第30話 覚醒
フラムとの戦いからおよそ2日たった雨の日俺は病院のベットの上で目を覚ました。
体は動くが少し動かしにくい。
だが一応全回復はしているようだ。傷1一つ無い。
窓の外は雨が降っており、傘がポツポツと咲いている。
時間帯がよく分からない。だが外はまだ少し暗い。
おそらく明け方だろう。雲と雲の間から光が差している。
灰色の世界は静かに俺たちを包んでいた。
隣ではレインが寝ている。
俺のベットの横でコンパクトに丸まっている。
「……フッ……」
優しくレインの毛を撫でた。
レインの毛はフサフサしていて気持ちがよかった。
「んっ……」
やべっ。起こしちゃった。
いつもなら1時間起こし続けても起きないレインなのに今日はやけにすんなりと起きてしまった。
まだ朝も早いのに。
いや……違うな
レインはまるで子供のように俺のベットに頭を突っ込んで俺の腕に頬擦りをした。
毛はサラサラだった。
昔飼っていた犬を思い出した。
思い出に浸りながら周りを見渡してみると剣などの俺の荷物が綺麗に置いてあった。
あぁそうか俺あの戦いで。
俺はフラムとの戦いを思い出す。
だがその時の記憶ははっきりとせず断片的なものばかりだった。
あいつ……魔王だったのか……
なにをしたかったんだ?
ここら辺の魔物を皆殺しにしに来た、みたいな事言ってたよな。
だったら他のゴブリンの集落も、レインの故郷も全部あいつのせいだって事か?
……あいつのせいでレインはっ!……
ふと拳に力が入る。
今の力だ。対して強い力ではない。
だがあいつのせいでレインが追い出されたと思うと胸を締め付けられたのだ。
俺もそうだったしな。と言うか俺から出ていったんだっけ?
もう記憶が曖昧になっている。
魂がこの世界に侵食されているかのように。
そういえば俺新しいスキルゲットしてたよな。
『物理攻撃無効』
物理攻撃、1部痛覚を無効化する。
無効化した分のエネルギーは魔力へと還元される。
『物理攻撃無効』か……かなりヤバそうなスキルをゲットしたような気がするが。
おそらくこのスキルが無かったら俺は今ここにはいないだろう。
と言うかもう一度死んだらどうなってしまうのだろう。
元の世界に生まれるのか?
それともまたこの世界?
それかまた新しい世界?
正直なところこの世界はもう嫌だな。
俺は天井を見つめながら深いため息を零した。
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ディルガ殿がフラムとやらと戦い始めておよそ5分戦闘が経った。
場には風と音だけが響いている。
微かな波動がここまで飛んでくる。
助太刀に入りたいがどのタイミングで入っても邪魔にしかならない気がする。
ディルガ殿の壁どころかただそのに当然現れた迷惑なオブジェクトにしかならない。
そして直ぐに死んでしまう。そんなのは望んでいらっしゃらないはずだ。
異次元すぎる。
目で追うことすら出来ない。
こんな戦いは初めて見た。
相手の魔王……フラムだっただろうか、あいつの炎が夜闇を照らしていた。
フラムの炎は途切れ途切れだがディルガ殿達の行き先を示し綺麗な線を空中に描いていた。
ゴブリン達は悲鳴を上げながら逃げ出している。
だが俺が誘導するまでもない。
なにか手があるのだろう。そう思うほどに素早く適切な指示を全体に出し、避難を開始していた。
その頃にはゴブリンの集落の地面はもう既に限界だ。
ボロボロにえぐれて水平な部分などひとつも無い。
ん?速度が上がった?
