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ジャハト村

話しの進みが少し遅めかも……

取り合えず投稿します。

 イスルギ・ハヤトは、大樹海を墜落現場から足早に離れ、

少女を担いで『ジャハト村』に向かっていた。


俺は、何故、村の駐在兵が、墜落現場の煙を見逃したのか、途中現場を振り返り考えたが、

ジャハト村から飛空艇の墜落現場までは、10kmほどの距離があり、

今日は曇り空で霧が発生していた為に煙に気がつかなかったのだろうと、考えた。

事実、もう煙は、この村の入り口付近では確認出来なかった。


樹海の木々を抜けると、開拓途中の畑地帯を抜ける。

林の方には何人か木を切り出している様子が窺えた。

「カァーン…カァァーン…」と斧が木を伐りつける音が聞こえる。


その開拓現場を抜けて暫くすると木の壁が見えてくる。

壁は5m程の高さがあり、村に魔物が入ってこれないように、村の周りを囲っているのだ。

そして、その壁の南北には門が構えている。

北側の門が樹海側、南側の門が首都シルベスタへと繋がる街道に接していた。


俺が北門に近づくと、北門を警備していた顔見知りの駐在兵の『佐々木 亮次ササキ・リョウジ』が声を掛けてきた。

亮次は、この開拓村から程近い、「チツバ町」出身の新兵で俺とあまり歳が変わらない中肉中背の兵士だ。


「おう!ハヤト!

随分早く戻ってきたな?

その肩のデッカイ荷物を見ると、

何か獲物でも捕まえたのか?」


「リョウジ!

そんなんじゃないぞ!

それより大樹海で大変な物を見つけた!」


「大変なもんだって?」


「オーランド帝国の飛空艇の残骸と、『巨人騎士(Giant Knight)』だ」


亮次は、俺の答えに驚きの声を上げて、詰め寄ってくる。


「おい!それは本当か!

間違いないのか?!」


リョウジは俺の担いでいない方の肩を掴んで俺に詰め寄ってきた。


さすがに共和国の兵士ということだろう。

敵国の船と兵器が国境を越えてきている事に危機感を抱いているようだ。


俺は真面目な顔になって、首肯してから話を続ける。

「ああ、本当だ。

船体にオーランド帝国の紋章があった。

後、残骸の中に巨大な人型が横たわっていた。

あれは『巨人騎士(Giant Knight)』で間違いないと思う」


「そ……そりゃヤバイ!

オーランド帝国の飛空艇だけでもヤバイのに、

『巨人騎士(Giant Knight)』まで持ちこんでくるなんて……」


「ああ、だから亮次、この事を早く、駐在部隊の隊長に伝えてくれ!

場所は、ここから、10kmほど北西に行った樹海の中だ。

案内が必要なら、呼んでくれ。

俺は取り合えずこの娘を家の治療院に運ぶ」


そう言って、俺は顎で肩に担いでいた少女を指す。


リョウジはそこで、俺が担いでいるのが一人の少女だとやっと気づいた。

まあ、コートで簀巻きにして、髪で顔が隠れていたので、人だとは思わなかったようだ。


「おい、おい、どうしたんだその娘!」


「ああ、今言った、飛空艇の墜落現場の近くで見つけた」


「って!!

お前そりゃ、オーランド帝国の兵士か?!」


「いや……違うと思うぞ。

この娘は墜落現場から少し離れた場所に棺に入って眠っていた。

着ているものも入院患者が着ているような物で、武器なども持っていなかったら……

なんらかの理由で、飛空艇で運ばれていたんだと思う……

まあ、意識が戻ってから事情を聞いて見ないとわからんが……」


「そうか……それにしても偉く綺麗な娘だな。

作り物みたいに整った顔立ちだ……」


そういって、リョウジは少女の顔を覗き込む。

のんびりと少女を観察するリョウジに俺はわざとらしく「ゴホン」と咳払いした。


「おい……

急がなくて良いのか?」


リョウジはハッとした顔にバツが悪そうに頭をかく。


「いや~この辺じゃ見ない美少女なんで、見とれちまった。

おっと!

こんな事してる場合じゃないな!

ちょっと、詰所まで行ってくる!

後でお前の所に詳細を聞きにいくと思うから、ふらふら出歩くなよ!?」


「ああ……了解だ。

じゃまたな!」


「おう!」


リョウジは、俺に片手を上げて返事をして、門内の駐屯部隊の詰所へと走り出した。

俺はそれを見送り、自分の家の治療院に向かうのだった。


◇◇◇◇◇


 家の治療院は、村の大通りに面したほぼ村の中心部にあった。

誰でもわかり易く患者を運び込めるようにとの配慮からそうしているらしい。


俺は、正面の扉を開いて、院内に声を掛ける。


「じっちゃん!

患者だ!診てくれ!」


俺が大声を上げて治療院の奥に呼びかけると、のそのそと白髪の頭の後を掻きながら、初老の老人が歩いてきた。


「大声だすんじゃねえ!ハヤト!

まだ、耳は遠くなっとりゃせんぞ!?」


普段着にサンダルを履き、白衣を引っ掛けた俺の祖父、

石動早雲イスルギ・ソウウンが大声で言い返した。


「まあ、そうだろうけどさ。

急患なんだ」


俺は、そう言いながら、肩に担いでいた少女を寝台に下ろし、

包んでいたコートを剥し、仰向けに寝かせる。


その様子を見ながら祖父は少女を一瞥してから俺に問いただした。


「この娘……ここいら辺の者ではないな?

どこから拾ってきた?

