第90話 道のり
地上のビーチに転移し、フパスさんと合流点し案内してもらった。
フライルテイスまでの道のりは覚えているそうでフパスさんを抱いて『身体能力強化』を駆使し全力で走った。
(ちょ! ディルガさん! 速ひ、速い!)
およそ時速400キロメートルの音速を超えた超速で。
走る俺にフパスさんがナビゲーションしながら目的地へと向かうのだ。
音速を超えているせいで普通に話したら声が届く前に消えてしまうので会話は『念話』でおこなう。
生え茂る木々を飛んで避けながら避けきれないものは申し訳ないが粉にして前に進む。
崖も森も川も全てを飛び越えて超速で走り続ける。
もう誰も俺達を止められない。
こんな速度でも俺の脳は『思考加速』と『管轄者』によって演算処理を可能としている。
脳が焼ききれないように『再生』も常に発動し意識と体を保ち続ける。
『結界創作』でフパスさんが振り落とされないようにする。
球状ではなく俺の前が尖るように円柱状に展開する事で風の影響を受けにくくする。
『蒼炎』のエネルギーも使い速度を保ち続ける。
(次の川を右です)
(了ー解!)
この速度では周囲の魔獣も俺を知覚できても追いつくことなんてできない。
ましてや俺が着地し走った道が削れ土や岩が大きく露出している。
砂埃と言えるほど粒子の細かくない埃が舞い続け周囲の生態系が少しだけ崩れたかもしれない。
俺は自然にとってただ走ってるだけで全てを壊す災害となっている。
それでも俺は早く目指さなければならなかった。
自然はやがて時が再生させる。
だが失った命は戻らない。
どころか時が経てば経つほどその痛み、苦しみ、悲劇、そして名前までもみなが忘れてしまう。
人間も魔族も生きる者は時間が経てば過去にあったものを忘れてしまう。
だが他の生物とは違い高い知性を生かし本に記すなど忘れない為の術はある。
その術の最後が悲劇で終わらないようにしなければならない。
俺は悲壮な覚悟でこの異世界の歴史を再生させなければならない。
それが鬼一族の歴史に傷をつけることとなっても。
その互いに負った傷を互いを傷付けることでしか治せないから相手を傷つけ続けるという負の連鎖を戦争と言うのだろう。
だがこちら陣営が殆どフラムの手によって殺された今、俺の反撃が最後になる。
ここで圧倒的な力差を見せつけなければ……。
その時は少し体に力が入り速度が上がった気がした。
俺はこのまま走り続けた。
走り始めて1時間程だろうか。
特に休んでもいない。
リーガル村周辺のビーチからおよそ400キロメートル以上離れた異界の地。
いや元々異界なんだが……。
着いた。
遂に……
地獄の町、フライルテイスに。
「ここが……フライルテイス……」
フパスさんは完全に脱力してしまっている。
俺のスピードについてきた反応だろう。
とりあえず転移魔法でフパスさんを水中都市へ戻そう。
俺はそこで転移魔法を駆使しフパスさんを水中都市に戻した。
水中都市軍が支配するビルに戻したので軍の人達に意識消失してるフパスさんを任せて俺はまたフライルテイスに転移した。
───フライルテイス
地獄の町、フライルテイス。
気温は100度を優に超えていまうほどの熱帯。
見てみると町は火山の中に位置しているようで火山を生活エネルギーとして利用しているようだ。
噴火しないのか気になったが操っているのか、それとももう噴火しないのか。
だが問題はそこじゃない。
フラムの居場所だ。
とりあえず内部に侵入する。
火山を登り上から見下ろしてみよう。
火山を登り上から噴火口を覗き込んでみた。
およそ2キロメートルの直径の噴火口の大きな窪みの中に町が拡がっている。
非規則的な家の並びが続いている。
いくつか大きな施設があるがそれは恐らく発電所かなにかだろう。
「まずは……」
『座標認識』を限界まで広げてフライルテイスを囲み魔力を感知する。
『座標認識』にはおよそ3万の魔力がうつった。
その中で最も大きな魔力、これがフラム・ミリュンリルの魔力だ。
圧倒的だ。
そこら辺の魔人よりも。
そしてその魔人、いや恐らく鬼までもリーガル村や水中都市、リガリスの皆より個々の能力値が以上に高い。
子供と思われる小さな魔力でもリーガル村の大人と同等、いやそれ以上の魔力量がある。
子供でも非常に強い力を持っているようだ。
それが鬼。
もしかしたらフラムも鬼なのか?
フラムを倒すだけなのに……他の鬼達に被害を出してもいいと言うのか?
それじゃ……まるでフラムと同レベルだ……。
しかし……やるしか……。
フラムがここから離れるのを待つか?
いやまて! ……いつまでいるかだって分からない。
それにとこに行くかも。
心を鬼にしろ……フラムと同レベルでいい。
なぜフラムがあんな事をしたのか。
到底許せることではない。
だがそれが何故の行動なのかを解明する必要がある。
そして俺はその仇を打つ。
理由が何にせよ俺はフラムをここで殺す。
頭が足りてないのは重々承知している。
もう少し何か深く考えろと……傍観者はそう言うだろう。
だが傍観者の分際で……命を失う怖さ、恐ろしさ……悲しさを曖昧な意識で認識する奴らが俺の苦しみを理解出来るわけない。
俺がどれだけ苦しいかなんて計り知れない。
前世で後悔なんて何回したか分からない。
でも俺はそれを見て見ぬふりをしていた。
何度も苦しい方から逃げ続けた。
だが今は違う。
私情を挟んで多くの命を奪う勇気と覚悟がある。
大量無慈悲殺人者になる勇気と覚悟が。
そして
英雄になる覚悟がある。
俺はその時に強く決意し拳を握った。
フライルテイスを火山の上から見下ろして魔力を装填した。
超巨大魔法を発動する。
スキルでは無い。
俺の作った固有魔法。
成功確率は『管轄者』の演算能力を含め35パーセント程。
俺の勇気に見合う高確率だ。
3回程やれば1回は成功する。
だが1度失敗するだけで俺の魔力は暴発し俺ごとここら一体を吹き飛ばす。
それで生き残れるのは恐らくフラムだけ。
爆発の中心にいる俺は間違いなく死ぬ。
だがそれでは意味が無い。
成功確率を全力で上昇させて目の前の悪魔を皆殺しにする。
ただそれだけだ。
次回、虐殺
ディルガスキル
○常用スキル
ㅇ『管轄者』の下
・『物理耐性』・『環境効果無効』
・『身体能力強化』・『炎属性耐性』
・『思考加速』・『意識拡張』
・『生存能力強化』・『座標認識』
・『暗視』・『光属性耐性』
・『再生』・『状態異常耐性』
・『轟音耐性』・『無限意識』
・『精神攻撃体制』
○スキル
・『魂保存』・『時間の管理者』
・『切断者』・『虐殺者』
・『消化』・『分身』
・『蒼炎』・『回復』
・『結界創作』・『念話』
・『空間転移』・『白轟雷』
・『精神看破』
〇属性適性
・『地属性適性』・『炎属性適性』
・『雷属性適性』




