第53話 最後にやること
リゼさんの言う1つとはなんの事なのか。
リゼさんは少し赤らめながら指をモジモジしている。
「その……良かったらけっけけけ……」
け?
結婚なら喜んでするが……
「結界……結界魔法!手伝ってください!」
ん、結界かい!
帰って来たのは俺の欲しかった返事じゃ無かったが……。
「別に平気だぞ、何すればいい?」
「本わ当ですか! では手を貸してください!……」
ベットの上でリゼさんはその絹のような手を出した。
その手を握ると暖かい体温を感じた。
なんだか少しづつ暖かくなっていくような感じがしたがおそらく気のせいだろう。
そうしてるとリゼさんは目を瞑り結界魔法の演算を開始した。
俺の手を伝いリゼさんの体に魔力が移動して行くのを感じる。
殆ど枯れていたリゼさんの魔力は『座標認識』では少しづつ回復し、その殆どが結界魔法として使われている。
その魔力は伸ばされ結界の曲線を描き広がっていく。
まるで大きな爆発のような速さと形で。
数秒もすると第4結界を展開できたようだ。
リゼさんは顔を上げ少し微笑んだ。
病院の窓から入る淡い光が俺たちを照らした。
宙を舞うホコリがキラキラと光を反射して光っている。
まるで蛍か何かのように。
世界はそこで数秒止まった。
否、
俺たちの世界が数秒止まった。
否、
時間は止まっていない。
俺達が止まっていた。
時の流れすらも忘れてお互いを意識していた。
「ディルガ殿?」
「あっあぁ、すまん」
その数秒を一撃で壊すレインの一言。
その一言から僅か1秒強の刹那の時間で俺達は目線をまた逸らした。
「じゃぁフパスに帰りの手筈を揃えておくように伝えておくわ」
「あぁ、ありがとうごさいます」
リゼさんはまた微笑むと優しい声でそう言った。
「えっと……それと……もう1ついいですか?」
「えぇ、なんでも言って。迷惑をかけたんだもん。出来る限りを尽くすわ」
リゼさんは目をキラキラとさせ俺の言葉にそう返した。
「その……」
「うん」
言いにくい。
中学、高校で小便漏らして母さんに言う時のような感覚。
いや別にそんな体験無いんだけどね。
「階段を守る2人の魔人を……」
そこまで言いかけた。
そう、そこまで言えたのに扉が物凄い速度で開いたと思うとその奥には2人のガタイのいい人魔人2人がたっていて、その顔は血液が登り血管が浮きでてすごい怒りの表情を浮かべていた。
「リゼ様! 御無礼失礼! そいつは侵入者です!」
「そうでございます! 我らを気絶させてまでここにきたのです!」
あっちゃぁ……。
眉を歪め疑問顔を浮かべるリゼさん。
それに対し息を荒くして目を開く魔人2人組。
「ディルガ様に対しての不敬を詫びなさい」
「いやでも……」
「あなた達よりディルガ様の方が何十倍も強い。それはディルガ様と戦ったあなた達なら分かることでしょう? まぁ一方的なものだったとは思いますが……」
リゼさんは先程とは打って変わりあの時のような冷酷な眼差しと冷たい声で2人に喋りかける。
2人は最初の勢いを無くしていく。
赤子のように意図も簡単に丸くされる2人。
いや赤子の方がよっぽど大変だろう。
「納得がいかないならここでディルガ様と戦って一撃でも当てられたらあなた達の勝ちにしましょう」
「は?!」
リゼさん?!
俺は思わず声を上げてしまった。
病室で2対1で喧嘩なんて色々と問題がある。
それにリゼさんはなんでそんなに笑顔なんだよ!
「……ちっ!」
え? 今舌打ちした?
