「キッカの秘密」です!
高月博士は、イソイソとキッカさんの特徴について話し出した。その口調は何だか楽しそうで、聞いているこっちは妙な気分になってしまう。
「4961型は基本的なスペック自体が私が開発したメイドアンドロイドの中ではトップクラスでね。あらゆる状況に対応すべく高性能の空間把握用のセンサーが内蔵されており、それにより目の前の対象の数、位置、距離……それらを瞬時に算出する事が出来る。更に平行思考能力にも優れ、一度に多くの作業をこなす事が可能だ」
やっぱり、4961型は相当スペックが高い機体なんだな。そんな俺の感想をよそに、高月博士は更に話を続ける。
「そして、4961型の独特な特徴として、『精密動作性』が挙げられる。機体の随所にジャイロセンサーを設けることで、視覚から得られた情報を基に正確な動作を淀みなく行う事が出来る。戦闘の際には刀を鞘から抜いてから納めるまでの動作を素早く正確に行う事に寄与している。目の前の対象への攻撃の正確さは言わずもがなだ。どこに嫁に出しても恥ずかしくない自慢の娘だよ」
ひとしきり高月博士がキッカさんの秘密を話し終えた。そして、高月博士は昌也の方をまじまじと見ながら尋ねた。
「それにしても、4961型は君のような若者が買うにはちょっと値が張る機体ではないかね? 私も自分が設計した機体の値段についてはある程度把握しているが、確か、新品で800万から900万くらいじゃなかったかな」
このオッサン、昌也の痛い所をずけずけと。昌也は苦笑いを浮かべながら、高月博士の質問に答えた。
「確かに、高月博士の言う通りくらいの金額はしたなぁ。お宅の娘さんをお嫁に呼ぶために多大な犠牲を払ったのは間違いないよ。まぁ、それでも何とか生活するくらいの蓄えはあるからいいんだけどさ……」
まぁ、昌也の生活は毎日昼飯があんぱんと牛乳になるくらいは逼迫しているはずだけど。
それでも、何とか死なずに暮らしているのは間違いないから、あえてこの話に触れるのはよそう。
その昌也の答えに、高月博士は素っ気なく答えた。
まぁ、他人の台所事情に深々と首を突っ込むのはどうかと思うし、この話はこんなところで打ち切るべきだろう。
「そうかね、ま、そこのところは私が詳しく聞くようなことでもないか。私から言えるのは、私の娘を大切にしてやってくれということだけかな」
そして、高月博士は改めてテンションを高めて話し始めた。
「以上! キッカさんの秘密でした! ご清聴ありがとう、諸君!」
「いや~! 詳しくはよく解らなかったけど、キッカさんがスゴいことが出来ることは解った! やっぱりキッカさんは最高のメイドなんだな!」
昌也が両手でバンザイしながらはしゃいでいる。なんだこの茶番は、俺達は何を見せられているんだ。
俺を含めて、皆一様に真顔で二人を見ていた。それは当の本人であるキッカさんも例外ではない。
いや、キッカさんの顔をよく見ると、少し顔を赤くしてごく薄く笑みを浮かべている。恐らく、昌也に自分が誉められて喜んでいるんだろうな。最も、口が裂けてもそんなこと本人には言えないけど。
「さて、それじゃあ今日のところはこんな所かな? 今日は皆、私の長ったらしい話に付き合ってくれてお疲れだったね」
高月博士が、これまでの弛緩した雰囲気を正しながら言った。こうして見ると、やっぱり高月博士も真面目なんだと感じてしまう。
「本日はマリンちゃんを診て戴いて、本当にありがとうございました。これからも何か私達に困ったことがあったらご相談に載って戴けたら幸いです」
夏樹ちゃんがソファーから立ち上がり、深々と頭を下げる。とてもまだ高校生とは思えない立ち振舞いに、俺は何だか感心してしまう。
「あ、ありがとうございました! 高月博士! これからも宜しくお願いします!」
マリンちゃんも夏樹ちゃんに倣って、頭を下げる。この感じ、やっぱりマリンちゃんより夏樹ちゃんの方がしっかりものだな。
「もちろんだとも。これからも遠慮なく私を頼ってくれたまえ。いやいや、それにしてもまさかアイドルとはねぇ……」
高月博士が窓の外に目を向けて、しみじみと語り始めた。
「まさか、私の開発したメイドアンドロイドがアイドルをやっているとはね。研究ばかりの毎日で俗世の流行りには疎くてね。形がどうあれ私の娘が活躍していることは喜ばしいことだ」
高月博士は窓の外から夏樹ちゃんとマリンちゃんの方に向き直る。そして、さっきの茶番劇のときとは似ても似つかない真面目な雰囲気で、二人に軽く頭を下げた。
「夏樹ちゃん、これからもマリンちゃんと一緒にアイドル活動、頑張って下さい。そして、私の娘を、公私共々宜しくお願いします」
そんな高月博士に、夏樹ちゃんとマリンちゃんは返事を返す。
「はい、ありがとうございます。それからも二人三脚で、アイドル活動頑張りますから、もしよかったら私達のこと、応援してください」
「今日は本当にありがとうごさいました! これからも宜しくね! お・と・う・さん!」
「いやはや、私が『お父さん』か、ハハ……」
高月博士は頭を掻きながら、恥ずかしそうに笑っている。お父さんとは上手く言ったもんだ、これには高月博士もタジタジだ。
ひょんな事から知り合った二人の少女。この二人ならこれから先の困難にも立ち向かっていけるだろう。
俺達は一斉に立ち上がり、高月博士の研究所を後にした。
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