第65話 街に戻ってみると
「本当にディルガさん……初めてなの?……」
手を振るえさせながら立ちすくむレイキスさん。
だが相変わらず無表情で少し怖い。
どうやら俺が雷属性魔法を行使できている為驚いたらしい。
改めて考えればあたり前か。
万人が苦労してやっとスキルを会得しているのに対して、俺は『管轄者』とかいう有能スキルでその過程をスキップしているわけだからな。
少しづつ近づいてくるレイキスさん。
綺麗な黄色の長髪を揺らしながら歩いている。
まるで夏の野に咲くひまわりのように。
「もう一度聞くけど本当に初めてなの?」
「そうですよ」
俺は小さく頷きながら問に返す。
大きなジト目は長いまつ毛を揺らしながら俺を捉えている。
「他には何かありますか?」
「……」
レイキスさんは下を向き顎に手を当て考え込む。
いいや、込むというのは少し語弊があるかもしれない。
顎に手を当ててほんの僅かな時間が経ったところレイキスさんは答えた。
「もう……特にないわ」
再び上目遣いが発動される。
何気にこれが1番強力なスキルな気がしてきたが……おっといけない。
「じゃぁ、終わりましょうか」
「「ありがとうございました」」
2人の声がハモる。
その言葉が音として消えた時、俺たちは町の方向に歩いていった。
練習地点と町の間にレインとノヴォルさんが共にいる為その流れで一緒に帰ろうと思った。
だがレインはものすごい集中力で何かを作っている。
なんだあれ……岩?
レインは岩と岩をくっつけて動かしていた。
大きな岩に乗った小さな岩をまるで生き物の関節のように。
「そう! できたじゃろ!」
「ふぅ……はい!」
岩がお礼をするかのように動いた瞬間、接着が剥がれたかのように崩れ落ちた。
レインは後ろに手を付きながら座っている。
大きく胸を動かしながら深く呼吸を整えている。
「おっ! ディルガさん!」
どうやらノヴォルさんがこちらに気づいたようだ。
俺は手を挙げてこたえる。
「どうじゃった? 修行の方はやはり難し…」
「出来ました!」
「はぁ?!」
「流石は……はぁ、ディルガ殿!」
ノヴォルさんは身を乗り出してリアクションをとる。
オーバーと言えばオーバーだが、レイキスさんの反応を見る限り普通の反応か。
レインも麻痺してるな。
「おじぃちゃん……この人やばいよ」
あの、聞こえてますよ?
レイキスさんは小声でノヴォルさんに耳打ちをする。
前世でも自分の悪口を聞き逃さない地獄耳だったからな。
いや、聞きたくなくても聞こえてしまう頻度で言われてたのか?
何故だろうか胸が苦しい。
『再生』が機能していないのかな……。
俺は心の中で現実逃避をする。
スキルで『現実逃避』とかねぇかな……。
「あの方は元々そうじゃ」
おーい、ノヴォルさんも聞こえてますけど?!
わざとか?!
全く……本当に現実逃避するよ?
会得してるならせめて『念話』でやってくれよ。
ノヴォルさんとレイキスさんがコソコソ話しているので俺はそこで疲れきっているレインに話しかける。
「レインは何してたんだ?」
そう聞くとレインは顔を上げ見つめてくる。
するとそこにある岩を指さして、
「これを人形として動かそうとしてたんです」
「人形?」
「見てみたいかね?」
とノヴォルさん。
「はい、ぜひ」
「俺からも、もう一度お手本を」
するとノヴォルさんは立ち上がり魔力を周囲に放出していく。
それがそこら辺の砂や石に干渉していく。
少しづつ形が整えられていき、やがて人型となった。
数にしておよそ30の土人形が周囲を歩き回る。
一つ一つの関節すらも精密に作られ、操作されている。
なんて制御能力……。
レインはさっき1つの関節を動かしてたよな……。
恐ろしい程の鳥肌が立った。
1つの個体につき約15箇所程の関節がある土人形を30個も同時に操っている。
しかも個々が自我を持っているかのように違う動きをするのだ。
それを目の当たりにしてビビらない方が怖い。
「すっ、すげぇ」
喉からは思わずその声が漏れてしまった。
本当にこれは凄い。
レイキスさんのゴーレムと似ているがあきら何用途が変わってくる。
力の強力なゴーレムは力作業から戦闘まで、ノヴォルさんの土人形は運搬や雑用、それから戦闘にも応用できる。
「『操り人形』というこのスキルをレインさんに教えていたんじゃ」
「なるほど……」
「まだまだ出来ていませんが」
レインが控えめにそう言う。
1つの関節に苦労するレインに対し、まるで瞬きでもするくらいの感覚でちょちょいとこなしてしまったノヴォルさんとの差に気づいてしまったのだろう。
「レインさんならすぐに出来ますよ。1度スキルを会得してしまえばこっちのものですから」
落ち着いた声でノヴォルさんがフォローする。
レインは少し報われたような表情を浮かべた。
「では帰りますのじゃ。美味しいご飯をご馳走しますぞ」
ノヴォルさんのその言葉を聞いてレインは飛ぶように喜んだ。
多分やっと帰れる事じゃなく、後半の 美味しいご飯 に喜んでいるのだろうが。
まぁどちらにせよ俺も何か食べたい気分だ。
腹が減らないとはいえお菓子の時間になれば誰だって食べたくなるだろう?