視覚では全く分からない。
だが音が細かく大きくなった。
短い時間の中で行われる戦闘の数が明らかに違う気がした。
時々ディルガ殿やフラムが見える。
口が閉じない。
「……………………………………………………あ!!!!!!」
ディルガ殿が捕まった。
ディルガ殿は一方的に殴られている。
殴られた衝撃で下の地面にヒビが入っている。
だが俺の足は動かなかった。
俺の足……いや 助ける と言う考えが脳裏を過ぎる前にディルガ殿が手を打っていた。
機転きかしフラムを飛ばしたディルガ殿はまた目にも止まらぬ速さで戦闘を再開した。
微かに見えるディルガ殿の分身や地魔法。
それは完全にディルガ殿の一方的な戦闘を物語っていた。
それからは少しづつスピードが落ちていきディルガ殿がフラムの上に馬乗りになった。
そこからも確信を抱かせる一方的な戦闘が続きディルガ殿はなにかのスキルを使いフラムを溶かした。
それをフラムが蹴飛ばしたその時からディルガ殿は動かなくなってしまった。
(動け!助けろ!……クッ)
足が動かない。頭はこれだけ動いているのに対し、あれだけの戦闘を見せられて俺は動くことすら出来ない。
「助けろって言ってるだろ゛ぅがぁ゛!!!!!」
足を叩き俺は精一杯地面を蹴った。
それからはただの消化試合だった。
フラムはどこかに飛び立って行き俺は何もすることはなかった。
それからは倒れたディルガ殿を病気へ運び、ゴブリンをリーガル村に案内した。
医者によればディルガ殿は「肉体に過度な負荷をかけている」
と言われた。
あれだけの戦闘にあれだけの魔力消費。
当然だった。
それからまる2日ディルガ殿の隣で寝ることになるとは思ってもいなかった。
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とりあえず起きた事を報告するか……。
俺は音を出さないように立ち上がり人探しに出た。
「おっおはようございます。ディルガさん……ひぇ?!ディルガさん?!!」
「おは…そうですよ?」
「何してるんですか?!ちゃんとベットの上で休んでてください!今先生を呼んできますから!」
「あっはい」
なんだよ忙しい人だな。
朝から病気の廊下で大声をあげどこかに走っていった。
まぁとりあえず部屋に戻るか。
それから部屋に戻り寝ているレインの横で先生を待っていた。
コンコンコンッ
「どうぞー」
「失礼します。ディルガさん体調の程はどうですか?」
「はい。体も少しづつ力が入るようになってきて、いい感じです」
「そうですか…それは……」
それは?
「異常ですね」
「?、えっと、と言いますと?」
「まずもう起きてる時点で異常です。本来なら3週間以上寝たきりでも頷くしかないような状態でしたので、」
「え?そんなに?……いや多分スキルのおかげですね」
「そんなスキルあります?」
「体に傷はなかったと思うんですけど」
「いや来た時は傷だらけでしたよ?」
あっえ?本当?
あの時普通に再生してるものだと思っていたんだが追いついてなかったか。それほど魔力を消費した覚えはないが。
「確かに傷は完全に消えてますね……信じ難いですがその不思議なスキルの存在を認めるしかないようですね」
「今日の午後に出れます?」
「いや、魔力が回復するまでは安静にしてた方が。その点滴にも魔法元素を含ませていますのでここにいた方が早く治りますよ」
「そうですか……分かりました。いつ頃までですかね?」
「早くて3日ですね。お食事を用意してきますね」
「すいません、ありがとうございます」
そう言い残すと医者は部屋を出て行った。
食事は正直いらないが食事を取って魔力に還元すれば早く退院出来る。そう思ったのだ。
はぁ……3日か……暇だなぁ。
レインと話でもして過ごすか。
暇な3日間を覚悟した元引きこもりであった。
んーなんか最近遅いですね。
すいません。
そして次回はホヤホヤな日常回にするつもりです。
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ディルガスキル
○常用スキル
ㅇ『管轄者』の下
・『物理攻撃無効』・『環境効果無効』
・『身体能力強化』・『炎属性耐性』
・『思考加速』・『意識拡張』
・『生存能力強化』・『座標認識』
・『暗視』・『光属性耐性』
・『再生』・『状態異常耐性』
○スキル
・『魂保存』・『時間の管理者』
・『切断者』・『虐殺者』
・『消化』・『分身』
・『蒼炎』
〇属性適性
・『地属性適性』・『炎属性適性』