1人が舌打ちをしてもう1人と目を合わせる。
そのアイコンタクトのほんの僅か数秒後薙刀のような武器を俺に向けて走ってきた。
だが正直遅すぎた。
初めは病院でそんなもん振り回すなと思っていたが実際物の多い病院で薙刀のような長い武器は逆に不利になる。
現に振るのではなく刺そうとしている。
俺は一瞬で薙刀の届かない間合いに入り込む。
奴はまたも反応すらできていない。
病室に突如として突風が吹く。
その風が吹く少し前には俺の手は魔人の腹に当たっている。
くの字に湾曲した1人の肩を掴み一回転する。
遠心力で外側に飛ぼうとする奴を奥でこちらを見ているもう1人に投げる。
もう1人は薙刀をこちらへ向けていない為体に直接当たった。
壁に打ち付けられた2人を目尻におく。
少し顎を上げながら2人を見下ろして手をパンパンとホコリを払うように叩く。
首に力が入っていない1人を支える1人。
「よくも゛!」
まだやるか……。
俺は手を開き手のひらをやつに向ける。
魔力を少しづつ込めていく。
弱ってる奴にはどれ程の威力が最適なのか分からない。
まぁこんくらいかな……
集めた魔力を収束させていく。
収束された魔力に熱エネルギーを込め炎属性魔法にしようとした。
パァンッ!!!
「そこまで!」
鋭い音が病室に響く。
その音はリゼさんの手から出ているようだった。
俺達はリゼさんの声を聞き攻撃態勢を解く。
「これがディルガ様である証拠よ、持ち場に戻りなさい」
その言葉を聞いた彼らは有無を言わずに顔を少し下げて部屋を出ていった。
恐らくこのまま持ち場に戻るのだろう。
俺は病院を囲む防御結界を解く。
もう必要は無いと思った。
いや、ボコされた彼らが負ける可能性もあるが……。
「ごめんなさいねぇ」
「いやいや、こっちのやった事だし……」
「さすがですディルガ殿!」
場に一瞬の静寂が走る。
俺は直立したまま、リゼさんはベットの上で座ったままこちらを見ている、レインはベットの横で俺の事を見ている。
この病室の中で2人の意識が完全にリンクしていた。
「では、俺達もここで」
「うんありがとうございます……また遊びに来てくださいね。いつでも歓迎致します!」
リゼさんはそう言いながら立とうとする。
両手を体の後ろで付き体を起こし膝を使い起きようとする。
「リゼさん! ゆっくりしていて下さい」
「情けないわね……命の恩人の出発に付き添えないなんて……」
寂しそうな顔でリゼさんはそう言った。
その顔には温度が無いのではないかと思わせるほどに冷たい表情だった。
「レイン……先に行っててくれ」
「なぜです?」
レインは俺の言葉に疑問を持ってしまった。
少し首を傾けそのサラサラな髪を揺らした。
「いいから、すぐ行く」
レインは腑に落ちない様子だったが扉を開け出ていった。
俺は『座標認識』でレインが去っていったのを確認してリゼさんの元に近ずいて行く。
ゆっくりと歩いているのだが足が重い。
別に嫌な事なんて何も無いはずなのに……。
ただ……
温めてやりたい。
俺はリゼさんの前に着くと深く深呼吸をした。
してもしなくても変わらないはずなのに。
リゼさんは冷たい表情で俺を見上げる。
上目遣いは長いまつ毛が目立ち余計に美人さが極まった。
俺はしゃがみ目線をリゼさんに合わせる。
手を頬に添えると冷たい温度を感じた。
少しリゼさんの瞬きが早くなる。
そしてゆっくりと顔を近ずけていく。
よし、『座標認識』には誰も映っていない。
邪魔は入らない。
リゼさんは目を閉じて身を任せる。
俺はそっと前髪を横によけおでこにキスをした。
3秒ほどだろうか、少しだけの時間だったがリゼさんの体温は確実に上がった。
周りには誰もいない。
リゼさんは目を開けると
「この続きはまた今度ですね」
穏やかな声でにこやかに笑った。
顔を斜めに傾けて少し歯を見せて。
窓から差す光が笑顔と合わさってそこはどんな世界のどんな場所よりも絶景が広がっていた。
リゼさん……可愛い……。
☆☆☆☆☆で評価してくださると主は飛んで喜びます。
ブックマークへの登録も良かったらしてください!
ディルガスキル
○常用スキル
ㅇ『管轄者』の下
・『物理耐性』・『環境効果無効』
・『身体能力強化』・『炎属性耐性』
・『思考加速』・『意識拡張』
・『生存能力強化』・『座標認識』
・『暗視』・『光属性耐性』
・『再生』・『状態異常耐性』
○スキル
・『魂保存』・『時間の管理者』
・『切断者』・『虐殺者』
・『消化』・『分身』
・『蒼炎』・『回復』
・『結界創作』
〇属性適性
・『地属性適性』・『炎属性適性』




