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第66話 伝承



 俺たちは2人と共に喫茶店へ向かった。

 その喫茶店へ入ると静かな部屋が広がっておりそこでほろ苦いコーヒーを啜った。

 柔らかな音楽が流れていた。

 少し暗い店内。夜でもないのに少し肌寒かった。


 「そう言えば、人間がなんかやってたと言ってましたが、魔王がなんか企んでる……みたいな噂でもいいので聞いた事ありませんか?」


 「んー」


 ノヴォルさんとレイキスさんが目を合わせる。


 「特にはありませんな。と言うか十色光魔王(ディクテット)内でもそんな情報共有しませんしな……」


 そうなのか……。


 ノヴォルさんの答えに対してもう一度悩む。

 人間と魔族で協力関係が成立していると言えばそんな気もする。

 フラムの目的はリーガル村周辺の魔族を殺すこと。

 そして恐らくだが人間達の目的も魔族の殲滅。

 利害の一致が人間とフラムの協力関係を結んだと言われればそんな気もしなくもない。

 人間の 魔族殲滅 という目的は理解出来る。

 だが、フラムの目的が分からない。

 何を目的として動いているのか、それが少しも分からなかったのだ。













───ヘルウィーデ 20年前



 「勇者様!」


 男の怒鳴り声が聞こえる。

 俺は今紅茶を啜り、優雅なお昼過ぎを過ごしていた。

 今日は訓練も終わらせ午後からはゆっくりと休もうと思っていたのだが。


 「どうした」


 俺はゆっくりと立ち上がり使者に尋ねる。

 使者はドアにもたれ掛かりながら息を切らしている。

 相当走ってきたのだろう。


 「魔族が……魔族が! 宣戦を布告しました!」

 「なっ?!」


 俺は思わず声を上げた。

 その後王宮に向かうとすぐに詳細を教えてくれた。

 

 宣戦布告したのは炎属性魔王のフラム・ミリュンリルだという事。

 住民の避難を直ぐに開始したこと。

 そして争いの日の事。

 戦争の実行日は1周今後。

 フラム・ミリュンリルの部下総勢約20000の魔族達がヘルウィーデを目指しやってくるらしい。

 場所はヘルウィーデから30キロ離れた高原に移し、軍をすぐさま手配。

 後に戦闘にすぐに移行できるように装備や補給品、補給部隊の整備が行われた。


 凄まじく早い準備だった。

 戦争とへ言うが規模としては何百年も前にあった第1次種族間戦争と比べると小さい物だと言われた。


 第1次種族間戦争。

 それはもう今から数百年も前に実際に行われた星を2つに分断した魔族と人間の戦争。

 何千万という膨大な数の命が失われたと記されている。

 現在人間がまともに暮らせる国は少なく、それ以外のこの星の陸は全て魔族に支配されている。

 最悪の今を作ったとも言えるこの戦争。

 

 フラムが何のために宣戦を布告したのかは定かではない。

 だがいかなる理由であろうとも俺は下がる訳には行かない。

 だって……勇者だから。


 

 勇者。

 俺を争いと強く結びつける鎖。

 固有スキル『勇者』は様々な能力を内包した世界に1人しか持つ事の出来ない神話級のスキル。

 『勇者』所有者が死んだ場合他の人間に引き継がれることとなる。

 俺は歴代の勇者達が頑張ったように俺も勇者として国を守らなければならない。

 それが『勇者』の定めだから。


 

