作戦会議パートツーです!
昌也と呑んだ週の日曜日、俺達七人は高天崎駅近くのファミレスの長テーブルを陣取って顔を合わせる。
ここまで大人数で集まるのはコンサート以来だからなかなか新鮮だ。
各々が頼んだ飲み物がテーブルに並ぶなか、皆がある一点に集中する。そう、キッカさんとジュリさんだ。
なぜか二人とも窓際の向かいの席に座ってしまった。
正直、このふたりが仲が悪かったということについては考慮していなかった。
しかし、何でこの二人はこんなに馬が合わないのだろうか。それについては俺にはよく解らないな。
キッカさんはというと、昌也の隣で窓の外ばかり見ていて、ジュリさんはへの字に口を結び、目をつぶって腕を組んでいる。
まずはこの空気を何とかしないと話も始められない。俺は二人にやんわりと話しかける。
「あの~ キッカさん、ジュリさん、そんなに顔を合わせるのが嫌なら、今からでも席を変わったら……」
そんな俺の提案は、各々の言い分で却下されてしまう。
「いえ、ここのところ物騒ですので、いち早く外部の状況を窺える窓際に座るのは従者の勤めでございます。お気になさらずに、響様」
「オレは窓際が好きなんだ! 自分から離れる気はないね! まぁ、キッカから頼まれたんなら考えないでもないけどな!」
「ご冗談を。それと、前に私は貴方に呼び方を改めるよう言った記憶があるのですが、私の記憶違いでしょうか?」
「うるせぇ! だぁ~れが変えるかよ! オレはオレの好きなようにやらせてもらうさ。解ったか! キッカ!」
「はいはい、それでよいので少し声のボリュームを落としなさいな、ここは公の場ですよ、全く……」
「この野郎! 元はといえばお前が挑発するから……!」
「まぁまぁ、二人ともその辺で。ほら、進君が怖がってるからさ」
「そうですよ、お二人とも! 進くん、大丈夫だからね、二人ともすぐに仲良くするからね」
昌也の言う通り、ジュリさんの隣に座っている進君がうっすら涙を浮かべてプルプルしている。
そんな進君を心配そうにアミィが頭をなでながら落ち着かせる。
それを見たキッカさんとジュリさんは、さすがに態度を改め、キッカさんは窓から目線を前に戻し、ジュリさんは目を開けて腕をほどいた。
まったく、『泣く子と地頭には勝てぬ』なんていう言葉もあったもんだな。
「それじゃあ皆さん、いいですかね」
キッカさんとジュリさんが落ち着いたタイミングで、アミィの隣に座っている紫崎が話を切り出した。さあ、今日の作戦会議の始まりだ。
「今日はわざわざ僕の為に集まってもらってありがとうございます。それも僕の超個人的な話に付き合ってもらって……」
「まぁ、そんな堅苦しい挨拶は抜きにしようじゃないか、紫崎君。みんなには快く来てもらえたわけだし。それじゃあ、早速だけど、メイドのみんなに話を聞いてみようか!」
こうした流れで、一応みんなとの交渉に当たった俺が司会的な役割をすることになった。さあ、まずはアミィからいってみようか。
「アミィ、アミィは紫崎君がメリーさんに何をプレゼントしたら喜ぶと思う?」
俺は目の前のアミィに問いかける。すると、俺の質問にアミィは唇に指を当て、目を上に向けながら少しの間考えてから答えた。
「そうですね……私はつい最近ご主人様にプレゼントを戴きましたが、それが何であるかより、誰から送られたものかが重要なのではないかと思います! ですから、紫崎さんが選んだものであれば、何でも喜んでくれると思いますよ!」
なるほど、アミィらしいというか何と言うか。でも、模範的な回答過ぎてちょっと参考にはならないかもしれないな。
「ありがとう、アミィ。それじゃあ次はキッカさん、お願いできるかな?」
俺がキッカさんに話を振ると、キッカさんは目の前の紅茶を一口すすり、カチャリとカップをソーサーの上に戻してから話し始めた。
「紫崎様、そのまえにひとつ宜しいですか?」
「はい、何でしょうか? キッカさん」
紫崎はキッカさんから逆に質問をされて少々面食らっているようだった。そして、キッカさんは紫崎に問いかける。
「まずは貴方自身が今の時点でどうしたいのかをお聞かせ願えますか? まさか、自分では何も考えずに私達を呼びつけたわけではないでしょうから。話はそれからですよ、紫崎様」
さすがキッカさん、手厳しく、それでいて話に筋が通っている。人に意見を求めるならまずは自分の意見を提示する。
呼びつけられた側からしたら至極もっともな話だ。さて、これが出来なければキッカさんは絶対に答えてくれないぞ。
「そうですよね、キッカさんのおっしゃることはごもっともです。しかし、これを話して理解してもらえるかどうか……」
「何だよ紫崎! もったいぶるなよお!」
空気が読めない昌也が斜め向かいの紫崎に早く話すよう発破をかける。
どうやら今紫崎が考えていることはとても言いにくいことなんだろうが、ここは言うしかないぞ、紫崎。
「僕が今何を渡したいか……というか、何がしたいかというとですね……」
紫崎は何だか恥ずかしそうに目を伏せながらモジモジしている。その姿は、いつもの生意気そうな態度とはかけ離れた、まるで子どものような弱々しさを感じた。
「僕はメリーに、『形がないもの』を渡したいと思っているんです……おかしいですよね……こんなの……意味解りませんよね……」
紫崎の言葉に、俺達は一様によく意味が解らずに首をかしげる。そう、この答えを引き出した本人であるキッカさんを除いて。
「紫崎様、もし差し支えがないようであれば、そのお考えに至った理由をお聞かせ願えますか?」
キッカさんは、紫崎の答えに何か感じるところがあったようで、身をわずかに乗り出して紫崎の方をジッと見つめる。
キッカさんの瞳には有無を言わさぬ魔力がある。キッカさんに見つめられた紫崎は、吐き出すようにキッカさんの問いに答え始めた。
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