第63話 修行
俺たちは今外の砂漠にいる。
地王砂漠。
地属性魔王ノヴォル・レクティが支配するこの広大な砂漠の中心で俺達は魔法の練習をしていた。
なんの魔法か。
地属性魔法を得意とするレインは地属性魔王のノヴォルさんに指導してもらっている。
地属性魔王に指導してもらえればより強力な地属性魔法が放てるはずだ。
そして俺は現在習得できていない雷属性適性を会得する為雷属性魔王のレイキス・インフィジルドさんに教えてもらう。
レイキスさんは少しいかつい名前だが可愛らしい少女だ。
魔法の練習もきっと……
「って! なんじゃこりゃぁ?!」
「ゴーレムよ」
俺の目の前には鉄のように光沢する大きな人型の物体。
いや人型と言うには大きすぎるな。
大きな岩がくっついて無理やり人型を成しているような感じだ。
ゴーレム?!
ゴーレムってあれだよな……RPGとかにも出てくる岩の怪物みたいな……。
いや、めっちゃ鉄っぽいが?!
「落ち着いて、これは鉄の塊に魔力と電気を流して操っているの」
「いや! 落ち着けるかぁ!」
ゴーレムは俺を殴り始める。
重い打撃は地面に轟音と共にへこみを作っていく。
動きは決して早いとは言えないが普通の冒険者なら一撃で ブチュ だろうな。
安易に踏まれて死ぬ様子が頭に浮かぶ。
《『蒼炎』で溶かしちゃいなさい!》
ゴーゴー!
と脳内で叫ぶ大賢者。
俺も初めはそうしようと思ったがゴーレムの周りが魔力で強化されているのを見て断念した。
恐らく傷一つつかない。
同様に『切断者』などの物理攻撃も恐らく無効化される。
こういう場合操っている本人を叩くのがオーソドックスだが本人に行ったところでだ……。
なら……。
俺は周りに『結界創作』で行動不能結界を展開する。
行動不能結界内部での魔力を持つ万物の運動を禁止した。
するとすぐにレイキスさんは破って動いてきたがゴーレムは動かない。
レイキスさん本人は解けているのに対して、ゴーレムは意識を持たない。
恐らくそれが物体としてレイキスさんとの繋がりを切ったのだろう。
レイキスさんの魔力は供給されているのにゴーレムはピクリとも動かない。
さぁ、これをどうしようか……。
俺も魔力が切れる前に……。
そうだ。
(管轄者、水中都市の1番外の結界の外側に座標を合わせて転移魔法を使う。演算頼めるか?)
〈私は許可制ではありませんよ。どうぞ何発でも連発してください。全て私が演算処理しますから〉
頼もっしぃ!!!
誰かとは大ち…
《あんた今私の事……》
(なんの事だ?)
いやいや、こんな奴に構うな。
まずは魔力を集めてゴーレムの頭上に魔法陣を展開。
それを転移門にする条件は管轄者が一瞬で演算してくれる。
後はその魔法陣の中にゴーレムを放り込むだけ!
すると魔法陣はゴーレムを取り込み、転移させた。
それはそれは深い海の底。
深いだけならば生きて来れたかもしれない。
だが水中都市と地王砂漠との距離は到底計り知れない距離がある。
この長距離でゴーレムと繋がりを保てたならばそれはもう魔王の次元をとうに超えている。
俺は行動不能結界を解除する。
硝子の割れるような音を発しながらキラキラと薄い青の結界は崩れていく。
「お見事……」
レイキスさんは相変わらず真顔でそう言う。
ノヴォルさんが教えてくれたのだが小さい頃からゴーレムなどと一緒に居た為に感情の起伏があまりないらしい。
それでノヴォルさんはレイキスさんが意識を取り戻した時に声を上げていたことに驚いたらしい。
正確に言えばノヴォルさんはレイキスさんが7歳の頃に出会いそこから2人でいるらしい。
そして2人が出会って10年後レイキスさんが17歳の頃に魔王となったようだ。
17歳と言えばまぁまぁな年にも聞こえるが、人間とは違い何百年も生きる魔族にとってはまだ体も大きくならないし、魔力量も少ない、そんな状態で魔王になったのだ。
それはそれは驚いたらしいだろう。
そしてノヴォルさんは嬉しかっただろう。
17歳で神話級スキルを会得か……俺まだ持ってないのに。
いや俺転生してきて1年もたってないからな! うん!
