第91話 虐殺
さぁ、始めよう。
こいつらを殺す。
俺の固有魔法を発動する。
主体とするのは『蒼炎』。
地属性魔法で創った巨大な球体に『蒼炎』を纏わせて巨大な恒星のようなものを創る。
これはフラムと初めて会った時使っていた魔法からインスピレーションを受け思い浮かんだ魔法だ。
ちなみに地属性魔法は中が空洞になっておりその中にも『蒼炎』で熱エネルギーを内包させる。
その恒星に『結界創作』で熱エネルギーが漏れないよう内部で反射させ続ける。
『白轟雷』で速度をつけ一気に地面に落とす。
着弾と同時に凝縮されたエネルギーを一気に放出する。
それで辺りを吹き飛ばして終わりだ。
これだけの威力があればこの程度の町一瞬で消す事は可能だ。
それじゃぁ始めよう。
俺はまず地属性魔法で直径30メートル程の球体を創った。
太陽光が遮断されて大きな丸い影がフライルテイスに落ちて暗く染めた。
「フラムさん! おかえりなさいっす!」
「あぁ」
やはり故郷というのは良いものだ。
非常に気持ちが安らぐ。
今まで殺してきた多くの命を忘れてしまいそうだ。
俺の炎属性最上級の神話級スキル『業火神』に内包されたスキル『犠食』は殺した数、魂を食らった数に比例し自らの魔力が増幅するという奇っ怪なスキルだ。
他の魔王と俺の差別化を行う為ここから遠く離れたゴブリンの小さな集落を襲ったのが全ての始まりだった。
俺はその時にこのスキルの威力を知ってしまった。
たった1人殺しただけで力が溢れてくるのがわかった。
いや昔にも魔王になった時もこのスキルにお世話になったことがある。
当時の炎属性魔法を殺した時にものすごい力が湧いてきた。
その正体がこのスキルだと知った時には笑わずには居られなかった。
俺は生物を、強い者を殺せば殺すほど強くなれる。
そう、俺は無限に強くなれるのだ。
魔王になった当初は山の獣を殺しフライルテイスの皆と食料にしていた。
その小さな命を糧に魔力を、増幅させていた。
魔王になるだけの強さが俺にはあったそうだがそれを酷使する事なんて無くて魔王になる前とほとんど同じ事をしていた。
生まれた時から鬼で強かった俺は当時の炎属性魔王が玉座を奪われるのでは無いかと危惧して俺に襲いかかった。
それを殺してしまって俺は鬼の英雄みたいに持ち上げられた。
実際魔王は大したこと無かった。
気づきた頃には目の前で魔王が倒れ俺のスキル一覧に神話級スキルが入っていた。
『業火神』は非常に便利なスキルで、内包されたスキルは『犠食』と、・炎属性魔法への絶対適合、・炎属性魔法の創作などがあった。
だが別に俺はそれを使うことは無かった。
自分が1番強いから争うことなんてないと思っていたから。
だが初めて八色光魔王で集まった頃自分がどれだけ弱いかを知った。
八人の魔王。
現在は十人だが当時はリゼとレイキスを抜いた八人だった。
十色光魔王の中で最も強い男。
彼の名は今でも知らない。
だが足の子指一本から放たれる魔力だけで俺と同じぐらいの魔力があった。
格が違いすぎた。
そんな彼を俺は超えたかった。
それからは修行に励んだ。
フライルテイスの格闘術を習ったり、耐性スキルを会得する為に体を鍛えたりと沢山努力した。
そうしているうちに2人の魔王が誕生し十色光魔王となった。
俺はさらなる力を求めるようになった。
それからは魔物の群れを殺したりと大量に殺戮を繰り返した。
だが到底あの男にはたどり着かない。
俺は強くなるため迷い森周辺の魔族の町を丸ごと潰す計画を立てた。
迷い森周辺には大きな村があり、その地域を保護する魔王は遠い昔に死んだという情報があったからだ。
そんな時にフライルテイスの住民にひとつの事を聞いた。
「産まれた瞬間に息を引き取った子がいる」
、と。
鬼の子は生まれた時から他種族よりも強く産まれる。
その子は旅に出ていた鬼2人が子を孕みフライルテイスの外で産んだ結果環境の変化によって死んだと考えられていた。
だがそんなんで死ぬか? 普通。
死んですぐの夜間、クマの魔獣により父親が殺され母親は何とか逃げられたそうだがその時にその子を森の中に落としてしまったようだ。
そのまま何とかフライルテイスにたどり着いたそうだ。
鬼の環境適合能力ならここまで着くのは可能だが相当な時間を要した。
勿論帰還しても母親は泣き崩れずっと引きこもってしまった。
励ましても励ましきれなかった。
鬼の子が産まれてすぐ死ぬなんてこれまで実例が無かった為予想外が重なり悲しさが増幅したのだろう。
