何か考え事ですか?
「ゴメンゴメン、待たせたね」
高月博士が研究所の中からバタバタと戻ってきた。そんなに慌てなくても良かったのに。
「君達にこれを渡しとこうと思ってね」
高月博士の手には切手サイズのチップが10枚ほど乗っていた。
「何ですか? これ」
「これは例のウイルスを不活性化させるプログラムが書き込まれたものでね、キッカさんに使用したものと同じものだよ。もし君達がキッカさんと同じような症状のメイドアンドロイドに会ったら使ってあげるといい。使い方は首の後ろのスロットに差し込むだけでいい、簡単だろ?」
高月博士はチップを半分ずつ俺と昌也に渡した。結構小さいものだから、割ったりしないよう注意しないとな。
「これから先キッカさんの様なメイドアンドロイドがどんどん増えてくるだろうからね……そうならないに越したことはないんだが」
俺達は、高月博士からチップを受けとると今度こそ研究所を後にした。
…………
俺達は夕飯を済ませ、リビングでゆったりと過ごしていた。テレビを見ると、やっぱり件の新種ウイルスについての話題が目立つ。
それはそうだろう、何せ、現代社会の根本が脅かされているわけだからな。
「ご主人様、大丈夫ですか?」
テレビを食い入るように見ている俺を見て、アミィが俺の顔を覗き込んで心配そうに話しかけてきた。
「え? 何がだい? アミィ」
「いえ、ご主人様、何だか元気が無いように見えましたので。何か考え事ですか?」
「いや、大丈夫、何でもないよ。心配しないで、アミィ」
「それならよいのですが……解りました、ご主人様」
やっぱり、アミィは俺のことをしっかり見てるな。確かに、俺は研究所から帰ってきてどこか上の空だった。
高月博士からあんな話を聞いたからだろうか。こういう時は、何か別の事を考えるのが一番だ。
「そういえば、最近どこにも行ってないから次の休み辺り遊びに行こうか。アミィはどこか行きたい所はある?」
「行きたい所ですか……」
アミィは唇に指を当てながら、しばらく考えてから言った。
「海! 私、海に行きたいです! 電車の窓から見える海を見ていたら、行ってみたくなっちゃいました!」
「海か……」
季節は夏真っ盛り。気分転換には丁度いいかもな。
もちろんウイルスの件もあるけど、昨日の今日で大騒ぎになったりはしないだろう。
「よし! それじゃあ次の休みに海に行ってみようか! アミィは海は初めてだよな?」
「はい! 見たことは何度かありますが、実際に行くのは初めてです!」
「そうだ! どうせなら昌也とキッカさんも誘ってみるか!」
「はい! 賑やかになりそうですねぇ~」
「それじゃあ水着も買わないとな! どんな水着がいいかな……」
「ありがとうございます! ふわぁ~ とても、楽しみです~」
そうと決まれば善は急げだ。俺は早速、約束を取り付けるため、昌也に電話した。
「もしもし、昌也?」
『どうした、恭平、何か用事か?』
「いや。ちょっと色々あって、今度の休日にアミィと海に遊びに行くことになったんだけど、昌也とキッカさんも一緒にどうかなって」
『いいねぇ! そういえば今年はまだ海に行ってなかったからな~ 丁度いい、行く行く!』
「キッカさんも大丈夫かな? キッカさん、あんまり海とか得意じゃなさそうだけど」
『そんなことないって! キッカさんも『最近運動していないので、体が鈍って仕方ありません』なんて言ってるくらいだから、大丈夫大丈夫!』
「それなら良かった。それじゃあ、細かい日程はまた連絡するから」
『おう、頼んだぜ! それじゃあな! 恭平!』
「あぁ、じゃあな、昌也」
この感じなら、当日は二人とも問題なく来ることができそうだな。アミィの言う通り、今度の休日は賑やかになりそうだ。
…………
「それではお休みなさいませ! ご主人様!」
「あぁ、お休み、アミィ」
俺は楽しみなような、不安なような気持ちでベッドに潜り込んだ。高月博士との話の内容が頭をちらつく、今日は何だが悪い夢を見そうだ。
…………
『お兄ちゃん……私のことはいいから……逃げて……』
『馬鹿! そんなこと出来るわけ無いだろ!』
『でも、このままだとお兄ちゃんまで……』
『大丈夫! 俺のことは心配いらないからな! ちょっと待ってろ! 誰か大人の人呼んでくるから!』
…………
『大丈夫か!? もうすぐ救急車がくるからな! それまでの辛抱だ!』
『ゴメンね……お兄ちゃん……私、もうダメみたい……私、お兄ちゃんの妹でいられて……幸せ……だったよ……? だから……お兄ちゃんは……私のことを……忘れないでくれたら……それで……いいから……ね……?』
『バカ! そんなこと言うな! お前もこれからずっと、俺と一緒に生きていくんだ! 生きていくんだよ!』
『うれしい……ありがとう……やっぱり……お兄ちゃんは……私の自慢のお兄ちゃん……だ……よ……』
『え……おい、嘘だろ、おい、起きろよ……』
『……』
『おい……おい……うあ……あ……あ……うゎああああああ!!!』
…………
「亜美……お兄ちゃん……お前を助けられなくて……ゴメンな……」
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