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暗殺部隊


 俺は、ユリカ王女達から王都脱出の経緯を聞いた後、お互いのテントに分かれた。

俺とルナ、ユリカ王女と騎士ローラだ。

まあ、テントを分けるのは当然だろう、なんなら野営セットは40組あるから一人一テントでも余裕だ俺達は軽く就寝の挨拶をした後、寝床につく。


暫くして、俺はもぞもぞと動く気配に目を覚ます。

このテントには俺とルナしないないのだから、動いているのは当然ルナだ。

ルナはおもむろに起き上がると、俺の寝袋に入り込んできた。

俺は背中側に入り込んできたルナに驚き、振り返る。


「ル、ルナ、どうしたんだ?」


ルナは潤んだ瞳で懇願してきた。

「……マスター。今日はあんまりマスターに触れていません。

その……今日は?してくれないのでしょうか?」


俺達は最初に情を交わしてからこの一週間、毎日、行為をいたしている。

覚えたてで歯止めが効かなかった……昼間は移動や戦闘で緊張していたし、夜は二人きりだったので、いちゃいちゃしていたので……流れ的に盛り上がっても仕方が無い。

まあ、少しお互いタガが外れているような気もするが……。

だが、今日はさすがに拙いだろう?

隣のテントには、王女達がいるのだから。


「い、いや……俺もそうしたいのは山々なんだが、流石に今日は拙いだろう?

隣のテントには、王女様達がいるんだし、後、2、3日で目的地の『ジン』に着くから、そうしたら、宿でゆっくりしような」


俺の言葉にルナが涙目になって、俺の胸に顔を埋める。

「マスター、そんな事を言って、本当は私に飽きてしまったんではないんですか?

今日も、ユリカ王女殿下ばかり見てました!」


俺はルナの行動に合点がいった、ルナはどうやら、王女に嫉妬していたらしい。

俺って、そんなに王女を見てただろうか?

多分、王女の胸に目がいっていたのかもしれない?

どうも、それがルナに不安を与えてしまったらしい。

ふ~む、今まで女の子と付き合った事が無い弊害だな、今後は気をつけよう。

俺は安心させるようにルナを抱きしめてそのすべらかなプラチナブロンドの髪を撫でる。


「ルナ、不安にさせた様だな。ごめん。

俺の一番はルナだよ。

これからは極力他の女の子に目が行かないように注意するよ」


「いいえ!私こそしみません。たかが『人工精霊』の分際で……。

マスターがどんな方とお付き合いしようと、私には何も言う権利は無いのに……」


「いいんだ。ルナに気に掛けられて、俺も嬉しい。

ありがとうな」


その言葉を聞いて、ルナは安心したのか、落ち着いて、「マスター、大好きです。」と呟いた後、俺を抱きしめながら眠りについた。

まあ、ルナも今までずっと一人で寂しかったんだろう。

俺という存在が出来て、失いたくない気持ちが強くなったのだろう。

一心同体なんだから、離れる訳ないのにな?

でも他のアルカナ・ナイトの『人工精霊』もこんなに主人に依存しているのだろうか?

