第55話 蠢き
魂の移動実験後レインが直ぐに駆けつけてきた。
理由を聞くと一瞬ディルガ殿の気配が無くなったから、だそうだ。
まぁ半死の状態だったからな……。
そのままレインは冷や汗をかいたままリーガル村へ帰った。
「ディルガさん! おしさしぶりです!」
久しぶりに見る門番の顔。
え? こいつやっぱり年中無休でやっとるん?
まじでブラック企業だ……。
「おぉ! ディルガさん! 久方ぶりですなぁ!」
冒険者ギルドに入ると色んな冒険者にそう言われた。
ティアさんにリーフルさんにも会った。
2人は相変わらず脳筋とイケメンだった。
そしてレインの人型を見た事がない冒険者が殆どでそれも同時に驚いていた。
ちなみにスーニャさんにも会いたかったのだが今日ははいなかった。
何をしているのかは知らないが、下手な事するとリゼさんが嫉妬しそう……という喜ばしく、俺に都合の良い妄想に走った。
「ヘックチッ」
「大丈夫ですか? リゼ様」
しばらく汗臭い冒険者達にもみくちゃにされた後はいつもの宿舎に戻った。
新品の荷物を置き……
「いや、俺達休暇取りに海に行ったのに全然休めてなくね!」
荷物を床に投げつけた。
ケースが開き床に衣服がばら撒かれる。
あーあ、と言わんばかりの顔を浮かべるレイン。
だって休みたくて海に行ったのに、いじめられてる亀を助けたら急に「水中都市に連れてってやる」
とか言われてついて行けば死にかけるし……。
まじでどんな休日だよ。
海でなんか一瞬たりとも遊んでいないぞ?!
俺の水着は寂しがってるぜ。
まぁすごい神秘的な世界も見れたし、リゼさんにも出会えたし、それに結果魔法を会得できたし。
得だっただろ。
俺は頑張って自分の行いが得になるように頑張って頭を回した。
稼ぎの悪い冒険者に長期休暇なんてある訳もなく明日の朝依頼が更新される頃にギルドに行こうと思う。
帰った時はまだ昼だったのでレインと美味いもんでも食いに行こうかな……。
「レイン、なんか食いに行か」
「行きます!」
「はやいなっ!」
キラキラと光る目で俺に訴えかける。
本当は海で魚でも食おうと思っていたのだが、何もせずに帰ってしまったので魚なんて食えるはずも無い。
「何食いたい?」
「肉食いたいです!」
レインは身を乗り出して大きな声で叫ぶ。
はいよ、わかったよ。
あれ食いに行こう……あの出店のおっちゃんの肉。
美味かったなぁ。
あの時はつい食べすぎて2000リーも持っていかれたが今回は大丈……
「3000リーですね」
「はぁ?! 嘘でしょ?」
「いや、嘘じゃないです」
「はい…払います」
結局食べすぎた。
1個500リーの肉を2人で6つ、1人3つという量を食べてしまって金をむしり取られた。
まぁそれだけ美味しいし、30万リーあるからある程度は余裕はあるのだが……。
スドォォン!!!
なんだなんだ?
聞こえてくるのは悲鳴。
人の流れに統一性が出てきた。
一方向に急激な流れができている。
一体逆側で何が……
「レイン」
名前を呼びアイコンタクトを取りすぐにそちらへ向かった。
「すいません! とうしてください!」
邪魔だ……。
くそっ急用かもしれないのに……。
『身体能力強化』!
それから俺は周りの家の屋根に乗り走る。
レインをジャンプする時に抱えて屋根の上を走る。
そこから見えた光景はいつものリーガル村と変わりはなかった。
ただし一部を除いて。
地面には大きなヒビができている。
クレーターのように凹んだ地面を中心に。
そしてその時クレーターの中心には1人の男が立っていた。
「何者だっ」
男は俺をみた。
だが口は一切開かない。
「いや、なんか喋れよ!」
男は深くため息を零した後……体の形をグチャグチャと崩していく。
「「は?」」
俺の声はレインと重なった。
グチャグチャになったの体はやがてハンドスピナーのような形になり周りに鋭い刃を付け回転し始めた。
回転スピードは決して早くは無いものの恐らく『思考加速』が無ければ確実に死ねる。
回転しているハンドスピナーはどんどんもこちらへ近ずいてくる。
まぁとりあえず。
「とりあえず止まろうか」
『結果創作』で行動不能結果を展開する。
対象はそのハンドスピナーに限らせた。
結果魔法を戦闘中に使う練習もしたかったのだが、やつの情報をもう少し得ていた方がいいと思ったからだ。
ハンドスピナーはすぐに止まった。
明らかに俺よりは格下だったため結界魔法を無効化できる訳もなくあっさりと止まった。
地面に落ちたハンドスピナーはピクリとも動かない。
『座標認識』には普通に魔族の感じで映っている。
だが体の全てが魔法元素出できている。
まるで分身体だ。
誰かのスキルによって作られたのだろうか。
ん?いや待て……。
「離れろ!」
俺はすぐさまそう言葉を放った。
ハンドスピナーの魔力が中で暴走し始めた。
行動不能結果の中でも思考はできる。
自爆をするつもりなのだろう。
ハンドスピナーはライトのように光り始めやがて大きな音を出しながら爆発した。
黒い煙が空へ昇っていく。
地面はさらに掘り起こされた。
こいつは一体何がしたかったのだろうか。
生き物だったのか?
