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第79話 目的④




 斧を手に取り立ち上がり前に進む。

 ゆらゆらと揺れる足で、目の前では【赤】階級冒険者が2人死んでいる。

 その前には戦う【赤】階級冒険者2人。

 後ろには回復魔法師と子供2人。

 その更に後ろに大量の死体。

 無彼らは自分が死んだ事を知覚していない。

 それが果たして良い事なのか、それとも悪い事なのか。

 俺には分からない。

 誰にもわかりやしない。


 「しね゛ぇ!」

 

 喉からガラガラとした声が出る。

 生命力をそのまま注ぎ込んだような声だ。

 不器用で汚くて、それでいて強くて恐ろしい声だ。 

 命の叫びとはこれの事だ。

 俺は精一杯足に力を入れてフラムに斬り掛かる。

 流石の【赤】階級の2人だ。俺を直ぐに戦闘に組み入れ陣形を整えた。

 疲労した俺を配慮し攻撃の順をその場その場で考えて攻撃を繰り返していく。

 フラムも3人による高速攻撃には反撃を入れなければならないようだ。

 鞭を素早く動かし防御、攻撃を繰り返す。

 フラムの攻撃は防御により多くはない。

 『思考加速』で遅い世界を見ている俺が体の間接、目線、筋肉などから攻撃を予測し受け流す。

 他の2人に当たらないように。

 だが目の前で爆発する鞭の前では完全な無効化とはいかなそうだ。せいぜい軽減。

 『思考加速』を使っているのに鞭が早すぎて目で追う事しか出来ない。

 目で追えても体がついて来ない。

 いつもギリギリの状態で攻撃を凌いでいる。

 俺が弾いた隙にスーニャの淙属性魔法、またはリーフルの細かい斬撃。

 これだけの攻撃量で五分五分、いやフラムの方がゆうせいだ。

 こちらは完全に消耗戦。対してフラムはまだ俺達の攻撃を凌いでいるだけのように見える。

 至って余裕の表情だ。

 後衛にはガイラと子供2人、距離を取りながら戦わなくてはいけない。

 しまった、後ろを見ている暇なんて……

 その時フラムが腕を振ると鞭に大きな波が出来て横から俺を叩いた。

 斧で応戦するがとてつもないスピードに耐えられるはずも無く俺の斧は呆気なく砕けていった。

 薄いガラスのように簡単に。

 その後の衝撃が俺を遠くに飛ばした。

 壁に叩きつけられた瞬間体が弓のように湾曲し肺の中の空気が一斉に抜けていった。

 壁に反発した俺の体に追い討ちの鞭が飛んでくる。

 リーフルが軌道を曲げてくれた為威力は八割ほど落ちていた。

 しかし元々があれだけ高くて八割で痛くないわけが無い。

 腕を胸の前で交差させ防御形態をとるとすぐに鞭が追い付き俺の腕に鋭い打撃を与えた。

 腕はその衝撃から胸に強く当たり俺のみぞおち辺りにめり込んた。

 俺はそのまま地面へと落ちて倒れた。

 体に力が入らない。先程も謎に力が湧いてきたがそれの反動なのか俺の体は全く動いてくれない。

 目の前では俺を失い攻撃態勢を整えようとするスーニャとリーフル。

 するとフラムが回り出す。

 体を縦に絞り回り出した。

 それに鞭がついていき周りを回り不思議な形をとっている。

 するとフラムは急に止まり近づくことが出来ない2人を切断した。

 一瞬の事だった。

 遠心力で加速した鞭は俺の目にも映らない。

 それが果たして魔力切れで『思考加速』が鈍っているだけかもしれないが今の俺の目には鞭の残像しか映らなかった。

 音すらも置き去りにして2人を斬り裂いた。

 2人とフラムを繋ぐ線がちょうど直線になった瞬間だった。

 その1瞬の隙で2人か死んだ。

 

 くっそ! ……立てよ! 動け! 俺の体!!!


 何度強く願っても動くのはせいぜい瞼。

 腕や足なんて動かない。

 その瞬間1人の少年が俺の前に立ちはだかる。

 子供2人の気配は周りから消えている。

 避難が済んだようだな……ガイラ。


 「なんだ貴様……」

 「【青】階級冒険者! ガイラだ!」

 

 ガイラが目の前で仁王立ちをしながらフラムに反抗する。

 フラムは弱い虫でも見るかのような目をしてる。


 「なぜ戦う……弱き者は弱き者らしく惨めに逃げればいい」

 「逃げる逃げないの問題じゃない。俺は冒険者としてここで戦わなくちゃいけないんです! 後ろに負傷者を抱えて回復魔法師として逃げられるかぁ!」


 ……。

 するとガイラはこちらを一瞥しにこやかな笑顔を見せた後にフラムを睨み走り出した。

 おいやめろ……何をするつもりだ……お前は逃げればいい……。


 「おらぁ!」


 大きく杖を振りフラムに飛びつく。

 脚力は十分。跳躍してフラムを捉えた。

 だが後から追う形で曲がる鞭に気付いていない。

 声を出そうにも短い時間と疲れが相まって喉で止まった。

 その後、わずかな時間の間でガイラは爆死した。

 小さな体は切り裂かれて中で起きた爆発で木っ端微塵に砕かれた。


 くそ! くそ!


 俺は何も出来ない。

 まずい……意識が……持ってかれる……。

 意識を失う瞬間見えたのはだんだんと遠ざかって行くフラム。

 その後すぐに俺は真っ暗な世界へと誘われた。

 



 ここは……どこだ?

 真っ暗な世界。

 どこを見渡しても何も無い。

 上下左右が分からなくなりそうだ。

 光もない為自分の体すら確認できない。

 だが腕や足などが動くのは分かった。

 これはなんだ……俺は死んだのか?

 あの状況なら有り得る。

 だが死んだにしろフラムに直接やられた訳では無いようだ。

 恐らくあのまま憔悴して死んだ。

 魔力は多少残っていたが体は傷だらけだろう。

 よく分からん空間で俺は頭を悩ませた。

 

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