何か違う様な気がする。

ルナは『人工精霊』の中でも特殊なのかもしれない……どう考えても兵器としては、欠陥品……情緒不安定な様な気がする。

まあ、今のところ、確かめるすべも無いし、俺としても慕われて嫌という訳じゃない。

むしろそんな経験今まで無かったので結構嬉しい。


まあ俺としては気にする事でもないし、今の所支障は無い。

まあ、他のアルカナ・ナイトと接触する機会があれば聞けばいいやと、

俺もルナに寄り添って眠りに着くのだった。


◇◇◇◇◇


 翌日、出発前にローラの『キガント・ナイト』の修理の状態を確認した。

結果、修理前より調子が良さそうだ。

ルナに確認したところ、膝関節のパーツがかなり消耗していたので総取替えしたとの事だ。

そりゃパーツが新品なら調子も良くなるよな。

その話をしたら、ローラにあらく感激し、お礼を言っていた。

なんでも、『ギガント・ナイト』のパーツは使い回しか、磨耗した箇所を補強して使うのが当たり前で、新品のパーツなど滅多に使わないのだそうだ。

まあ、『ギガント・ナイト』自体かなり貴重品だから仕方が無いんだろう。

俺達の場合は、『ナノ・エナジー』で作成できるから良いが、一般ではかなり厳しいだろう。

俺達も『ナノ・エナジー』に余裕がある訳じゃないから、大幅に破損すると問題ではあったが。


そして、『ギガント・ナイト』の確認が終わると、再度『次元収納ディメンション・スペース』に閉まってから、昨日と同じように『ラウンド・バード』にルナと王女を乗せ、『ジン』に向かうのだった。


道中、日差しが強い為、午前中の比較的涼しい時間帯に進めるだけ進む。

午後は、日が翳り初めてから移動する事にした。


その午後の移動時にそれは起こった。

砂漠を移動する俺達から向かって9時の方向、いた側の砂丘から大きなものが地中を向かってくる気配を俺は感じた。

俺は即座に左手を上げて、皆に注意を促す。


「みんな!止まれ!北側の砂丘から何か近づいてくる!砂の中にかなり大きな気配がある!」


俺の注意に女騎士ローラが詳しい位置を聞いてきた。

「ハヤト殿!どの辺りですか?」


俺は注意深く、感知魔法に引っかかった場所を指差す。

俺が指差した場所は砂が微妙に盛り上がり、かなりな勢いでこちらに進んでくる様子が見て取れた。

それを確認してローラが叫んだ。


「!!『サンド・ワーム』だ!」


「『サンド・ワーム』?っていうと、確かデカイ、ミミズみたいなやつか?!」


「まあ、形状はそうなのですが、もっと凶悪です。

雑食で、何でも食います。

体長は平均して4m前後、目は退化して無く、頭は歯が円形にびっしり幾重にもあり、砂漠の鮫とも言われています。

しかも、今、接近してきているものは通常の倍以上ありそうです!

8mから10m級です!

あのサイズだと『ギガント・ナイト』でないと太刀打ちできない!」


「そうか……まあ、いい。

取合えずみんな下がってくれ、俺が相手をする」


「ハヤト殿、そんな!無茶です!早く『ギガント・ナイト』を出してください!」


「今からじゃ遅い!いいから任せろ!」


俺はそういうとその場を駆け出し、腰のガンソードを引き抜いた。

砂の中!

ならば、地属性魔法を得意とする俺にとって好都合。

俺は、魔獣の手前で、ガンソードを長剣モードにして、砂に突き立て、魔法名を叫ぶ。


「ショックウェーブ!!」


その声と共にガンソードを魔法発動体として魔獣に向かって衝撃破が放たれた。

衝撃破は砂を波立たせ、まるで津波の如くうねりを作って、敵に向かった。

砂の波を受け、『サンド・ワーム』が、砂の中から弾き出されながら砂の波を幾重にも受けて、ダメージを受けていた。

まるで丘に上がった魚のようにビタン、ビタンと身体をくねらせ、もがいている。


俺はすかさず駆け寄り、ガンソードを振動剣モードにして、『サンド・ワーム』を一気に切り裂いた。

5つ6つ分断したが、『サンド・ワーム』は分断されながらも暫くもがいていた。


俺は、それを怪訝な顔でみる。

俺達は、敵に発見されないように密かに認識阻害魔法『インビジブル』を発動させながら進んでいた。

今の俺の魔力量は、アルカナ・ナイトからのエネルギー供給で、無尽蔵と言えたので、常時発動しながら移動していた。

それなのに、魔獣は襲ってきた……。

俺は、魔獣の死骸を見ながら、周囲を警戒する。

そんな俺にみんなが集まってきた。


動かない俺を怪訝に思い、ユリカ王女が声を掛けてきた。

「ハヤト様?敵はお倒しになったのでしょう?どうかされたのですか?」


「……いや、ちょっと気になりまして……

俺は、敵や魔獣に出来るだけ気づかれないように『インビジブル』をみんなにかけながら進んでたんです。

それなのにこの『サンド・ワーム』は襲ってきた……

魔獣で阻害魔法を無視して感知できるのは、余程の上級魔獣です。

知能の低いコイツが襲ってくる事などありえません」


その俺の意見にローラが口出す。

「たまたまでは無いでしょうか?」


俺は、それに応えるように周りを見渡し、舌打した。

「いいや。違うな!

