調理中です!
ハンバーグ警察の方々はご遠慮くださいませ(´・ω・)
俺はキッカさんとジュリさんが調理する様子を、紫崎やアミィの邪魔にならない程度に遠巻きに眺める。
まず始めに、玉ねぎをみじん切りにする行程だ。ここは両者変わらない……と思いきや、早速二人の実力差が垣間見えた。
「さて、まずは玉ねぎのみじん切りだな。そらよっと!」
ジュリさんは普通にまな板の上で玉ねぎを半分にし、その両方をみじん切りにしていく。
その手捌きは普段のおおざっぱな振る舞いと違い、基本に忠実でしっかりとした手際だった。
「フッ!」
対してキッカさんは、玉ねぎを宙に放ったかと思うと、尋常じゃない手捌きで空中でみじん切りにしてしまった。
そして、まな板に着地した玉ねぎはその衝撃できれいにバラバラになってしまった。これはさすがに参考にならないようで、紫崎もアミィも目を丸くしている。
「これは素直にジュリさんの真似をした方が良さそうだな……」
「キッカさん、スゴいです! でも、私には絶対真似できませんね……」
いや、しなくていいぞ、アミィ。これはそんじょそこらの調理用のアンドロイドでも無理な芸当だからな。アミィが同じことをしたら玉ねぎがどこかに飛んでいってしまいそうだ。
そして、二人は切った玉ねぎの半分をフライパンで炒めていく。これは二人とも全く同じように作業をし、10分程で飴色の玉ねぎが完成した。
さて、次の行程はひき肉に材料を入れて、こねていく行程だ。ここでも二人の作業には大きな差が出た。
ジュリさんは冷蔵庫から取り出したひき肉をボウルに移し、そこに卵、パン粉、さっき炒めた玉ねぎ、生のままの玉ねぎ、塩コショウ、ナツメグ等の香辛料を目分量で投入。そのまま肉だねを力強くこね始めた。
「坊っちゃん、よ~く見てな! ここがハンバーグを作る上で一番大事な行程だ。とにかく力一杯こねるっ! これがまたキツいんだ!」
そんなジュリさんを、紫崎もアミィも食い入るように見つめる。確かに、それくらいは俺も聞いたことあるかな。
肉だねをこねるジュリさんの表情は真剣そのものだ。こんな顔のジュリさんも新鮮だな。
対して、キッカさんはひき肉をボウルに移す前に、ボウルをさっき進君に頼んで用意した大きめのボウルに入れ、その周りに氷を敷き詰め始めた。
更に、ボウルが冷える間に黙々と香辛料を電子秤で計量をし、それらをひとつの小皿にまとめた。さすがキッカさん、こんなところにも几帳面さが出ているな。
そして、キッカさんはなにやらすり鉢で何かを砕いているみたいだ。これがキッカさんの秘策の第一段みたいだぞ。すり鉢の中では何か白い粉状のものがすりあがっている。
ジュリさんに遅れること15分程でキッカさんも肉だねをこねる行程に移った。
肉だねの中身はジュリさんとほぼ変わらないけど、違うのはパン粉の変わりにさっきすり鉢ですっていたものと、何か香ばしい香りの木の実のようなものが投入されていた。
「キッカさん、今入れたものは何ですか?」
紫崎の質問に、キッカさんは作業の手を止め丁寧に答えた。
「今入れたのは『麩』です。パン粉の代わりに私のやり方では麩を使います。こちらのほうが保水力が段違いです。それと、歯応えを出すために私は『皮を剥いたくるみ』を砕いて混ぜます。ハンバーグという料理は歯応えに難がある料理ですので」
「なるほど……色んな工夫のやり方があるんですね……」
そして、キッカさんも肉だねを懸命にこね始めた。氷に包まれたボウルの中で肉だねがリズムよく踊る。
そんななか、肉だねをこね終えたジュリさんはハンバーグの成形にかかった。肉だねを適量取り、中心にチーズの塊を埋め込み、手のひらサイズの俵型にまとめでいく。
「ここで気を付けるのは、肉だねからしっかり空気を抜くことだな。こうやって両手を行き来させて空気を抜くんだ。これをやらねぇと焼いたときに型崩れしちまうからな」
「あ、それなら僕も聞いたことあります。でも、聞くのとやるのはやっぱり違いますね……」
そう言って、紫崎はリズミカルに肉だねをお手玉のように放るジュリさんを見ながらカリカリとメモを取る。
その隣では、アミィも同じようにメモを取っている。なかなかどうして、講習会らしい光景だ。
そして、肉だねを成形し終え、しばらく冷蔵庫で肉だねを休ませ、ジュリさんは最終工程へと入っていく。フライパンでハンバーグの表面を焼き固め、そのまま台所の壁に取り付けられた器具へと持っていき、フライパンを器具に設置し、フライパンの取っ手をはずした。
「こいつは『スチームコンベクションオーブン』っていってな。進ん家のやつはボタンひとつで最適の焼き加減にしてくれる優れもんなんだ!」
ジュリさんは今言った通り、オーブンの扉を閉めるとボタンを押した。すると、オーブンのパネルに焼き時間がパッと表示された。なるほど、こいつは便利だな。
「さぁ~て、あとは焼き上がりを待つだけだな! どれ、どうせ暇だし、キッカの様子でも見に行ってみるか!」
そうだった、ジュリさんの作業ばかり見ていて、キッカさんの作業を見ていなかった。俺達はオーブンの前から離れ、キッカさんが作業をしている調理台へと向かった。
すると、俺達の目の前には思ってもいなかった光景が広がっていた。それはキッカさんが今回の料理勝負にどれだけの熱量を注いでいるかを垣間見ることができるものだった。
そこには、ジュリさんが工程を踏んでいる間も一心不乱に肉だねをこね続けているキッカさんの姿があった。
それは、見ているこっちまで熱がこもってしまいそうな、ある種の狂気じみた気合いを感じる姿だった。
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