作戦会議です!
「僕から話せるのはこんなもんです。笑ってくださいよ、先輩」
紫崎は俺から視線を外しながらベンチの上でため息をつく。
しかし、その表情とは裏腹に、声色には何だかスッキリしたようなものを感じた。
「いや、笑うなんてとんでもない、喜んで協力するよ。でも、問題はメリーさんが何を貰ったら喜ぶかなんだよな……」
「そうなんですよ。メリーはあんまり物に頓着しない性格なので、何を渡したら喜ぶか僕にもよく解らないんです。なので先輩にこうして相談したんですけどね」
とはいえ、俺がプレゼントしたのはぬいぐるみと万華鏡。メリーさんに渡して喜ばないことはないんだろうけど、何だかしっくり来ない。
「そうだなぁ……無難にメガネとかどうかな? いつも着けてるからいいと思うんだけど」
「それがですね、あのメガネだけは珍しくメリーも気に入っているんですよね。理由はよく解りませんが」
「そうなんだ。それならメイド服以外の服とかどうかな? ほら、前にメイド服以外の服を持ってないって言ってたからさ」
そうだ、俺もアミィに服を買ってあげたことがあったけど、あれも今思えばプレゼントと言えないこともない。
メリーさんの私服姿を見てみたい気もするし、どうだろうか。
「そうですねぇ。現実問題、メリーがどんな服が好きかよく解りませんし、サイズ的にオーダーメイドになると思うのでなかなか難しいものがあるんじゃないですかね……」
あぁ、メリーさんの体格を考慮するのを忘れてたな。
確かに紫崎の言う通り、普通に売っている服のサイズじゃあメリーさんには合わないだろうから、本人の採寸が必要か。
それに、よしんばサイズが合うにしても、一から作るともなるとかなり時間もかかるだろうから現実的じゃないかな。
困ったな、なかなかいい案が浮かばない。まぁ、こんな話に疎い男二人の考えじゃあこれが限界かな。
「なあ、紫崎君。ちょっといいかな?」
「何です? 響先輩」
「いや、俺達二人で唸っていてもしょうがないから、ここはひとつ知り合いに助言を求めるのはどうかな?」
「知り合いっていったら?」
「そうだな……プレゼントを貰うのと同じ立場のメイドアンドロイドに聞いてみるのが一番いいと思うんだけど、どうかな?」
「知り合いのメイドアンドロイド……それって、前にコンサートに行ったメンバーってことですかね?」
俺達に今できることはそれくらいしかないんじゃないかと思う。アミィにキッカさんにジュリさん、ひとまずはこの三人に当たってみたい。
本当は一番こういったことに詳しそうな夏樹ちゃんとマリンちゃんにも来て欲しいところだけど、さすがに仕事の合間を縫ってこんな用事のために来てもらうのは気が引けるから今回は呼ぶのはよそうかな。
「ああ、アミィにキッカさんにジュリさん。これだけの意見が貰えたらなんとかなるだろ。さすがに夏樹ちゃんとマリンちゃんは難しいだろうけどさ」
「当たり前じゃないですか! こんなしょうもないことをアイドルに相談するなんて畏れ多いですよ! とはいえ、あとの三人にはどう説明したもんですかね……」
アミィについては俺の声ひとつで何の問題もないけど、キッカさんとジュリさんについてはちょっと一筋縄ではいかないかもしれないな。結構デリケートな話だから、あまり下手なことは言えないし。
「そうだなあ、それじゃあここは先輩として一肌脱ごうじゃないか! 俺が三人に話をつけてみるよ。安心しろ、大事な部分は上手くごまかしてお願いしてみるからさ」
「ありがとうございます、先輩! いえ、ぶっちゃけ僕はこんなこと他人に言うのは苦手なので正直助かります」
俺の提案を、紫崎は二つ返事で呑んだ。
さて、まずは昌也からだな。まぁ、昌也はこんな話に首を突っ込むのは好きそうだろうから特に問題はないだろう。問題はキッカさんがこの話に乗ってくれるかだ。
「それじゃあ早速、昌也に俺から頼んでみるよ。まぁ、何だかんだで昌也もキッカさんも面倒見はいいから、安心していいと思うよ」
「はい、お願いします。それじゃあ上手くまとまったら改めて教えてください。期待してますよ! 響先輩!」
「ああ! 任せとけ! 絶対にこの作戦を成功させてやるからな!」
「何のお話しですかぁ~?」
ベンチで向かい合う俺達の耳に、聞きなれたほんわかボイスが聞こえてきた。この話の主役、メリーさんだ。
「うわっ! メリー! いつからそこにいた!?」
「はぁ、たった今来たところですがぁ、何をそんなに慌てているのですかぁ? 坊っちゃん」
メリーさんの登場にやたら慌てる紫崎。さっきまでの話を聞かれていなければいいんだけど。
「メリーさん、もしかして、俺達の話聞いてた?」
「いえ、今来たばかりなので聞いてないですよぉ~ 内緒話ですかぁ~? 何のお話しをされていたのですかぁ~? 聞かせてくださいよぉ~」
「いや! そんなに面白い話じゃないから! それにしても、呼び出しはもう済んだの? メリーさん」
俺の質問にメリーさんはほんの一瞬顔を歪めたけど、すぐに立ち直って俺の質問に答えた。
「はい! 大したお話しではなかったので、思ったより早く済みました! それより、お二人はもう昼食は食べられたのですか?」
何だろう、メリーさんの様子が少しおかしい。
何かをごまかすように、いつもとは違う少し早い口調になっている。それを見た紫崎は、何だか訝しげな表情をする。
しかし、紫崎はそれ以上メリーさんを追及することはなかった。もしかしたら、紫崎はメリーさんの態度から俺には解らない何かを感じ取ったのかもしれないな。
「ああ、そろそろデスクに戻ろうとしていたんだ。来てもらって悪いが、メリーも秘書課に戻れよ」
「はい……解りました。それでは、失礼いたしますねぇ~」
そう言って、メリーさんは元来た道を戻っていった。最後のメリーさんの語尾は、少し落ち込んだように沈んでいた。俺と紫崎は、そんなメリーさんの背中を座ったまま見送った。
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