高月博士です!
「うわぁ~ ご主人様! 見てください! 海がと~ってもきれいですよ!」
次の週の休日、俺とアミィは電車に乗っていた。アミィは窓の外の景色に目を輝かせている。
高天崎市を出てから約一時間、俺とアミィは並んで座席に座る。
窓の外にはアミィが言うように、太陽が照りつけ、キラキラと光る海を望むことが出来る。
空は快晴、空の青と海の青が互いを引き立てあっている。
俺はアミィの今の症状を、何とか出来ないか片っ端から調べてみた。すると、願ってもない機会を得ることが出来た。
何と、MID型メイドアンドロイドの生みの親である高月博士がわざわざ俺達の為に時間をとってくれるらしいのだ。
高月博士は、その道では知らないものがいないほどの権威、噂では少々変人で、なかなかとらえどころのない人らしいけど、どうなんだろうか。
俺のもとに来た高月博士からのメールを要約すると、『その症状、珍しいから是非に見せてくれないか』といった内容だった。
藁にもすがる思いで俺達は博士が住む『千鳴工業地帯』へ向かっている。
大丈夫だからな、アミィ、絶対に何とかなるからな。
「それにしても、メイドアンドロイドの生みの親かぁ……」
つまりはあの変態的な充電スタンドを考えた人間ってことだ。親の顔は見れなかったけど、本人の顔を見れるなら上等だ。
「あ、見えてきましたよ!」
アミィの声に、俺は窓の外に目をやった。すると、車窓からは大規模な工業地帯が望むことが出来た。
この景色、俺の実家の千鳴市の近くだから何度も目にした光景だ。
あの工業地帯の中に高月博士は研究所を構えているらしい。俺達は電車から降り、タクシーに乗り換えて渡された住所へと向かった。
………
「何か、ちっちゃい建物ですね」
「やっぱりアミィもそう思うよな、本当にここであってるのか?」
タクシーから降りた住所は、いわゆる町工場だった。少し傾いた看板には『高月製作所』と書かれている。
その建物の周囲は雑然としていて、とても時代の最先端を行く分野の研究所には見えなかった。
俺は内心ドキドキしながらインターホンを鳴らした。相手は俺からしたら雲の上の存在、どうしても緊張してしまう。
インターホンを押すと、低音のブザーの様な音がした。
何だかんだ時代を感じる音で、カメラもついていない旧式のインターホン、これはなかなかお目にかかれない。
「はいはい」
ガチャリという音と共に、玄関の中から白髪混じりの初老の男が現れた。雑誌や新聞でもよく見る顔だから、この人が高月博士で間違い無さそうだ。
「やぁ、いらっしゃい。響さん、でしたかね?」
「はい、響 恭平といいます。本日は宜しくお願いします」
「まぁ、そんなにかしこまらないで、取り敢えず入って入って」
高月博士は砕けた様子で俺達を迎えた。そして、俺達は工場内の応接室へと通された。
…………
応接室も一般的なオフィスと変わった所はなく、長机の両サイドに黒皮のソファーが据え付けられている。
高そうなコーヒーメーカーからは、豊潤なコーヒーの香りが漂う。
「今日は遠路はるばるご苦労だったね。まぁ、二人共、座りなよ」
「はい、失礼します」
「失礼します」
俺達は、それぞれ会釈して、ソファーに座った。そして、高月博士が淹れたコーヒーがテーブルへと置かれる。
「自己紹介は……いいかな。君達は私のことは知っているだろうし、あまり堅苦しい挨拶は苦手なんだ。それじゃあ早速本題に入ろうか。君は……アミィちゃん、だったかな?」
「はい、私、アミィと申します。今日は宜しくお願い致します」
高月博士はアミィをジロジロ見ながら顎を手でこすっている。
そして、高月博士は何だか感心したような表情で俺の方に向き直る。
「0796型か。比較的旧式ながら、小回りも効くし、何よりチャーミングなこの容姿だ! いいセンスしてるね、君、なかなか見所があるよ!」
「見所……ですか?」
高月博士は少しにやつきながら俺の方を向く。そして、高月博士は身を乗り出して、俺に耳打ちする。
「あの機構は私の自信作だよ、いいだろ? アレ。最近の型番にはあまり見られない機構だ、大事に使ってくれたまえ!」
「は、はぁ……」
充電スタンドのことか。何も言えるかっての。それをわざわざ聞いてくるなんて、何てオッサンだ。
「まぁいいや。それにしても、やっちゃったんだってね、アミィちゃん。大の男を四人ものしてしまうなんて、なかなかやるじゃないか」
「はい、申し訳ございません。やっぱり私、おかしいのですよね……」
アミィはため息混じりで頭を下げて、高月博士に謝った。それを見た高月博士は、明るい口調でアミィを励ます。
「なに、謝らなくてもいいさ。アンドロイドは人が作ったものだ、エラーはどうしたって起きるものだよ。アミィちゃんは何も悪くない」
高月博士は甲高い声でワハハと笑う。その研究者にあるまじき姿には、よくも悪くも威厳がない。
「それに、子供とメイドさんは元気なほどよろしい。これは私の持論だが、結構的を射ていると思うよ。まぁ、そんな与太話は置いておこうか。それじゃあ、早速見せてもらってもいいかね?」
高月博士は雰囲気を改め、俺に聞いてきた。
これでアミィがよくなる、俺はそんな期待を胸に返事をする。
「はい、宜しくお願いします!」
「そんなに時間はかからないだろうから、まぁゆっくりしていてよ。それじゃあ、アミィちゃん、付いておいで」
「はい! それでは、行って参りますね、ご主人様」
「あぁ、行ってらっしゃい、アミィ」
俺は応接室から出ていく二人を見送った。
そして、俺はコーヒーを飲みながら二人が戻ってくるのを待った。
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