第48話 人類の希望
───人の国 ヘルウィーデ
まだ雪が残り寒さの消えない冬。
この世界の暦は太陽暦と同じで1年は12ヶ月。
年が明け2ヶ月ほどが過ぎようとしていたある冬の日。
その日は珍しく雨が降っていた。
「はぁ」
俺は暗い空にため息を零す。
「今日は雨か……」
外には雨が降っていた。
これじゃ訓練は出来ない。
家の中で筋トレでもしていよう。
俺は筋トレを始めた。
腕立て、腹筋、背筋、基本的な物からやって行った。
背筋が終わり体幹を鍛えていたお昼過ぎ、
コンコンコンッ
ドアを叩く音がした。
返事をし出てみる。
その前に上裸だったためそこにあったローブを身にまとって。
「はい!」
カギをあけドアを開いてみるとそこにはメイシィさんが立っていた。
傘を指していたので俺はとりあえず玄関に入れた。
傘を閉じて水を払い玄関に入ってくるメイシィさん。
「大丈夫ですか?」
リビングへ案内し暖かい紅茶とお菓子を出す。
すぐに帰るので大丈夫ですよ、と言われたか流石にこれくらいはしないとな。
「それで今日はなんの御用で?」
俺はメイシィさんの前の椅子に腰を下ろし本題に切り出した。
「はい、水中都市破壊計画の日時が決定致しましたのでご報告に参りました」
やっと決まったか……。
これで俺の復讐の第1歩が歩める。
俺はテーブルの下で強く拳を握った。
嬉しかった。
憎たらしい魔族を少しでも殺せると考えたら嬉しくて楽しみで仕方なかった。
「それっていつなんですか?」
「半年後の夏、水中都市を撃ち落とします」
メイシィさんは不敵な笑みを浮かべる。
目を細め口角を上げる。
目は影で上手く見えてなかった。
はやく撃ち落としたい。待ちきれない。
子供の頃誕生日はまだかまだかと願っていた時と同じ気持ちだ。
俺の拳にまた少し力が入る。
体の奥底から魔力が溢れ出るのを感じた。
───水中都市
まずい。
天井が破壊され海水がものすごい勢いで飛び出している。
そこからは人間たちも共に流れ込んでくる。
俺の知っている人間はあんな程度の衝撃で死ぬのだが頑丈なものだ。
いいや違うな。
あの魔力量の膨大な個体が味方に強化魔法を随時発動している。
その加護があって成立している。
とりあえずはこの水を何とかしなくては。
「ディルガ様! 私が水を止めるので結界を修繕してください!」
出来るわけない。
だってチーズケーキ囲むだけでも限界だったのに。
いいややれ!
やらなかった場合助かる可能性は変わらない。
だがやればほんの数パーセントだけでも変わるはずだ。
〈私も演算の御協力をします! 先程見てだいたい把握しました!〉
《私も!》
(いやお前は何もしなくていい)
俺は先程と同じように思考する。
もう海水は真上80メートル辺りまで来ている。
引き伸ばされた体感時間の中で俺は全力で思考する。
イメージするのは防壁。
いかなる攻撃すらも弾く強固な壁。
厚く、固く、そして柔軟な。
もう既に海水の位置は頭上50メートルほどにまで来ている。
その瞬間リゼさんの声が聞これた。
その声と同時に頭上の海水は全て球体に丸められる。
それでもヒビからは新たな海水が入って来て俺らを溺れさせようとする。
それでもその海水を全て集めた。
流石リゼさん。
淙属性魔王だけある。
俺はリゼさんが作ってくれたチャンスをものにするため結界魔法を放った。
すると穴の空いたリゼさんの結界は徐々に修復されていく。
防御結界は盾のような物理的防御だから1箇所が破壊されても全体が壊れることがなかったのだか
俺は魔力をどんどんと込めていく。
やがて結界は完全に修復された。
俺の放った結界魔法だが、全体で見ればその大半はリゼさんの魔法で構成されているため、リゼさんの『魔法制御』によって管轄されている。
管轄と言えば『管轄者』。
本当によくやってくれた。
俺が乱雑に出した魔力を全て管轄し俺のイメージと合成し結界魔法へと変換。
それを完璧な位置で生成を開始させる。
まったく、俺は『管轄者』がいなくなったら生きて行けないな。
水中都市を囲む大きな防御結界はこれにて再生した。
そう中に人間がいるのにだ。
俺たちはこの場で人間たちおよそ90人を皆殺しにしなければならない。
別に殺したくは無いのだがか
『座標認識』にヒットする青い光は全て防御結界の内側にいる。
中でまだ3つの塊なった。
何を考えている。
部隊による高火力魔法?
それとも回復術士が後衛にいるのか?
「とりあえずリゼさんは右の奴らを! 俺は真ん中をやります!」
「わかったわ!」
その時丁度タイミングがよくレインが登場した。
ただし口を膨らませて、
「レイン……お前何食ってる?」
「はにほふってまへんお」
「ちゃんと喋れ!」
レインからはなんか香ばしくていい匂いがした。
こいつ長引くの分かってて口に詰め込んできたな。
まぁいい。
「レイン!お前は左の軍団を滅ぼせ」
「ほーひ」
「だーからちゃんと喋れ!」
こんなんでちゃんと戦えるだろうか。
「リゼさん……フパスさんが避難を完了させたようでしたら左から派遣して下さい」
「了解よ!」
よし……殺す。……殺す……殺せ……るか?
