第51話 赤い復興
勇者は魔法陣に吸い込まれて行った。
その場には既に人間など1人もいなかった。
人気のない町はただひたすらに不気味だった。
「転移魔法ね……なぜあんな高等魔法を……」
「転移魔法?」
「えぇ、魔王たちでも行使出来るのはほんの少しだけですよ。 そのくらい難しい魔法で、発動までにとんでもない時間が掛かるんです。 なので大体は数日前から魔法の詠唱、演算を少しづつして当日に実行のような形がオーソドックスなんですけど……いやオーソドックスも何もそんな使う機会はありませんけどね」
リゼさんはそう説明する。
魔力が尽きているので頭が重い。
俺は思わず倒れ込む。
レインがすかさず俺を持ち上げる。
安全を確認するレイン。上から心配そうに見てくるリゼさん。
少し離れたところではフパスさんら水中都市軍の方々が待機している。
「フパス! ディルガ様とレインさんを病院に! 建物の崩落の可能性が残る今は住民はそのままビルで待機! 私は結界を見てくる」
リゼさんは右手を上げ全体を指しながら指揮を執る。
その姿は非常に美しくかっこよく、まるで薔薇の花のようでその青く綺麗な髪さえも赤く染まって見えそうだ。
それに対し分身体さんは息を素早く吐きながら返事をする。
「はっ!」
俺は力の入らない体に流れる魔力の流れを意識する。
血液と魔力の循環速度をあげていく。
全身に魔力を運び『再生』を促す。
しかし魔力の殆ど切れた現在、気持ち程度としか言いようのない回復量だ。
フパスさんは俺の事をおぶり少し跳ねて位置を調節した。
それが物凄い体に響いたが声も出ないので文句も付けられなかった。
おんぶするフパスさんを見てリゼさんは何故か少し羨ましそうな顔でこちらを見ている。
まるで兄の食べているお菓子を見る妹のようだった。
可愛い……ぜひ嫁にもらおう。
俺一応お礼をされる為にここに来たのだがなぜ死にかけてんだよ……。
お礼はリゼさんでもいいのだよ?
てかそもそも俺海に休暇に来てたんだけどなぁ……。
全然休暇になっていない……。
一体何回死にかけた?
俺はフパスさんの背中でゆられながら少し目を閉じた。
暗い世界はなんだか少し安心した。
フパスさんの体温を感じる距離で俺は眠りについた。
辺りの町はボロボロだ。
勇者はをなのる謎の人間のとディルガ様が戦った結果だ。
この傷は全て勇者が残した傷だ。
斬撃が具現化され縦物を傷つけて行ったらしい。
レインさんもディルガ様にも迷惑をかけてばかりだ。
上げる頭がない。
水中都市の技術を持ってもてなすはずが傷つけてしまった……。
「ふぅ……」
私は空に溜息を零しそっと目を瞑る。
いやそんな事をしている暇なんてない。
結界を展開する。
第1結界は対生物の結界だったがそれと内部への転移系魔法の禁止を条件として新たに付与する。
そして第2結界には光の遮断による水中都市の隠蔽。
そしてさらに第3結界は人間を弾く結界を張る。
人間が触れた場合魔力をごっそりと持っていかれ私の元に還元されるようにする。
そして1番内側の第4結界(元第3結界)、には厚みをプラスし、さらに内部での人間の魔法の使用を封じ、動きを鈍くさせる。それに加え魔力を段々と私の元へ還元されていくという条件を付与していく。
さらに治癒結界を応用し、魔族、建物、地形などが崩れた場合自動で元の形に戻るように条件を付与していく。
どんどんと複雑になった結界は展開が物凄く難しかった。
でも私は手を止めることなく結界を展開していく。
外側の結界から順に。
ものすごい量の魔力が吸い込まれる。
結界は発動してしまえば『魔法操作』が自動管理してくれる。
私は結界を外から順に展開していく。
複雑な結界魔法は魔力を驚く程消費した。
一つ一つの結界を発動する度体重が少し軽くなるのを感じた。
それ程に物凄い量の魔力を消費していたのだ。
どんどんと握力が吸われ体にも力が入らなくなる。
だがまだ倒れられない。
私は結界を展開しきらなければならない。
私が今どんな顔をしているかなんて分からない。
歯を食いしばり眉を沈め、醜いにも程がある。
それでも彼女の顔はどこか美しく厭戦を思うその顔からは強さを感じた。
第1、第2、第3と展開を終了する。
その頃には魔力なんてもう残っていない。
それでも私は続ける。
水中都市の為に……。
私が手の先に魔力を集めたその時。
あれ?
