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【旧】アミィ  作者: ゴサク
八章 心近づく温泉旅行
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露天風呂です!

 アミィと大浴場の入り口で別れ、脱衣所に辿り着いた俺はモタモタと浴衣を脱ぎながら深呼吸を繰り返していた。

 これまでの人生初めての感覚、俺はかつて無いほど緊張していた。


 そもそも俺は学生時代の身体測定やプールでの女子の着替えにもドキドキしていたような男だ。

 こんな状況今の今まで無かったもんだから、どうしても鼓動が押さえられない。


 さて、タオルも巻いたし、準備は万端だ、俺は満を持して露天風呂へと向かう。

 完全に貸し切り状態の露天風呂、足が何だか小刻みに震えているのが解る。滑って転ばないように注意しなきゃいけないな。


 …………


 さて、軽く体を流した俺は湯船へと体を沈めてアミィを待つ。アミィから誘う形になったとはいえ、やっぱり恥ずかしいのか、なかなかアミィが露天風呂に入ってくる様子はない。


 そんなことを考えていると、湯気の向こうに小さな人影が見えてきた。その人影はゆっくりとこちらに近づいてくる。そして、俺の目の前に待望の光景が広がった。


「お待たせして申し訳ありませんでした、ご主人様。先に入っておられたのですね」


 目の前にはタオルを胸元で止め、顔を赤らめながら上目遣いで俺を見るアミィが立っていた。

 タオルとの境目がよく解らないほど真っ白なアミィの肌に、玉のような汗が浮かんでいる。


 そして、普段は晒されない手足の関節部の継ぎ目が、アミィがアンドロイドであるということを改めて感じさせる。

 まぁ、そんなことは小さなことだ、そんなことを考えながら俺はアミィの滑らかな肢体に見入ってしまう。


「あのぅ……ご主人様、ちょっと恥ずかしいので、少しの間後ろを向いていてくれませんか?」


「どうした、アミィ。そのまま入ってくればいいじゃないか。何が恥ずかしいんだい?」


「いえ、温泉に入るときは、タオルを取るのがマナーなのですよね? 旅行の前にパソコンで調べたらそう書いてあったので……」


 確かにそうなんだけど、俺だって恥ずかしいからタオルは付けっぱなしだ。でも、アミィはもうタオルに手をかけ始めている。俺は慌てて後ろを向いた。


 俺もアミィに倣い、腰に巻いたタオルを外し、絞って頭に乗せる。そして、しばらくすると背後からチャプンという音がして、俺の近くにアミィの気配を感じた。


「お待たせしました。もうこちらを向いてもらっても大丈夫ですよ、ご主人様」


 そのアミィの声に俺が振り向くと、アミィがニコニコと笑顔を浮かべながら思いの外近くまで来ていた。

 俺は少しビックリして、アミィからわずかに距離を取る。


「うわっ! 近いっ! 近いよアミィ!」


「いいじゃないですか、ご主人様。お湯も濁っていますし、恥ずかしがることもないじゃないですか」


 何だか今日のアミィは妙に積極的だな。そんなに俺達の関係が進展したことが嬉しいんだろうか。

 まぁ、正直俺だってアミィの側にいられるのは嬉しいんだ、ここはアミィの言う通りイチャつこうじゃないか。


「そうだよな、アミィ。それじゃあ、こっちにおいで」


「はい! ご主人様!」


 こうして、俺とアミィは温泉から見える夕日と紅葉のコントラストを並んで存分に楽しんだ。

 俺の右肩にはアミィの左肩が密着している。この広い湯船にこぢんまりと肩を寄せ合う俺達は、何と贅沢な時間を過ごしていることだろうか。


 時間の密度がとても高く感じる。こんなにも満たされる気分は今まで味わったことがない。

 俺がふとアミィの方を見ると、それと同時にアミィもこちらの方を見る。


 以心伝心、俺達は間違いなく心が通い合っている。アミィはアンドロイドだけど、それは間違いないことだ。そんな小さな幸せを噛み締めながら、俺達はゆったりとした時を過ごした。


「ご主人様」


「何だい、アミィ」


「いえ、昨日はひとりで眺めた景色が、何だか全く別のものに感じて、少し驚いてしまって……好きな相手と一緒にいると、こんなに世界が違って見えるものなのですね、ご主人様」


「ああ、俺も全く同じことを考えていたんだ……凄いよな、俺達。こんなに幸せな時間、これまで生きてきたなかで過ごしたことないよ、本当に」


「改めてになりますが、これからもお側にいさせてくださいね、ご主人様」


「ああ、俺の方こそ宜しくな、アミィ」


 …………


 俺達が湯船に浸かってから、どれだけの時間が経っただろうか。俺とアミィが飽きずに肩を寄せ合いながら景色を眺めていると、何やら浴場の入り口から声がしてきた。


「失礼します、響さん、アミィちゃん。入ってきても宜しいでしょうか」


 この声はカグラさんだな、何だろうか。俺は湯船に浸かったまま少し声を張って返事をした。


「は~い、大丈夫ですよ~! 何かありましたか~!」


 俺の返事を聞いたカグラさんが、手に小さな深めのお盆を持って俺達の傍までやってきた。そして、カグラさんはそのお盆を湯船の近くにカチャリと置いた。


「差し出がましいようですが、景色を眺めながらお酒などと思いまして、冷酒をお持ちしました。響さんはお酒は飲まれますでしょうか?」


 これは嬉しいサービスだ。俺はあんまり普段は酒は飲まないけど、たまに飲むくらいなら嫌いじゃない。ここはありがたく戴こう。


「ありがとうございます、カグラさん。ちょうど体が火照ってきたので、いただきます」


「それはよろしゅうございました。それでは、私はこれで失礼致します。引き続き、ごゆっくりとお楽しみくださいませ」


 そう言って、カグラさんは浴場の外へと歩いていった。俺はカグラさんが出ていったのを確認し、お盆を回収し、湯船へ浮かべた。


「さて、それじゃあ戴くとしようか」


「それでは、私がお酌をしますね! ご主人様!」


「ありがとう、アミィ。あ、でも、こぼさないようにね」


「は、はい! 気を付けます!」


 アミィのいつもの調子なら、ここで多少こぼすのは目に見えてるけど、せっかくだからここはお酌をしてもらおう。こんなシチュエーション、滅多にないだろうからな。


 それから俺はアミィのお酌でひんやりと冷えた酒を楽しんだ。やっぱりアミィは少しバランスを崩してお盆の上に酒をこぼしたけど、それはご愛嬌ってもんだ。


 こうして俺達は念願のふたりでの露天風呂を楽しんだ。

 そして、しばらくして俺は体を洗うべく、お湯のなかでタオルを素早く巻き直して湯船から出た。

ここまで読んで頂き有り難うございます!

もし気に入って頂けたら、感想、評価、ブックマーク等宜しくお願い致します!

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