キッカさん、ちょっと怖いです……
その週の休日、何とか高月博士とのアポイントを取り付けた俺達は、電車に揺られながら高月博士の研究所へと向かっていた。
車窓の外は、前にアミィの電車に乗った時と同じように雲一つ無い快晴の元、海が太陽に照らされてキラキラ光っている。
ボックス席には俺とアミィ、昌也とキッカさんが隣り合って座っている。車内は空調が効いているとはいえ、夏の陽射しで窓際は結構暑い。
そんな中、アミィが正面のキッカさんに話しかけた。これをきっかけにキッカさんと仲良くなれるかな?
「えっと、はじめまして、キッカさん。私、アミィと申します」
「……」
キッカさんの反応は無い。ただ無表情で、窓の外を眺めながら佇んでいた。
「その……宜しくお願い致しますね」
「……」
やはりキッカさんの反応は無い。すると、アミィは小声で俺に話しかけてきた。
「何だか、ちょっと怖い方ですね……」
アミィの言葉に、キッカさんが反応した。キッカさんは窓の外に目を向けたままアミィに話しかける。
「聞こえてますよ、おちびちゃん」
「おち……!」
アミィはキッカさんからの言葉にショックを受けているようで、うなだれて、何やらブツブツとつぶやいていた。
確かにおちびちゃんであることは間違いないんだけど、何だかキッカさんの言葉には棘があるな。
すると、昌也がアミィのほうに身を乗り出しながら口を開いた。その顔は、なんだか少し申し訳なさそうにしている。
「ゴメンな、アミィちゃん。キッカさんこんな性格だから、許してくれよな」
「はぁ……」
アミィはうなだれたまま、しょんぼりしている。しかし、どうフォローしたらいいもんだから解らないから困ったもんだ。
しばらくしてアミィが立ち直り、また俺に小声で話しかける。
「でも、キッカさんって、おきれいな方ですよね」
確かに、キッカさんはとても整った容姿をしている。切れ目のルビー色の瞳は、誰もを釘付けにする魅力がある。サラサラとした黒髪は、まるで漆黒の暗幕のようだ。
これが昌也が理想とする女性像と言うことなんだろうか。言葉の端々に棘を感じるのは、恐らく昌也の好みなんだろうが。
わざわざこんな辛辣な態度を好むとは、ドMの思考は俺には理解しがたい。
「確かに、綺麗だよな」
俺はボソッとアミィに答えた。キッカさんの反応は、相変わらず無い。
しばらくすると、目的地到着のアナウンスが流れた。俺達は電車から降り、高月博士の研究所へと向かった。
………
俺達は高月博士の研究所の応接室に通され、昌也とキッカさんが挨拶を済ませ、そのままキッカさんは前にアミィが連れていかれたのと同じように応接室を出ていった。
俺達三人は並んでソファーに座って、出されたコーヒーを飲みながら二人が戻ってくるのを待った。
やっぱり昌也は気が気じゃないみたいで、しきりに時計を気にしていた。
「お待たせ、キッカさんの検査、終わったよ」
しばらくすると、高月博士とキッカさんが応接室に戻ってきた。高月博士はあくまで冷静、態度からは結果はまだ解らない。
「結論から言おう」
俺達は、固唾を飲んで高月博士の言葉を待った。時間にしてみればほんの数秒でも、俺にはもっと長く感じられた。
「確かに、キッカさんはウイルスに感染している」
高月博士の言葉を聞き、昌也がうなだれた。ある程度は覚悟していたんだろうけど、実際に聞くとやっぱりショックだよな。
「そうか……やっぱりそうなのか……」
そんな昌也を見て、高月博士は穏やかな口調で続けた。
「まぁそんなにガッカリしないでくれたまえ。ウイルスに感染しているといっても現状は特に問題ないのだから」
「問題ないっていうのはどういう事ですか?」
俺は高月博士に尋ねる。すると、高月博士は俺達にも解るように、簡潔に説明してくれた。
「現在、キッカさんはウイルスに感染しているが、キッカさんには抗体があるんだよ。だからウイルスによる攻撃性が抑制されているということなのさ。最も、症状が出ていないだけだからウイルスを不活性化させる必要はあるのだがね。そこはもう済ませたから安心していいよ」
「え~っと、つまり……」
昌也が首を捻りながら混乱している。昌也はあまり頭がよくないから仕方ないか。
「今まで通り生活しても、全く問題無いという事だよ」
「そうですか……よかったぁ~!」
昌也はソファーにへたり込んだ。昌也の体がズブズブとソファーに沈んでいく。
「すみません、ちょっと気になったのですが」
俺は、続けて高月博士に尋ねた。
「抗体ってどういうことですか? キッカさんは何か特殊な状況ということなんですかね?」
高月博士は、少し難しそうな顔で俺の質問に答えた。
「それを説明するのには、ちょっと時間をもらうが問題無いかな?」
俺達はそれぞれ答えた。
「問題ありません、お願いします」
「俺も気になるな、頼むよ、高月博士」
「私も聞きたいです! お願いします!」
「ご主人がそうおっしゃるのであれば……」
高月博士は俺達の反応を確認し、改めて口を開いた。
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