頭が急激に重くなり平衡感覚も欠如してその場に倒れた。
本当に一瞬の事すぎて手を出すことすらも出来なかった。
私は直立した状態のままその場に倒れた。
少し頭を打った。鈍痛が走る。
でもそれすら感じない程に全身が鉛のように重く瞬きすら出来ない。
目は半開きのまま動かなくなってしまった。
私は誰もいない水中都市の外れで人知れず倒れた……はずだった。
「リゼさん!」
え?
……ディルガ様?
なんで……フパスと病院に行ったはずじゃ?
殆ど開いていない視界から見えたのはがむしゃらに走るディルガ様の姿だった。
体の軸を揺らしまくって足は空回りを続け辛そうな顔でただひたすらに走っていた。
気が付けば視界はボヤけていた。
溢れ出る涙は頬を優しく撫でた。
ディルガ様のはるか後ろにフパスの気配を感じる。
フパスはディルガ様を追いかけているようだが到底追いつけないスピードでディルガ様は走っていた。
ディルガ様との距離はわずか5メートルほど。
その距離は実際一瞬で縮まったのだが、私には30秒くらい長く感じた。
ディルガ様との距離はやがて0になった。
「リゼさん! 」
私を両腕で抱えて大きな声で叫ぶ。
ディルガ様の腕は暖かかった。
その目は涙ぐんでいる様に見えて余計に涙が出てしまった。
私は少し微笑みながら動かない唇を精一杯動かした。
「だっ……大丈夫ですよ……」
その言葉を聞きディルガ様は少し安心した表情を浮かべた。
「心配させんなよ…………」
・・・
死にかけて奪われていたはずの体温が少し上がった気がした。
唇は赤い色を取り戻し、体はほぐれ少し自由を引き戻した。
肩と首を抱えるディルガ様に両手を持ち上げ左右に広げた。
ディルガ様は少し戸惑っていたようだが少しはにかむと優しく両手で私の事を抱き抱えた。
「ディルガ様っ……強いよ……」
柔らかい表情からは自然と声が出ていた。
ディルガ様は私の顔の後ろで泣いている。
隠そうとしているのだろうけどバレバレだよ。
私はディルガ様の背中で交わる手を解き片手で背中をゆっくりと撫でた。
「よしよし……」
その流れのまま頭を撫でた。
少し癖毛のあるディルガ様の髪の毛は赤黒く素敵な色を放っている。
私とは正反対ね。
水のような深い青の私と夕日のように赤みがかった黒のディルガ様。
合わせたら何色になるんだろう。
……いやいや! 何考えてんの私!
青い私の髪に対してさらに頬を赤く染める。
今見られたらまずい……反対色なので赤らめてるのすぐバレちゃう。
私はもう少し強くディルガ様を抱きしめる。
しばらくの間私達は抱き合っていた。
お互いの体が密着して体温を感じるほどの距離でお互いを確かめ合った。
幸せでいっぱいで辛い事なんて忘れていた。
フパスです……。
ディルガ様が
「まずい! リゼさんが!」
っと言って何処かに走って行ってしまいました。
レイン様には先に行っているように言ったのですがディルガ様は話す事すら出来ないほど一瞬で行ってしまわれた。
あれだけボロボロで魔力も殆ど切れているはずなのになぜあんなに早く走れるんだよ。
姿は見えてるのですが足が早すぎて追うことが出来ません。
どんどんと距離が開いていく。
もう息が限界です。
リゼ様がどうしたんですか?……ディルガ様ぁー!
しばらく走ると少し開いた所に着いた。
原点じゃねぇか!
そこはリゼ様の命令を受けた所で、完全に初めの位置に戻って来てしまった。
ん?……
私は目を少し細めてそのに見える謎の塊を眺める。
……?!
目の前には絶句不可避の光景が広がっていた。
……はい帰ろうと思います。
私は足を上げつま先からゆっくりと着き少し跳ねながら音を立てないように去って行く。
おふたりの事は見なかったことにしよう。
うんそうしよう。
本当ならフパスが
「何やってんですか?」
って割り込んで
「いやタイミング!」
ってやろうとしたんですけど流石にね
それとすいません!
忙しくて昼に出せませんでした。
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ディルガスキル
○常用スキル
ㅇ『管轄者』の下
・『物理耐性』・『環境効果無効』
・『身体能力強化』・『炎属性耐性』
・『思考加速』・『意識拡張』
・『生存能力強化』・『座標認識』
・『暗視』・『光属性耐性』
・『再生』・『状態異常耐性』
○スキル
・『魂保存』・『時間の管理者』
・『切断者』・『虐殺者』
・『消化』・『分身』
・『蒼炎』・『回復』
・『結界創作』
〇属性適性
・『地属性適性』・『炎属性適性』