父も子も骨なんて持っていないが墓を建てた。
フライルテイス外に住む他の鬼達も見舞いに集まった。
医師もこんな事は根絶する為研究に励んだそうだ。
そんな事が起こる三週間前、俺は迷い森周辺の魔族の町を襲う為計画を進めていた。
まずはその町周辺にあるゴブリンの集落を潰していった。
多少生き残りが出てしまったのは少し戸惑ってしまったからだ。
無慈悲に知性の高い魔族を殺すのは辛かった。
叫び声や断末魔を聞くのが辛かった。
だから最後の村は一撃で消滅させる為全力で大きな炎の玉を集落に降らせた。
しかしその瞬間とある男が現れた。
その男は俺の炎の玉を押し退けてみせた。
俺は驚いた。
男は、魔王でもないのに俺の全力の魔法を押し退けたのだ。
「今のはお前か」
「そうだと言ったらどうする?」
男は流暢に返した。
それからはよく覚えていない。
同じくらい、いや俺より強い実力者が現れたのだ。
戦闘が楽しくて仕方がなかったのは覚えている。
だがその後有り得ないほどにボロボロにされたのも覚えている。
負けを認め俺はフライルテイスに帰ることにした。
その時彼の名前を聞いた。
ディルガ。
これが俺を倒した魔王以外の男だった。
それからはディルガに勝ちたくて修行を続けた。
ディルガがいない間にリーガル村を襲った。
その時に物凄い量の命を狩り大量の魂を食らった。
今になって俺は前の二倍ほどまで魔力量が増し強くなった。
またも英雄として、魔王としてフライルテイスに帰ると皆が喜んでくれた。
俺はそれが嬉しかった。
だがまだ目標は達成していない。
十色光魔王最強の男を超えることだ。
その第一歩としてディルガを倒す。
そんな時町に大きな影が現れた。
上を見てみれば赤黒い髪の少年が火山の上に立っている。
その少年は星のような大きな球体を空中で操っていた。
俺にはそれが直ぐにディルガだと分かった。
気付けば俺はディルガの元に走っていた。
目標まで200メートル。
一瞬で詰められる距離に奴はいた。
ふぅ……集中しろ。
集中して魔法の成功率を底上げしろ。
俺は深く深呼吸をする。
癖で深呼吸をしてしまったが俺じゃなかったら肺が焼けて機能を失ってしまう。
でも俺はそれに気もくれず魔法を演算していく。
地属性魔法の球体に『蒼炎』の熱エネルギーを付与する。
イメージはガソリンを塗ったバランスボールにライターで火をつける感じだ。
(……成功だ)
ここまでの過程は一概に難しいとは言えない。
イメージからも想像はつくだろう?
だがこの大きさになると一気に難度が上がる。
『管轄者』の演算処理能力があってもこれだからな。
そして最終工程、『白轟雷』で速度をつけフライルテイスに落とす。
覚悟は決めてある。
ここに住む鬼共の日常を今から壊す。
すまねぇな。
魔力を集中させる。
だがこの時固有魔法に集中していてこっちに走り寄る魔力に気づけなかった。
「ディルガ!!!」
「ちっ……」
前に飛んで出てきたオレンジ色の服をしたガタイのいい男。
「フラム゛!!!」
「かっは! 久しぃなぁ!」
「お前はそこで止まってろ!」
「あぁ?」
(『結界創作』で行動不能結界を展開!)
フラムは動けていない。
よし、通用する。
『座標認識』で見るに前戦った時の二倍以上魔力がふえている。
でがそんなフラムにも俺の結界魔法が通用する。
俺は今フラムを超えたのだ。
今固有魔法を発動する。
「死ね……『炎爆燦爛球』!!!!!」
『白轟雷』で速度が付与され恒星のような魔法が落ちて行く。
「……っ……ぁ……ぃ、ぇ……ろ」
フラムが何か話している。
だがその声は声帯が行動不能結界で制限され上手く発せていない。
しかし結界の中でよく声出せたな。
少し強化しておくか。
俺は行動不能結界を強化しフラムの身動きが出来ないようにした。
フラムの目線は俺を向いている。
フライルテイスに落ちるのは見たくないだろうからな。
せめてもの慈悲だ。
それから一秒弱。
百メートルほど落下し俺の固有魔法はフライルテイスに落ちた。
瞬間的に爆発し大きなキノコ雲をうんだ。
物凄い熱と音と光。
だが俺はその3種全てに耐性を持っている。
フラムは熱は大丈夫だろうが音と光はどうだろう。
表情は一切変わっていないはずなのに少し悲しそうに見えた。
絶望の表情だ。
それもそのはず、先程まで普通に話していた町の人々もずっと育った故郷の風景も俺の魔法によって全てが消し炭になるからな。
大規模な爆発に地属性魔法の散乱が相まって絶大な破壊力をみせている。