元々同種だった俺が……。
いやいや、まさか、人間らしい事なんて何もしてないし。
もう人間じゃないしな。
俺に種族は無いはずなのだがなんか固有スキル持ってるしな。
……種族などあるのだろうか。
……というかスライムの固有スキル?だったか?
俺もってるよな。なんか俺スキル会得しやすい体なのか?
『管轄者』のおかげだろうか。
俺はそこでスキル一覧を眺める。
ディルガスキル
○常用スキル
ㅇ『管轄者』の下
・『物理耐性』・『環境効果無効』
・『身体能力強化』・『炎属性耐性』
・『思考加速』・『意識拡張』
・『生存能力強化』・『座標認識』
・『暗視』・『光属性耐性』
・『再生』・『状態異常耐性』
○スキル
・『魂保存』・『時間の管理者』
・『切断者』・『虐殺者』
・『消化』・『分身』
・『蒼炎』・『回復』
・『結界創作』
〇属性適性
・『地属性適性』・『炎属性適性』
『結界創作』というスキルが追加されている。
どうやら先程の修復で会得できたようだ。
確かに上手くはいったがあれだけで?
俺は自分のスキル会得率に少し震えた。
そんな事を考えている間に人間たちは俺達を遠くの屋根の上から見ている。
顎を上げ俺達を見下ろす様な形で。
中央に立つのは大きな剣を持った人間の男。
その剣からは物凄い量の魔力が溢れている。
漏れ出る魔力だけであれだ。
どれだけの魔力が内包されているのだろうか。
あの剣ならば結界の破壊なんて簡単なことだろう。
他の奴らは雑魚だ。
魔力量も多くない。
レインとリゼさんなら一瞬で殲滅できるだろう。
俺達は背中を合わせ人間たちを睨み返す。
「行くぞ!」
「「「おう!!!」」」
肺の中の空気を声として出して走り始めた。
ディルガ様と離れて2秒程目の前には人間31人が立っている。
下等生物が……。
私は上で維持している大きな海水の塊を操作する。
人間達は私に一斉にかかってくる。
「遅いなぁ」
自分でも分かるくらいに私は不気味な笑みを浮かべる。
手を上に上げ頭上にある海水を31個に分裂させる。
分裂させても物凄い水量だ。
狭い部屋に入れたら満杯になるくらいの水量。
それをどんどんと圧縮していく。
どんどん、どんどん。
その圧縮した海水を人間の頭上に設置する。
「は?、なんだよこれ?!」
「ただの水だ! 気圧されるな!」
「そうだ! 敵はただの女だ!」
気合いだけは十分なのね。
だけど相手の魔力量、魔力制御力を測れないのは弱さ。
残念だけど君たちの負けよ。
圧縮した海水の下だけ圧をかけるのを止めて人間たちの頭に物凄い水速で大量の海水を撃ち込む。
瞬きする間もなく海水は人間の頭に直撃した。
人間たちは1人も反応できていない。
ディルガ様に撃ち込んだ淙属性魔法はもっと速かったし、近かった。
それを避けることが出来たディルガ様とこんな下等生物が同じ空間にいることに嫌気がさす。
人間は海水によって押し潰され海水を赤く染めた。
土地は少し斜めっておりその行き先は川になっている。
その川は私が流している。
私が農業の為にたまに降らす雨の水を排水する為に作られた施設なのだが、今は血水を排水している。
やがて川に流れ、混ざり、川を少し赤く染めた。
人間達の体は水圧で潰されバラバラになっている。
所々に骨などが散らばっている。
汚いな。
ん? 『念話』に反応がある。
(リゼ様! 住人たちの避難が完了致しました! 全員無傷です!)
(ご苦労。 私も人間たちを1部片付けた。 フパスは到着次第レインさんを手伝いなさい。 私はディルガ様の所に援護に行くわ)
(了解しました! 失礼します!)
フパスとの念話が終わった。
住民たちの避難は無事に完了したようだ。
流石フパス。
客人であるディルガ様とレインさんにこんな事をさせるとは……私は何を……。
水中都市軍が到着し次第お2人と交代する。
レインさんの方には送ってある。
私はディルガ様の所に行こう。
私は一息着く間もなくディルガ様の方へ走った。
その足はとても軽かった。
リゼ様かっちょええー!!!
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ディルガスキル
○常用スキル
ㅇ『管轄者』の下
・『物理耐性』・『環境効果無効』
・『身体能力強化』・『炎属性耐性』
・『思考加速』・『意識拡張』
・『生存能力強化』・『座標認識』
・『暗視』・『光属性耐性』
・『再生』・『状態異常耐性』
○スキル
・『魂保存』・『時間の管理者』
・『切断者』・『虐殺者』
・『消化』・『分身』
・『蒼炎』・『回復』
・『結界創作』
〇属性適性
・『地属性適性』・『炎属性適性』