決して言い訳をして現実逃避をした訳では無い。
決してだ。
「それで……今のは何だったんです?」
「今ので何となく雷属性魔法が分かったかな」
「いや全然?!」
教えるのは苦手らしい。
───レインとノヴォル
ディルガ殿と離れて5分ほど経ったところでノヴォルさんが止まった。
どうやらここで地属性魔法について教えてくれるらしい。
「さぁ『操り人形』と言うスキルを知っておるかの」
いきなりだな。
「知らないです」
「レイキスが作るゴーレム程ではないが大量の土人形を作り出す魔法じゃ。これを会得してもらう。まぁ見ておれ」
ノヴォルさんは杖を強く握ると魔力を周囲に広げていく。
魔力はそれぞれが独立した意識を持っているかのように別れそれぞれ土に干渉していった。
モコモコと蠢き出す土。
そこから50から80センチ程の土の塊が生まれる。
土の塊はそれぞれが似て非なる形に変化していく。
まるで人のように。
「おぉ!」
「これは地属性魔法でも難しい魔法じゃから、これが出来れば地属性魔法は殆ど網羅したと言っても過言ではないぞ」
ノヴォルさんは喋りながらその難しい魔法を使い土の塊を人形のように動かした。
やや不器用な動きではあるが戦闘ができないほどでは無い。
これを習得出来れば幻影魔法と混ぜて実態の人形と偽物の人形のややこしい集団で敵を翻弄してやる。
これなら流石のディルガ殿でも……。
「これが『操り人形』じゃ」
「素晴らしいです! 教えて下さい!」
「あぁ」
そう言うと1つ以外の人形は砂になって崩れていく。
たった一つ残った人形は俺達の方に歩み寄ってくる。
てくてくと歩く姿は子供みたいで可愛かった。
「こいつを見てくれ」
「はい」
するとノヴォルさんは細かいところまで人形を説明していく。
これを元に俺も実践していく。
しっかりと観察していくと気づく点もいくつもあった。
関節に送る魔力と全体に送る魔力では量など様々な点が違っている。
非常に複雑な仕組みになっていた。
これを完璧に、しかもあの数を行使していたノヴォルさん……やばくね?!
「では、輪郭などは考えなくていいから、関節を作ることだけ意識して作ってみるのじゃ」
俺は楕円を6つ作り1番大きな物を胴として頭、両手、両足と着けていく。
まずは肘や膝などの関節は考えない。
首、肩、足の付け根、大きな関節を作っていく……。
「ダメだぁ……」
「うんまぁそうなるよね」
やっぱり1回ではどれだけ難易度を落としても無理だ。
まずは関節の動きから練習しよう。
俺は2種類の土の塊を作り出す。
大きなのと小さいの。
大きい方を下にして小さい方を頭として首を作る練習だ。
上に乗っけるという所までは出来る。
だがその関節を動かすことが出来ない。
崩れないように上の土に魔力を込め動かしていく。
やっと小さくお礼ができた程度で崩れてしまった。
「そんな感じです。それをひたすら繰り返して、さらに関節を増やし滑らかに動ける様に練習してみて下さい」
「はい、努力します」
───ディルガ、レイキス
「はぁ、はぁ」
激しく息を切らしている。
魔力がギリギリの所まで耐えている。
レイキスさんは
「沢山見て、沢山触れて真意に近づくの」
そう言って俺に大量の雷属性魔法をぶち込んでくる。
ゴーレムから始まり、レイキスさんの周りをブンブンと高速回転する大きな斧や、上から落ちてくる雷に反応するとか、単純に魔法で発生した雷を俺に撃ってきたりとか。
こんなの無茶だ……死んじゃうよ。
可愛らしい見た目して鬼教官だな。
その鬼教官は背後でバカでかい斧を回転させながらこっちを見ている。
怖いからそれやめてくれよ。
百聞は一見にしかずとは言うがもうこれはくらっちゃってんのよ!
見てるだけじゃないのよ!
「もう終わり?」
やめろよそれ!
弱いキャラが魔王に遊ばれてる時のセリフじゃねぇか……。
……いや合ってるわ!
《あんたそれ恥ずかしくないの?》
(いいや全ぜ……いやお前なんで心読んでんだよ……)
《無茶苦茶漏れてるわよ》
あらヤダ……。
まってレイキスさんが歩み寄ってくるんだが?!
「さぁ、練習を再開しましょう」
いやその眉無しの無表情で鬼教官するのやめてよ!
感情読めないから逆に怖いって!
「実践してみましょう」
いや初めからやれやぁ!
この地獄のような修行はまだ続くようだ。
んーちゃんと面白くできてるかな……特に面白いシーンが思いつかないのは何故だろうか。
我ながら不思議だ。
そんな俺を☆やブックマークでの評価で励ましてくれている方本当にモチベーションに繋がっています!
ディルガスキル
○常用スキル
ㅇ『管轄者』の下
・『物理耐性』・『環境効果無効』
・『身体能力強化』・『炎属性耐性』
・『思考加速』・『意識拡張』
・『生存能力強化』・『座標認識』
・『暗視』・『光属性耐性』
・『再生』・『状態異常耐性』
○スキル
・『魂保存』・『時間の管理者』
・『切断者』・『虐殺者』
・『消化』・『分身』
・『蒼炎』・『回復』
・『結界創作』・『念話』
・『空間転移』
〇属性適性
・『地属性適性』・『炎属性適性』