そしてこれをスキル化したので魔力が持つ限り永遠に放ち続けられる。
『炎爆燦爛球』
地属性魔法、『蒼炎』、『白轟雷』、『結界創作』を複雑に組み合わせたディルガの固有魔法。
大きな恒星のような物を生み出し、その莫大なエネルギーを爆発させ周囲を消し炭にする。
といった魔法だ。
記載の通りフライルテイスは爆発で火の海になっている。
爆発のキノコ雲は空と高くへと飛び上がり、地表は何十、何百メートルと言うクレーターができてフライルテイスは跡形もなく消えていった。
俺が行動不能結界を解くとフラムは火山の縁で俺に殴りかかった。
「てめぇ! 何したが分かってんのかぁ?!」
「少し冷静になれ」
フラムは冷静じゃない。
もちろんそれは俺もだ。
俺が冷静ならこんな大魔法発動しない。
怒りに身を任せフラムへの復習しか考えていない。
無慈悲にもやられたフライルテイスの住民達には少し申し訳ないがそれはこちらも一緒だからな。
「お前のやった事と同じ事をした。それまでだ」
「……てっ、てめぇ゛!」
フラムが俺に殴り掛かる。
雑な打撃は俺にかすりすらしない。
まだまだ魔力は残っている。
『思考加速』も『身体能力強化』も余裕がある。
俺の今の運動能力と動体視力でこんな乱雑な打撃を避けられないわけが無い。
隙だらけなので黙らせる為に俺は1発フラムの腹を殴った。
フラム目と口を大きく開け悶絶している。
「今楽にしてやる」
フラムはそこに膝をつけ腹を抑えている。
俺は『蒼炎』を手の上で発動する。
「ま……まてっ、ゲホッ……まて!」
「なんだよ」
「その蒼い炎。……何て名のスキルだ?」
「知る必要あるか?」
「……別に言わなくてもいい……ただそれが『蒼炎』と言うスキルの場合お前の種族は鬼……になる」
「は?」
こいつは何を言っている。
今手の上にあるこの蒼い炎が……俺が鬼?
「説明しろ」
悶絶するフラムにそう聞き返すとフラムは、淡々と語って言った。
鬼の子供が産まれた瞬間から息をしていなかったこと。
その鬼の子は森の中で両親と別れ1人異界の地に取り残されたこと。
その鬼の子は、赤黒い髪色だったこと。
そして何より
「そいつは……角が生えていなかった……俺と同じだ……」
鬼は生まれつき1本から2本の角が生えている。
その鬼の子は産まれた時から角が1本も生えてなかったそうだ。
フラムは固有スキル『鬼』で角の有無を操れるそうで、普段は邪魔だから生やしていないらしい。
フラム曰く固有スキルは1種族でいくつかあるようで鬼は『鬼』、『蒼炎』、『貫通』と3種あるようで、そのうちフラムは『鬼』と『貫通』を会得しているようだ。
俺は……『鬼』なんて、有していないが角が生えていない。
だがスキル一覧を見てみると、
『虐殺者』が消えている……ん?
『万斛虐殺』。
物理攻撃時に精神にダメージを負わせることができる。
また魔力の干渉で接触せずとも精神に攻撃可能。
『虐殺者』の上位互換。
また残酷なスキルを会得してしまった。
だが『鬼』の姿はない。
「仮に俺が鬼だったらどうする」
「へっ……鬼でも……ここで殺す!」
「なっ!」
フラムほ急激に魔力を増幅させた。
何をしやがった?
急に力が湧いてきたのかフラムは俺を遠くに弾き魔力を体から発していた。
「『鬼』に内包される能力は角の有無だけじゃない……。・炎属性魔法への適合と威力増大。そして・魔力の膨張。これが俺の強さの根源だ。」
フラムの言う通りだ。
フラムは先程の地面に這いつくばってた時とは比べ物にならないほどに強くなっている。
一瞬でこれだけ身体を強化できるなんて……。
『鬼』……おもしれぇ!
「殺してやるよ」
「やってみろ」
俺らの目は鋭い眼光を光らせ消えかける『炎爆燦爛球』の明かりの前で睨み合った。
良かったら☆やブックマークでの評価お願いします!
ディルガスキル
○常用スキル
ㅇ『管轄者』の下
・『物理耐性』・『環境効果無効』
・『身体能力強化』・『炎属性耐性』
・『思考加速』・『意識拡張』
・『生存能力強化』・『座標認識』
・『暗視』・『光属性耐性』
・『再生』・『状態異常耐性』
・『轟音耐性』・『無限意識』
・『精神攻撃体制』
○スキル
・『魂保存』・『時間の管理者』
・『切断者』・『万斛虐殺』
・『消化』・『分身』
・『蒼炎』・『回復』
・『結界創作』・『念話』
・『空間転移』・『白轟雷』
・『精神看破』・『炎爆燦爛球』
〇属性適性
・『地属性適性』・『炎属性適性』
・『雷属性適性』




