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対決2(暗殺部隊)

リカルドは、自分の所属する『ケルベロス』の部隊長の機体が氷塊から飛び出した、黒いギガント・ナイトに一瞬で両断されるのを呆気に取られながら、見ていた。


敵にギガント・ナイトが居なかったのは確認した上でサンド・ワーム20匹で攻め、後詰として、ギガント・ナイト3機による魔砲アイス・エイジによる包囲攻撃を仕掛けたというのに……


 俺は慌てて、通信機で、隊長の『ファイゼル』に呼びかける。

「隊長!ファイゼル隊長!!」


だが、隊長からの応答が無い。

そして、オープン回線から、もう一人の仲間、『アリシア』から警告の通信が入った。


「バカ!リカルド、前を見な!敵が迫ってるんだ。

距離を詰めさせるんじゃないよ!隊長の二の舞になるよ!盾なんか役に立たないんだ早く捨てて、魔砲と剣で対処するんだよ!」


そんな声と共に、『アリシア』機が横に並び立つ。

どうやら敵機が隊長機に向かった時に、こちらに合流するべく、移動していたらしい。

敵の速度に包囲出来ないと見て、共同で対処しようと判断した結果だろう。

素早い状況判断と言えた。


俺達、二人はギガント・ナイトの盾を投げ捨て、左手に魔砲、右手に剣を構えた。


◇◇◇◇◇


 ハヤトが『ザ・タワー』を残りの二機に向けた時、

敵は既に合流しようとしていた。

折角、近場の敵機から各個撃破して行こうと思ったのだが、そう簡単には行かせてくれないらしい。

折角なので、ギガント・ナイトの多数相手の近接戦闘を試させてもらおう。

『ザ・タワー』は基本的に大型火力による遠隔攻撃型の機体で、

フル装備時には外部ユニットを換装する事で、動く要塞となる事が解っている。

だが、そのコンセプトは、逆に懐に潜り込まれた場合の近接戦闘に弱いという事を刺している。

初代『ザ・タワー』の外部ユニットは脱着式では無く一体型となっていた為、それを突かれて、近接戦闘型の『アルカナ・ナイト』の複数機による攻撃で破壊された。


二代目となる本機は、それを踏まえて、装備は全て脱着式となっている。

今現在の状態はほぼ丸腰に近い、素体状態と言えた。


俺はこの状態で何処までの性能があるか試して見たかった。

俺自身の戦い方は、魔法やガンソードのガンモードを使う時はあるが基本は、祖父に学んだ石動流魔古武術による近接戦闘だ。

『アルカナ・ナイト』でどの程度、それが再現できるものなのか、試して見たかった。

因みに先ほどの抜刀術以外の足運びや体捌きは、石動流魔古武術の『地走り』と言う走法だ。

緩急を付けた特殊な走法で、挙動を錯覚させ、狙いをつけづらくさせる効果がある。


そのお陰で、先ほども敵の魔砲を難なくかわせていた。

石動流魔古武術が、『ギガント・ナイト』同士での戦闘にも効果がある証拠だ。


まあ、障壁を展開していれば、『ギガント・ナイト』の魔砲や打撃など無効化できるのだが、慢心は良くない。

調子に乗ってミスをやらかす事が多い俺としては、この際、試して置いて損は無いと思う。


 俺は二機同時に相手取らないように向かって右の当初の目標としていた機体に向けて右に回りこむ。

合流した右の機体が俺を追いかけてこようとするが、もう遅い。

俺は二機のギガント・ナイトの魔砲の攻撃をかわし、右の機体に肉迫した。

敵機は苦し紛れに魔砲を投げつけてきたが、難なく、『月風つきかぜ』で斬り飛ばす。

『一閃』を使うまでも無く普通に斬っただけで、魔砲は難なく真っ二つになって転がった。

敵機は、思わず後ずさる。

そして、下がった拍子に後に居た友軍機に接触して、二機の動きが一瞬止まった。

俺はそれを見逃さず、抜刀術刺突技『閃牙センガ』を敵機の頭部に放った。


抜刀術刺突技『閃牙センガ』とは、刃を上にして剣先を敵に向けたまま肩まで上げ、左腕で刀身を支えた状態で放つ刺突技だ。

この状態で、機体ごと突撃し、敵の直前で、刀を突き出す。

その威力は、機体の瞬発力と膂力によるが、その威力はシミュレーションでは、ナノ・エナジーの障壁をも簡単に貫く事が出来ていた。


『ザ・タワー』から放たれた剣先は、敵機の頭部を貫き、それに留まらず、後方の敵機の頭部も同時に貫いていた。

これで二機ともメインモニターが潰れたはずだ。

俺はすかさず刃を上方の切り上げた刃を抜いた後、右足で前蹴りを放つ。

ギガント・ナイトは基本的に足での攻撃は、バランサーと人工精霊の精度の関係上行わないが、アルカナ・ナイトはその点、その欠点を克服しているので、足による攻撃も問題ない。


敵の二機のギガント・ナイトは為す統べなく縺れるように後方に倒れる。

俺は、立ち上がれないように、ギガント・ナイトの膝から下を斬り飛ばし、二機の手も肘から先を斬り飛ばした。

そして、俺は警告を放った。


「大人しく、機体から出て来い!

