第77話 目的②
総勢120名程の冒険者がギルドが使った広い会議場を出てフラムがいると思われる南へ向かった。
全員が整列し12人10列となり道を走った。
町は声をあげ狂ったように悲鳴をあげていた。
住民達は叫びながら走って北に向かっている。
正当性の取れた我々とは違い雑な流れだ。
転んで、泣いて、叫んで、どれだけ死を恐れているのだ。
そう思っていたが俺たちはフラムの姿を見て同じ事を思わずにはいられなかった。
筋骨隆々な肉体、体外に漏れる膨大な量の魔力、彫りの深い顔に真っ赤な髪。
目尻が尖ったその眼差しを見て恐怖しない冒険者はいなかった。
「すまんな、俺のために死ね。魔族の同胞たちよ」
何を言ってやがる。
死ねるわけねぇだろ。
その時ヴェルムが腰の紐を解き刃をフラムに投げつける。
当然避けられたが紐に波をつけ食う中で曲げた。
蛇のような動きの紐がフラムを囲んだ。
囲んだ紐がだんだんと閉まっていき刃が後頭部に斬りかかったその時、紐に炎が着火し、炎が伝染し、ヴェルムの武器を燃やした。
勿論弱い紐を使っていたわけじゃない。
強い素材の物を魔力で強化していたはずだがすぐに燃やされた。
それだけ実力差があったのだ。
武器を一瞬でなくしたヴェルムさんは立ちすくんでいる。
予備の武器もないのか?
俺が斧を抜きヴェルムの前に立ちカバーし、ジャンが剣を抜きフラムに襲いかかる。
湾曲した剣は不思議な動きでフラムに斬りかかった。
確実にフラムを捉える刃を後ろに歩きながら避けている。
手をポケットの中に突っ込んで歩いている姿は妙に余裕じみていた。
「予備の武器は!」
「……あぁ、ある」
ヴェルムが取り出したのは先程の武器の先に着いていたナイフの予備のようだ。
数は10本程あるようだが、刃渡り20センチ程の刃物はそのままでも使えそうだがフラム相手にそれは大丈夫なのだろうか。
後方に控える冒険者は足を震わせて動けていない。
リーフルは指揮を執っているので他の冒険者に命令していた。
スーニャは周囲の炎を消化しているようだ。
回復魔法師のガイラは後方で控えている。
とりあえずは俺達も援護しないと。
斧を取りだしナイフ2本を持ったヴェルムと地面を蹴りフラムとの乱闘に混ざった。
フラムを囲み3人で代わり替わりに斬り掛かるのだが全て避けられる。
予知しにくい動きのジャンに、ヴェルムの早い回転力から繰り出される高速斬撃、そして俺の斧からでる思い一撃。
ヴェルムの機動力を生かした戦闘を意識する。
斬撃前に回転で遠心力と共に斬り掛かるヴェルム。
さすがに避けなければならない攻撃に避けたフラムを追撃する俺とジャン。
圧倒的にヴェルムが憔悴する立ち回りだが短時間決戦のつもりだった。
だがフラムはヒラヒラと斬撃を避けていく。
「回避!」
後方からその声が聞こえる。
どうやら攻撃魔法師部隊の詠唱が済んだようだ。
俺達が同タイミングでバックステップでフラムと距離をとる。
それと同時に繰り出された淙属性魔法がフラムを襲った。
しかし、フラムはそれを一瞬にして蒸発させた。
呼吸をするかの如く容易にこなした。
火には水とは言うが、強力すぎる炎の前では弱い水は無力だった。
またひたすらにフラムを切付ける。
だが、
「はぁ、邪魔だよゴミ共」
その言葉が耳に入った瞬間凄まじい轟音が聞こえた。
そのエネルギーは上から下へと移動し俺たちを地面に叩きつけた。
上から強風が降り注ぐかの如く俺たちを地面に埋めた。
全身の触覚が痛いと叫んでいる。
だが動けない。 恐らく全身の骨をやられている。
筋肉も強ばり動くことが出来ない。
まずい……後方の魔法師部隊がやられる……。
勿論剣などを使う冒険者もいるがあれだけの人数が固まっている所では機能しないだろう。
まずいやられる。
フラムは未だ余裕の表情を浮かべそこに立っている。
先程のセリフがもしも本当ならここにいる冒険者どころかリーガル村の住民皆が死ぬことになる。
それだけは阻止しなくては……俺の命に変えても。




