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【旧】アミィ  作者: ゴサク
八章 心近づく温泉旅行
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カグラさんの推察

 カグラさんが窓から俺達の方に向き直り、薄く笑みを浮かべる。その表情は、何だか申し訳なさそうでも、安心したようでもあった。


「お客様にこのような話をしてしまいまして申し訳ありません。やはり、お話するべきではありませんでしたかね」


「いえ! 俺から話すようお願いしたようなもんですし、むしろ変な質問をしてすみませんでした」


「カグラさんは何も悪くありませんよ! 私、そんな事情があるなんて知らずに……」


 慌てて弁解する俺とアミィを見ながら、カグラさんは柔和な笑みを浮かべる。まるで親が子を見るような、とても安心する笑みだ。


「そうですか、それならよろしゅうございました。ですが、響さん、アミィちゃん、(わたくし)はお二人だからこそ、このような話をしたのだということを解っていただけますか?」


「それって、どういう……」


 カグラさんは俺の顔を見て、改めてニコリと微笑む。


「お二人も、板長と私と同じように、人とアンドロイドとで何かしら特別な関係をお持ちだと思い、このようなお話をしました。そうなのでしょう? 響さん、アミィちゃん」


「!!」


「ふえっ!?」


 どういうことだ? 俺もアミィもカグラさんには俺達の関係を匂わせることは一切言っていないはすだけど、何で解ったんだ?


「どうしてそれを!?」


 しまった、俺はつい、とても解りやすい返事をしてしまった。これじゃあ隠すも何もあったもんじゃない、またやってしまったな。


「まずは、響さんとアミィちゃんの二人きりで当旅館にいらっしゃったことですね。ご年配の方の付き添いでアンドロイドを連れるならともかく、響さんはとてもその様には見えません」


 確かに、よくよく考えたら人とアンドロイド二人きりで一緒に旅行ってのは特殊だよな。

 本当に、もう俺はアミィのことをアンドロイドとして見ることを放棄している節がある。


「ですが、それだけではありませんよ? 決定的だったのは、響さんがアミィちゃんの代わりに荷物を運ぶのを見たときです。普通、従者の荷物を運ぶ主人はおりませんよ? 響さん」


 そう言って、カグラさんは口に手を当てながらクスクスと笑う。さすがは客商売だ、見るところを見ているな。

 どうやら、俺達の関係についてはほぼバレていると見ていいだろう。


「はい、カグラさんの思っている通りです。俺とアミィは愛し合っているんです。アミィ、カグラさんには俺達が愛し合っていること、話していいよ」


 俺がアミィに語りかけると、アミィは弾かれたように答える。俺からのお互いが愛し合っていることを話していいとの許しに、アミィは心底嬉しそうだ。


「はい! 私、ご主人様のことを愛してるんです! 優しくて、いつも気遣ってくれて、最高のご主人様なんですよ!」


 やっぱり、アミィは俺との関係を隠すことをあまり快く思っていないみたいだな。そんなアミィを見ながら、カグラさんは何だか意外そうな顔で俺達を見る。


「『愛し合う』ですか……」


 カグラさんはしばらくそのまま目をパチパチさせながら俺とアミィを交互に見る。そして、カグラさんはハッとして、少し動揺しながら正座した足を組み直す。


「いえ、何でもございません、大変失礼致しました。そうなのですね、それは素敵でございます。そのようなことを仰る方々は初めてだったもので、つい物珍しい目で見てしまいました」


 カグラさんは俺達から目をそらして、少し早口で俺達に弁解をする。カグラさんは何にそんなに動揺しているのか、俺にはちょっと解らなかった。


「そ、それでは、食事もお済みのようですので、後片付けをさせていただきますね。少々お待ちくださいな」


 そう言って、カグラさんは慌ただしく食器をお盆に乗せ、部屋と調理場を行き来し始めた。その足取りは、時々何だか危なっかしく、(ふすま)の段差で何度か足を引っ掻けていた。


 …………


 カグラさんが食器を下げ終わって、そろそろ夜も更けてきた。俺とアミィは今日一日を振り返りながら、窓際で景色を眺めながら、竹で編まれた背もたれ付の椅子に座ってくつろぐ。


「今日は本当に楽しかったな、アミィ」


「はい! 明日が待ち遠しくって、何だか目が冴えてしまいますよ!」


 俺達が話に花を咲かせていると、部屋の入り口で壁をノックする音が聞こえてきた。俺は椅子から立ち上がり、襖を開ける。

 すると、カグラさんが目の前で微笑みながら立っていた。その(たたず)まいは、もう落ち着きを取り戻していた。


「夜分失礼致します。お布団の準備に参りました。今、宜しいですか?」


「いや! 布団くらい自分で敷きますから! お構い無く!」


「そう仰らないでくださいな。一日の終わりまでお客様のお世話をするのが私の仕事でございますから」


 そう言って、カグラさんはテキパキと布団の準備を始めた。敷いた布団はもちろん一枚、当たり前なんだけど何だか妙な意識をしてしまう。


「はい、終わりました。それでは今日はもうお休みですか?」


「そうですね、明日もありますし、そろそろ寝ようかと思います」


 カグラさんは俺の答えを確認して、更に話を続ける。


「解りました。それと、響さん、明日のご予定はお決まりですか?」


「取り敢えず、温泉街の外れの丘にでも行ってみようかと思っています」


 俺の答えに、カグラさんは手を叩きながらニコリと微笑む。


「左様でございますか。それでは、お昼の折り詰めの準備を致しますので、お持ちになってくださいな。丘の上の展望台で景色を望みながら食べるのがお勧めでございますよ」


「そこまでしてもらうのは……いや、やっぱりお願いします」


 ここで遠慮するのも何かが違う気がして、俺はカグラさんに弁当の準備をお願いした。そして、カグラさんが部屋から離れたのを確認してからアミィのもとへと戻った。


「さて、明日もあることだし、そろそろ寝ようか、アミィ」


 アミィは何だかボーッとしながら、外の景色を眺めている。そして、一呼吸おいてからアミィは俺の方を向いて、少し慌てながら返事をした。


「あ、私はもう少し景色を眺めてから休みますので、ご主人様は先に休まれてください! 電気も消してもらって大丈夫なので!」


「そうかい? それじゃあ、俺は先に休むよ。お休み、アミィ」


「お休みなさいませ、ご主人様!」


 俺はアミィのわずかに不自然な態度に疑念を抱きながら、充電スタンドを電源に挿し、電気を消して、布団に潜り込んだ。

 そして、俺は一日の疲れのせいか布団に入ってからものの数分で眠りに落ちた。

ここまで読んで頂き有り難うございます!

もし気に入って頂けたら、感想、評価、ブックマーク等宜しくお願い致します!

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