さもなくば、機体ごと破壊する!」


◇◇◇◇◇


 二機の敵機体に太刀を突きつけて、数秒、胸部ハッチから、両手を挙げて、操縦者が出てきた。

一人は獣人の男、もう一人は赤毛の女だった。

装備は統一性が無い服装で、皮製のプロテクターを胸部と肩、肘膝に装備していた。

俺は、二人をうつ伏せで、両手を頭に乗せるように指示した後、ルナと共に『ザ・タワー』から降り、ウィンドウを開いて、拘束用の手錠を取り出して、二人を拘束した。

そして、見張りをルナに頼んで、破壊したもう一機へと向かった。


もう一機のギガント・ナイトに近づくと、胸部のハッチが開いていた。

ガンソードを構え、慎重に近づき中を確認すると、操縦者は居らずも抜けの殻だった。

どうやら、二機との戦闘の間に逃げ出したらしい。

軽く、操縦席の中を見たが、所属など確認できるようなものは無い様だった。

念のため、操縦席に座り、ギガント・ナイトの人工精霊を呼び出して見るが、起動しない……どうやら、乗っていた者が手がかりを残さないように核を破壊したのだろう。

俺は、諦め、拘束した捕虜の下に戻る事にした。


◇◇◇◇◇


 1km離れた砂丘で『ケルベロス』の双子の二人は自分達の魔獣や、ギガント・ナイトがやられる様を呆気に取られながら見ていた。

自分達の魔獣だけで簡単に屠れる敵だと思ったら、一瞬で、魔獣は蹂躙されるわ、氷付けにしたと思ったら、何処からか湧いて出たギガント・ナイトによって、こちらの3機が数分で破壊されたのだから仕方が無い……。


「どうするネ、兄弟?」

「どうするも、こうするもあんな化け物、私達だけじゃ相手にならないヨ。

蟲ももう手持ちはないしネ」

「でも、さっき隊長にも釘刺されたネ。

逃げたら、家族までころされるヨ?」

「いや、いや兄弟、良く考えるネ!

私達の契約に『事前情報と余りに食い違っていて任務の遂行が困難な場合、その証拠を提示する事で、契約違反を契約相手に取れる』っていう一文があるヨ!

今回は、それに該当させられるネ!

標的は王女と近衛騎士と近衛騎士のギガント・ナイト一機ネ。

あの馬鹿げた強さの男とあの黒いギガント・ナイトは情報に無かったヨ!

あの男と黒いギガント・ナイトの情報は事前情報に無かったんだから、

これは確実に契約違反ヨ!

私達、退却しても問題ないネ!」


兄弟は、目を見合わせ頷き合う。

そして、踵を返した時、後から声が掛かった。


「まだ、退却は早いぞ?!」


その声に双子は再び振り返った。

其処には、この部隊の隊長『ファイゼル』が左肩を押さえながら、砂丘を登ってきていた。


「『リカルド』と『アリシア』が敵に捕まった。

逃げるにしてもあの二人の口を封じてからだ」


その言葉に双子は顔を顰める。


「隊長、助け出すんじゃなく、殺すのカ?」


「ああ、我々に捕虜となる事は許されていない。

逃げられなければ自害するしかない。

それを二人は怠った。

確かに契約的には情報に不備があった以上、退却は仕方が無いが、

敵に捕まって、こちらの情報を知られる訳にはいかない。

始末してから撤退だ」


「でも、アイツは強すぎネ。

今行ったら返り討ちヨ?」


「……夜襲で始末する。

ヤツラも自分達の攻撃には警戒するだろうが、捕虜に対しても警戒する余裕はないだろう。

人数が四人しかいないしな」


そこまで話をした所で、隊長の背後に靄のような黒い影が出現した。

双子が驚いて、身構えたのを見て、隊長が振り返ると、そこには……。


大鎌を担ぎ、黒いローブのフードをふかぶかと被った、痩せた男が佇んでいた。


その姿を認めた隊長と双子は、一瞬で距離を置いた後、肩膝を付いて臣下の礼を取った。

驚きを隠せず、震える声で隊長が言葉を発した。


「ボ、ボス!

な、なんでこんな所に?」


デスサイズと呼ばれる黒い大鎌を肩に担ぎながら、『ボス』と呼ばれた痩せぎすの男がそれに応えた。


「ちょっと、野暮用が有ってな……。

それよりさっきの話だが……。

夜襲では遅くはないか?」


「き、聞いていたんですか?!

ですが……今の戦力ですと、まともに戦う事は困難ですが……」


「夜になったら、情報が漏れた後なんじゃないか?

まあ、お前等にはアイツを出し抜くのは難しいか?

しょうがない……挨拶がてら俺が片付けといてやるよ?

その代わり、お前等には任務失敗の罰を与えるがな」


その言葉を聞いて、隊長と双子は慌てる。


「ま、待って下さい!ボス!

今回の失敗は、情報に不備が有ったせいです!」


「「そうネ!私達あんな化け物がいル、聞いてないヨ!!」」


「まあ、そうだな?

あの『化け物』は俺と同類だから、そんなに数は居ねえな?

あまり、この情報は漏らしたくねえから、お前等消えてくれるか?」


その言葉を聞いた隊長と双子は、立ち上がり、逃げようと背を向けるが、時は既に遅かった。

振り返った先にはボスと呼ばれた男が居り、既に大鎌を振りかざしていた。

男達は悲鳴を上げる間も無く、首と胴体が泣き分かれし、盛大に血飛沫を上げ、事切れたのだった。


ボスと呼ばれた男は、大鎌を一振りし、付いていた血を振り払うと、砂丘の下の黒いギガント・ナイトを見つめた。


「はて、さて、新人の顔でも拝みに行きますか?

どれくらい遊べるかな?」


ボスと呼ばれた男はその口角を吊り上げ、その姿を煙のように消したのだった。


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