。その迫力に、俺は思わず息を呑んだ。
「凄いな、君のお姉ちゃん。あんな数の相手に勝っているなんて」
俺の傍で、進君は戦うジュリさんを見ながらつぶやく。その眼差しは、何だかお芝居でも見るかのようにジュリさんを捕らえて離さない。
「ジュリお姉ちゃん、カッコいい……」
不謹慎だけど、確かに踊る様に戦うジュリさんの姿は格好良かった。俺達はしばらくの間、バタバタと倒れていくアンドロイドと、その中心で奮戦するジュリさんを眺めていた。
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