 それから1週間が経った。

 宣戦布告から1週間。

 もう既に戦争が始まっている。

 20000を越える魔族の軍勢に対しこちらは30000。

 数の有利は持っていた。

 だが魔王の前で数の利なんて通用する訳もなく、どんどんと周りが火の海と化していく。

 辺りから聞こえるのは悲鳴。

 当然人間のだ。

 反撃する間もなくどんどんと焼け死んでいく。

 無惨にも殺られていく仲間を見て絶望以外に生まれるものはなかった。


 やがて3万もいた軍はすぐに5000程にまで減らされた。

 俺の弱さが原因か。

 それとも敵の強さか。


 ……いいやそれは言い訳にすぎない。

 まだ負けてはいない。

 だが負けら確定している。



 俺のせいで。

 勇者として認められたくせにその能力を1ミリも使いこなせていない俺のせいだ。

 弱い人間が魔族に対して唯一1人でも戦えるスキル『勇者』を持っていながら誰も助けられない。

 俺がころせた魔族の数だって僅か200程度。


 俺はそこで膝をつき絶望する。

 あたりは燃えて炭で砂漠のようになっている。

 未だに生きている人間達が魔族と戦っている音がする。

 鈍い金属音や魔法の爆破音。

 だがその殆どが魔族からなる音だと知っていながら俺は助けることも出来ず地面に跪いた。


 「哀れだな……人間は……」


 ふと知らない声が耳に入る。

 上をむくと視界は涙でぼやけている。


 「誰だよ……」

 「フラム・ミリュンリルだ」


 こいつが……そうか……。


 俺はそこで少し笑った。

 可能性を感じたからだ。


 今ここでこいつを殺せば……


 そう考えた時にはもう剣を持ち上げていて、その剣先はフラムに向かっていた。


 「遅いな……」


 その言葉に理解を追いつかせている時にはもう俺の四肢は切り落とされていた。

 認識すらままならないスピードで炎の輪っかのような物がフラムの周りに回っていた。

 それが俺の四肢を切り落とした。


 首しか動かせない俺にもう出来ることなんてなかった。

 だがせめて……


 「俺がこんな雑魚勇者で良かったな……俺の固有スキル……いや神話級スキル『勇者』は……保有者が死ぬ度誰かに受け継がれる! ……やがて俺よりも何倍も強い勇者がお前を! ……魔族を絶滅させる!! 」


 「あぁそうか……言いたいことはそれだけか?」


 体からどんどんと血液が流れ出ていくのを感じた。

 それと共に知らされたのは【死】。

 生きている中で1番確実な死を感じた。

 俺は俺の人生が走馬灯のように流れるのを見る。

 傲慢で怠慢な人生だ。

 『勇者』というスキルに甘えて、平和な世界だから何も起こらないだろうと言う甘い考えの元、国に頼りながら楽に過ごした。

 

 ろくに特訓もせずに……。


 はぁ、やり直してぇ……。


 「俺の名は……ベル 勇者ベルだ……」

 「そうか、覚えておいてやる」

 「はっ……不名誉な覚え方をされるんだろうな」

 「そうだろうな」


 そんな敵との軽口ですら交わせてしまう余裕は確実な死を知っているからできたものである。

 すぐ隣に死がいると知っていて……。


 その瞬間俺は意識を失った。

 出血多量での死ではない。

 意識がまだある時、フラムが何かを振りかぶったのが見えた。

 俺はフラムの手によって殺された。

 戦争は一方的なものだった。

 そして敗因の全てが俺の怠慢。

 ここで死んだ勇敢な戦士30000人に俺どうやったら謝れるだろうか。

 

 神様……教えて……くだ……さ……い。








 ……オギャァァァ!


 「生ましたよ!」

 「はぁ、はぁ」

 「おぉ!」

 「これはまたお父様に似た綺麗な白銀の髪だ事!」

 「名前は決めてらっしゃるの?」

 「はい、」

 「「アルマです!」」

 

 痛い。

 呼吸をすると鼻の奥が痛い

 生まれた? ふざけるな……俺はさっき……。

 と言うか体が動かない……。

 それに誰かに抱かれてる?

 俺が?

 なぜ……。


 近くでは声が聞こえている。

 少し籠った音として捉えている。

 目は開けないため何も見えない。

 

 五感のうち触覚、聴覚しか機能していない……なんだ……この奇妙な感じ……。

 まるで……







 転生でもしたかのようではないか……。

という事でアルマの生まれた時のお話です。

次回は勇者アルマの物語です。

なぜ水中都市のときあんなに血眼になって魔族を殺そうとしていたのでしょう。

お楽しみに。

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ディルガスキル



○常用スキル

ㅇ『管轄者』の下

・『物理耐性』・『環境効果無効』

・『身体能力強化』・『炎属性耐性』

・『思考加速』・『意識拡張』

・『生存能力強化』・『座標認識』

・『暗視』・『光属性耐性』

・『再生』・『状態異常耐性』

・『轟音耐性』


○スキル

・『魂保存』・『時間の管理者』

・『切断者』・『虐殺者』

・『消化』・『分身』

・『蒼炎』・『回復』

・『結界創作』・『念話』

・『空間転移』・『白轟雷』


〇属性適性

・『地属性適性』・『炎属性適性』

・『雷属性適性』

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