まあ、それはさて置き……ハヤト、御主、ちゃんと自分でも診察したんじゃろうな?」


「ああ、確認したよ。

体には異常無いようだ。

外傷も無い。

ただ……意識だけ戻らないんだ」


「【エコー】の魔法で状態は確認したんじゃろうな?」


「う……それは……ちょっと、急いでてまだ……」


「馬鹿者!触診だけで無く、魔法も使って多角的に症状を良く見ろと、

何時も言っておるじゃろうが!」


【エコー】は振動魔法の一種で、人体の中に超音波を流し検査する魔法だ。

超音波の反響で遺物や状態がおかしい箇所を特定できる。

まあ、この魔法も石動流独特のもので、他の魔法医は使わないし、魔法事態知らないだろうが……


祖父は、俺に注意した後、

真剣な目をして少女に右手を翳し、

【エコー】を発動させ、診断して行った。


「ふむ……」


祖父はそう呟くと顎に手を当てて少し考え込む。


「どうしたんだ?

じっちゃん、何処か悪い所でもあったのか?」


「うむ……異常は無い様だが……

ちょっと気になってな……

ハヤト、このお嬢さんは何処から来たんだ?」


「この娘は、大樹海に墜落していたオーランド帝国の飛空艇の近くに落ちていた、棺のような物の中に居たんだ。」


「何?!こんな辺境にーランド帝国の飛空艇だと!」


「ああ、何だかもの凄くきな臭さを感じるけどな……

それと!驚く事に『巨人騎士(Giant Knight)』まで其処にあったんだ!

あれは、何かの軍事行動中に墜落したんじゃないかな?

後、あの『巨人騎士(Giant Knight)』……何だか以前、

首都で見た巨人騎士と違って妙に人間ぽいフォルムだったんだよなー」


それを聞いて祖父は肩眉を上げて、こちらを睨んだ。


「ハヤト……その『巨人騎士(Giant Knight)』の事、もう少し詳しく話せ。

他に何か気になるような特徴は無かったか?

例えば、何か紋章やレリーフみないなものは見なかったか?」


「紋章ね……?

飛空艇の残骸には帝国の紋章はあったけど、そういえば『巨人騎士(Giant Knight)』には、一見したところ無かったかな?

仰向けで倒れてて、横からしか見る暇が無かったけど……

真っ黒い機体で黒曜石のように磨きこまれた外装だったな。

後、機体じゃないけど、その娘が入っていた棺には”塔に落雷が落ちている”レリーフが刻ませていたけど?」


「何じゃと!

”塔に落雷が落ちているレリーフ”だと!

間違いないないか?!」


俺は祖父が叫びながら詰め寄るので、怯んで思わず後ずさる。


「あ……ああ、間違いないよ」


祖父は俺の返事を聞き、顎に手を当てて考え込む。


「……いや、まさか……そんなはずは……しかしこの娘を見る限り……」

などと、ぶつぶつと呟く。


「じっちゃん、そのレリーフがどうかしたのか?」


「……いや……、わしの勘違いじゃろう……

まあ、この娘は今少し、この間々、安静にして様子を見るかのう」


そんな会話をしていると、治療院に一人の青年が駆け込んできた。


「ハヤト!ハヤトは居るか?!」

門の入り口でハヤトと分かれた佐々木亮次ササキ・リョウジが駆け込んできたのだ。


「リョウジか?

どうした」


「隊長が調査隊を組むから墜落現場まで案内しろって!

隊長や俺も混ぜて6名の小隊で調査するから、お前も案内役で同行しろってよ!」


「ああ、解った。

じっちゃん!ちょっと、墜落現場まで、駐在兵の人達を案内してくるから、

その娘の事頼むよ!」


「ああ、わかった、わかった、後は任せろ。

行って来い行って来い」


祖父は俺達を追い払うように手をひらひらさせる。


祖父はあれでも腕の良い魔法医なので、

俺は祖父の態度に苦笑しながらも、リョウジと共に駐在兵の詰所へと向かうのだった。


◇◇◇◇◇


 ハヤトとリョウジがけたたましく駆け出した後、

イスルギ・ソウウンは、運ばれて来た少女を今一度確認した。


着ているものは首都の病院などで使用されているような入院用の貫頭衣。

顔や髪や肌はここいら辺(ガイナス大陸東部)ではあまり見かけない、

薄い金髪に白い肌、明らかに大陸西部に多い人種に見えるが、

それにもまして、顔の造型が整い過ぎていて、人間味に欠けた印象を与えていた。


なにより、気になったというか……

違和感を抱いたのが……


儂は、徐に貫頭衣を捲る。

白い裸体に簡素な白いショーツが目に入るが、どう見てもまだ発展途上の少女の体だ。

そして儂は、胸部の慎ましい双方の中間部分(胸部の中央)に目を見張る。


ハヤトは服を捲って確認していなかったから気がつかなかったようだが、

其処には宝石のような”円形の黄色い石”がはめ込まれたように、収まっていたのだ。


『……この石……亜人であっても胸の中心にこんなものがあるのは見たことが無い……

【エコー】を使った診断も、体の内臓部分がはっきりとは確認出来なかった……

この娘は……やはり人ではない……のか?

”あやつ”が連れていた”あれ”にもこれとは色違いのものが付いていた……だとすれば……』


儂は、治療院の窓から見える大樹海の方向を見た。


「この娘が”あれ”と同類だとすれば……ハヤトが見たという『巨人騎士(Giant Knight)』は、『アルカナ・ナイト』かも知れぬ……

そうすれば、この共和国も帝国も黙ってはいまい……

さて、儂に何が出来るか……」


儂は、一人、今後の方針を考え始めるのだった。


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