魔法元素出できていたし命は宿っていない様に見えたが……。
───???
「リーガル村へ向かわせたのが自爆反応を示した」
暗い部屋で目を瞑っている男がそう呟いた。
男は目に右目に傷を負っているようでそれ以外にも顔には大きな切り傷の様な跡がある。
凹凸の激しい外人のような褐色肌の顔。
太い眉毛。
深い堀の下で光る目は茶色だ。
背中には大剣を背負っている。
「リーガル村? あんな小さな村が?」
そう返すのは短髪の男。
黄色がかった色の髪をしている。
少し大きな服を身にまとっている。
さっきの奴とは対照的に細い体をしている。
両腰に短い剣を装備している。
「あぁ……信じ難いがリーガル村に目的、いや目的以上の天才がいる可能性がある。……その他の町に向かわせたやつはその場で魔法元素に還す。そしたらすぐにリーガル村へ向かう」
「はっ。……人を集めましょうか?」
「いいや大丈夫だ。俺たち2人で行くぞ。ノヴォル様には俺から伝えておく。準備にかかれ」
「御意……」
───リーガル村
朝が開け俺は地獄の時間に突入する。
「おーい! レイン! 朝だぞー!」
レインを起こす時間だ。
こいつは本当に朝が弱い。
今日は冒険者ギルドに新しい依頼を受けにいく予定なのだが、当然レインが起きるはずも無く結局行くのが遅くなって難易度の高い依頼しか残っていないのだ。
それは嫌なので今日はいつもよりも早く起こしにかかる。
具体的には30分程度。こんなんで大丈夫なわけは無いのだがいつも1時間以上起きないから、いつもよりも30分は短縮される……はずだ。
「おーい!」
レインを揺さぶりながら起こしにかかる。
いつもの熊の姿では無く人型だから揺らした時の幅は広いはずなのだがいつも通り一切起きない。
30分が経過した。
やっと目を覚ました。
ここから第2フェーズだ。
起きるのを拒絶するレインを頑張って納得させる。
嫌がらないように、そして二度寝させないように。
少しでも意識を覚醒させたこのタイミングを失わないように……。
この前第2フェーズに移るタイミングで少し放置したらリセットされたのはいい思い出だ。
いや良くねぇよ!
さっさと起こすぞ!
(管轄者……『虐殺者』を弱めに解放)
〈りょっ、了解です〉
『虐殺者』……恐ろしいスキルだ。
物理攻撃時に精神にもダメージを与えることが出来るスキル。
あの炎属性の魔王、フラム・ミリュンリルにも効いたスキル。
それの効果を薄めてレインの皮膚を少しつねる。
「がはっ!」
恐怖や絶望など負の感情がレインの精神を襲う。
具体的にどんな感覚なのかは知らないが辛いはずだ。
レインが直ぐに起きたんだ。
効果の信頼は深い。
(管轄者きっといて)
このスキルは本当に触れるだけで精神ダメージを入れてしまうので基本的にはきっているのだ。
「おっ……おはようございます……」
レインがやっと起きた。
目は半開きだ。
目を手の甲で擦りながら曲げた膝にもう片方の腕を乗っける。
「飯食って冒険者ギルド行くぞ」
「了解です」
それから外の出店でパンを買って食べた。
サンドイッチのようになっていて、中には何かの葉っぱと何かのハム状の肉。
なんか恐ろしいが非常に美味しかった。
冒険者ギルドに着くともう簡単な依頼や人気の依頼はもう取られていた。
毒蜘蛛の討伐。
数80。
そんな無茶な依頼ばっかりだった。
「よし、これにしよう」
俺は目の前にあったある依頼を手に取った。
新章開幕!
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ディルガスキル
○常用スキル
ㅇ『管轄者』の下
・『物理耐性』・『環境効果無効』
・『身体能力強化』・『炎属性耐性』
・『思考加速』・『意識拡張』
・『生存能力強化』・『座標認識』
・『暗視』・『光属性耐性』
・『再生』・『状態異常耐性』
○スキル
・『魂保存』・『時間の管理者』
・『切断者』・『虐殺者』
・『消化』・『分身』
・『蒼炎』・『回復』
・『結界創作』・『念話』
〇属性適性
・『地属性適性』・『炎属性適性』