俺達は軽い足運びで町へ向かった。
───リガリス
「あれ?」
俺は門を潜った時町に違和感を感じた。
なんか……盛んになってる?
実際町は始めてきた時より人通りを多く、皆が笑顔で満ち溢れている。
そして何より……
「明るい!」
町が以上に明るかったのだ。
始めてきた時の少し不気味で薄暗い感じとは全く違く、明るく元気な様子だ。
急にどうしたのだ……
「町ってこんなでしたっけ?」
レインも同じ事を考えていた様だ。
「ん? あぁレイキスが意識を取り戻したからな」
「どういう事だ?」
「レイキスがこの町の電気を全て生み出し、管理しているものじゃから、レイキスがいなかった時は皆暗い中で生活してたのじゃ」
なるほどな……。
来た時はレイキスさんが意識を失っていた為に電力が供給されなくて、暗い町のようになっていたのか。
「ではこちらへ」
久しぶりに口を開いたのはファムさん。
手を添えながら道を案内する。
できるだけ人の通りの少ない道を選んでいるようだったが、全然人はいて、滅茶苦茶話しかけられた。
え? 誰が?
もちろん……
ノヴォルさんとレイキスさん。
くそ!
「お目覚めになられて本当によかった!」
「ノヴォル様もお体にお気をつけて……」
なかなかフレンドリーな住民たちに対し心優しく返す2人の魔王。
これも仕事のうちなのだろう。
それがあるから転移魔法を使わなかったのか。
……それで……
なんで俺は話しかけられない?!
「レイキス様をお助け下さりありがとうございます!」
とか、
「我らをお救い頂き感謝で胸が張り裂けそうです……」
とか!
なんで無いんだよォ!
住民たちは俺をファムさんとツァムさんと同じく護衛としか思われていない。
くそっ!
「おにぃちゃん達もお疲れ様!」
へ?
話しかけてくれたのは髪を上でまとめる小さな女の子。
ペロペロキャンディーのような物を持ち口に咥えながら俺達に声をかけてくれた。
唯一の存在に意識が全部もっていかれそうになった。
ファムさんとツァムさんはなんとも思っていなさそうだ。
冷静沈着。
この少女が暗殺者でも完全に対処できるように気を張っている。
誰も信用していない。
そう言う雰囲気だった。
そんな調子で30分くらい歩き続け目的だと思われる喫茶店に着いた。
え? 何?
魔王って喫茶店好きなん?
リガさんも行ってたな……。
次回、目的の為に
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ディルガスキル
○常用スキル
ㅇ『管轄者』の下
・『物理耐性』・『環境効果無効』
・『身体能力強化』・『炎属性耐性』
・『思考加速』・『意識拡張』
・『生存能力強化』・『座標認識』
・『暗視』・『光属性耐性』
・『再生』・『状態異常耐性』
・『轟音耐性』
○スキル
・『魂保存』・『時間の管理者』
・『切断者』・『虐殺者』
・『消化』・『分身』
・『蒼炎』・『回復』
・『結界創作』・『念話』
・『空間転移』・『白轟雷』
〇属性適性
・『地属性適性』・『炎属性適性』
・『雷属性適性』