何故なら、もう数十匹の『サンド・ワーム』に囲まれている!」


それを合図に周囲1km圏内の砂が一斉に蠢き出したのだった。


◇◇◇◇◇

 

 1kmほど離れた砂丘の上に、人影が5人佇んでいた……

5人は1km先の人影の4人を双眼鏡で確認する。

その中の赤毛のグラマラスな女が他の仲間に声を掛けた。


「間違いないね。

ありゃユリカ王女と近衛騎士のローラだよ」


それに対して軽そうな青髪碧眼の獣人の男が言葉を返す。


「ふーん?でもその他の二人は誰なんだい?

特にあの男。『サンド・ワーム』を簡単に倒してたぞ?

近衛騎士じゃないのか?」


軽そうな獣人男の質問に赤毛の女では無くリーダーと思われる壮年の銀髪の男が応えた。

「いや、俺が知る限り近衛にあんな男はいないな。

かなり若そうだ。

近衛の新兵は下済みが必要だ、早くても20代半ばからでないと入れない。

あの男はどう見ても10代後半だ」


「そっすか?

じゃあ、やられた『サンド・ワーム』が弱かったんすかね?」


その言葉に残りの二人……同じ顔の黒髪糸目の双子と思われる兄弟が叫ぶ。

「そんな事ないネ!私達の蟲は最強ヨ!」

「そうあるネ!日々鍛えてるネ!並みの騎士なんかいちころヨ!

特に今回は、『ギガント・ナイト』が相手だと聞いたネ。

最強どころ揃えたヨ!」


双子に詰め寄られた軽い感じの獣人男は焦る。

「解った!解った!じゃあ、アイツが強いんだろ?

で、どうしやす?リーダー?」


問われたリーダーの男は当然といった感じで返答した。

「やる事は変わらん。

どうやら、ヤツラは『ギガント・ナイト』を失っているようだしな。

いくら、あの男が強かろうが生身で我々の『ギガント・ナイト』に叶うはずも無い。

こんな砂漠の真ん中では逃げる事も出来ないしな」


リーダーの男はそういうと、砂丘の下を振り返る。

其処には、砂漠の迷彩柄の『ギガント・ナイト』が三機方膝を付いて待機していた。


「よし、では予定通り、ワンド兄弟の『サンド・ワーム』で追い込み。

念のため、後詰めとして、俺達の『ギガント・ナイト』で包囲殲滅する。

アリシア!お前は西に回りこめ。

リカルドお前は南東だ。

俺はここ、北から接近する。

では、行け!」


「「は!了解しました」」


アリシアと呼ばれた赤毛の女と、リカルドと呼ばれた獣人男の二人は、

『ギガント・ナイト』に駆け出した。

そして、糸目の双子は怪訝な顔でリーダーを見た。


「ファイゼル隊長、相手は生身の人間4人ネ」

「そうネ。後詰め必要ないネ。

我々の蟲だけでかたがつくネ」


リーダーのファイゼルと呼ばれた男が糸目の双子を睨みつける。

「我々、暗殺組織『ケルベロス』に失敗は許されない。

失敗した時は死ぬ時だ。

お前等はそれを解っていてお前等だけで十分だというのか?

失敗した場合、お前等の命以外に、家族にもその償いをしてもらう事にもなるぞ?」


リーダーの怒気に双子は慌てて自分達の発言を訂正した。

「隊長、冗談ネ!隊長の判断に間違いないネ!」

「隙の無い作戦ネ!さすが隊長ヨ!私達、隊長の指示に従うネ!」


リーダーは、その反応を鼻で笑った。

「最初から、そうしろ!

では、抜かりなく攻め立てろ。

逃げるようならこちらで処理する」


リーダーの男、暗殺組織『ケルベロス』の部隊長『ファイゼル』は、そういうと、自分の『ギガント・ナイト』に向かうのだった。


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