夏樹さんとマリンさんです!
マリンちゃんが病室から出てきた。その顔は、病室に入る前よりは幾分元気を取り戻していた。
マリンちゃんによると、夏樹ちゃんは少し耳の調子が悪く、音が聞こえにくくなっているらしい。それ以外は特に体調には問題なく、三日程で退院できるそうだ。
俺達は病室に入る許可を取り、夏樹ちゃんに会いに行った。
「それにしても、大事にならなくて本当によかったな」
「ホント、耳だってアイドルの商売道具だろうから、どうなるかと思ったぜ」
夏樹ちゃんは病室にゾロゾロと入ってきた俺達の顔を見回した後、マリンちゃんに尋ねた。
「マリンちゃん、こちらの方々は?」
夏樹ちゃんの質問に、マリンちゃんが答える。
「この人達が救急車を呼んでくれたんだよ! 本当に、この人達がいなかったら今頃どうなってたか解らないよ」
「初めまして、夏樹……ちゃん、でいいのかな?」
いかん、しどろもどろな挨拶になった。さすがに国民的アイドルの前だと緊張するな。
そんな俺の挨拶に、夏樹ちゃんはクスクス笑いながら答えた。よかった、思ったより元気そうだぞ。
「はい、それで構いませんよ」
俺と昌也は夏樹ちゃんにそれぞれ自己紹介をした。
「俺は響 恭平、宜しくね、夏樹ちゃん」
「俺は関 昌也、宜しく! いや~ それにしても、まさかあの夏樹ちゃんとお知り合いになれるなんてな~ 運がいいぜ!」
「やめろ馬鹿! 何考えてんだ、こんなときに!」
俺は昌也の頭をひっぱたく。
「痛っ! 何すんだ、恭平!」
「お前はこれくらいしないと解らん奴だからな、悪く思うなよ」
「ちぇっ、いいじゃねぇか、これくらい」
全く、デリカシーのない奴だ。そんなやり取りをしているうちに、アミィとキッカさんも自己紹介をする。
「私、アミィと申します、宜しくお願い致しますね! 夏樹さん!」
「御初に……」
「キッカさん、そんなに畏まらない。気楽に気楽に」
「そうですか、それでは……私、キッカと申します。宜しくお願い致します」
「私、藤野 夏樹です。皆さん、宜しくお願いしますね」
夏樹ちゃんは、俺達のやり取りを見ながらまたクスクスと笑っている。よかった、昌也の言動には怒ってないみたいだ、後で昌也にはお灸をすえねばならんな。
「それじゃあ、私も自己紹介!」
マリンちゃんがえらく張り切っている。その表情はもうステージの上と変わらない、ハツラツとしたものだった。
「私は、歌って踊れるメイドアンドロイド! マリンちゃんで~っす! ヨロシクねっ!」
マリンちゃんは俺達に向けてウィンクを飛ばしてきた。先程までの沈痛な空気はどこへやら。
まぁ、夏樹ちゃんが大事なくて安心したんだろうな。いつもの切れはないけど、十分に元気は伝わってきた。
「あぁ、宜しくね、マリンちゃん」
「宜しくな! マリンちゃん!」
「マリンさんも、宜しくお願い致しますね!」
「……宜しく」
「マリンちゃん、ここ病室だからちょっと静かにね」
夏樹ちゃんが大袈裟に呆れていたようなポーズを取る。病室には俺達だけだから、極端に騒がない限り大丈夫だろう。
「あ、そっか、ゴメンね夏樹ちゃん、耳の調子が悪いのに騒いじゃって」
「ゴメンゴメン、冗談だよ、マリンちゃん。大丈夫大丈夫、気にしなくていいよ」
俺はそんな二人のやり取りを見て微笑ましく思っていた。そんな中、昌也が口開いた。今度は余計なことを言ってくれるなよ。
「それにしても、二人ってよく似てるよなぁ……実は、前々から気になってたんだよな、俺」
確かに、俺もその事には少し気になっていた。俺は改めて二人を見比べる。
夏樹ちゃんはショートカットで、マリンちゃんはお団子ヘアーといった違いはあるけど、二人とも茶髪に鳶色の瞳で、とても人懐っこい顔立ちをしている。
身長は160センチ程で夏樹ちゃんが少し高いようだけど、横に並べば姉妹にしか見えない。
二人のトレードマークである裾とスカートが短く切り詰められたメイド服を着ればツインマーメイドの完成だ。
そんな昌也の何気ない発言に、夏樹ちゃんが反応する。そして、夏樹ちゃんはチラッと俺の方に視線を向け、昌也の疑問に答える。
「あぁ、それには理由がありまして、もし皆さんが宜しければ、お話ししましょうか?」
「ちょっと夏樹ちゃん! いいの?」
「別にいいよ、減るもんじゃないし」
夏樹ちゃんはあっけらかんとした態度でマリンちゃんに返事をする。
それにしても、俺は夏樹ちゃんがなぜ俺の方に一瞬だけ視線を送ったのかが少し気になってしまった。
そんな俺の気持ちを知ってか知らずか、夏樹ちゃんは二人が似ている理由について話し始めた。
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