第26話 ゴブリン
リーガル村を出て1時間半ここまでずっと走り続けていた。
髪を空に靡かせながら。
「ディルガ殿!もう少しでゴブリンの集落につきます。」
「おう!じゃぁそこで休ませてもらおう」
知らせを聞き安心した俺はゴブリンの集落に向かった。
「見えてきましたね」
「おぉ!あれか!」
目の前に広がるのは……木の柵。
上は驚く程に尖っていて他者の侵入を拒んでいた。
「誰だ!貴様ら!」
えっ、えっと、まぁそおなるわな。
「旅人だ。少し集落で休ませて欲しいのだが」
「断固拒否だ!」
「いやーそこをなんとか」
「だめだ!」
んーまぁ当然の反応か。
ゴブリンの門番は鬼のような形相で俺らを拒絶した。
鋭く尖った木の槍をこちらに突き出しながら。
「何故そこまで拒絶するのだ」
おいレイン……それは言ったら…。
「状況を説明してくれ」
そんな事簡単に言うわけないやr
「えぇ、現在t」
「いや言っちゃうんかい!」
「「?」」
「だって俺らがスパイとかだったらどうすんだよ!」
「「……」」
門番とレインがこちらを無言で見つめている。
「あっ…すまんすまん。つい……。」
「いいですかね。現在他の集落と牽制しあっている状態でして。けが人も沢山出ていて、」
「ディルガ殿……」
分かっている。助けろと言いたいんだろ。自分と合わせているんだろう。辛いのだって全て分かっているつもりなのだろう。
「けが人の所に案内してくれ」
「いや、でも……立ち入らせるのは……」
「早くしろ、命がかかっているのだろう?」
「うぅ……はっ、はい。こっちへ」
渋々承諾しゴブリンの門番は俺らを案内する。
その背中は心配そうだった。希望に満ちている様子はなかった。
「こっここです。何かしたらこっ殺すからな!」
「はいはい」
俺は適当な返事を返した。
人型だし。スライムの次だとなんか恐怖感が煽られなかった。ん?いやスライムもべつに煽られなかったが。
そしてその中は息が詰まるような光景が広がっていた。
綺麗に並べられたゴブリン達の体からは大量に出血していた。部屋中に血と薬草の匂いが充満している。非常に痛々しい風景に嫌気がさしてきた。
今こそ回復魔法を使う時だ。そう思った。
俺は病院では回復魔法を使わなかった。それにはいくつかの理由がある。その主な理由はガイラか報われないからだった。
言い方に語弊があるように聞こえるが、要するに2年もかけて会得した魔法を俺があの時に出来てしまったらガイラの努力を否定してしまうのではないか。
そう思ったからだ。だが今は使うべきだ。たとえ使えなかったとしてもやる事に意味がある。
「少し離れてろ」
ゴブリンの門番はその言葉に警戒しているようだったがひっそりと部屋から出ていってくれた。レインも同様に。
俺は小さく頷くと俺は時間と魔力の流れを強く意識した。
イメージするのは傷口を塞ぐ。いや怪我を負う前の状態に戻す。時間の逆流。魔力を膨張。それを一瞬で圧縮。それらを分裂させ傷口に干渉する。
戦闘中に見たガイラの回復魔法のやり方を真似するのだ。
魔法元素は薄く青色に光ながら傷口に降りかかった。
その魔法元素を細心の注意をはらい操作する。
ゴブリン一人一人を丁寧に。
優先すべきは重症患者、より体の欠損が激しい個体を優先する。中にはどこかの部位が大きく欠損している者もいた。魔力を振り絞りけが人を治していく。
「うっ……」
その時からだろうか。激しいだるさを感じた。
吐き気、目眩に体を襲われながらも回復魔法を続けた。
(意識を保ち続けろ!)
キィィィィィィィン!
そんな小高い音が脳裏に響く。頭痛が酷い。
平衡感覚が欠如し体が激しく揺れている。
足元がふらつき始めた。
「おっと!」
すかさずレインが支えに入ってくれる。
「ありがとう……レイン…だが……少し……離れて…て……くれ」
俺の魔法の効果範囲内にレインがいると間違ってレインに干渉してしまいそうになる。
干渉しても害はないが、俺の魔力が持ってかれるのだ。
それだけは防がなければならなかった。
レインは心配そうな表情を浮かべたがやがて真意を理解しそっと離れてくれた。
「あと…………少し……」
残りのゴブリンは3人。
傷口はゆっくりと塞がっていく。
いや、ゆっくりと元の状態に戻っていく。
そういった方が正しいだろう。
やがて全てのゴブリンの傷が治癒した。
その時久方ぶりの眠気に襲われ意識を閉じた。
体の魔力はほとんど枯れていた。
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目の前が赤黒い。少しづつ目を開くと明るい日差しが入ってきた。『光属性耐性』を持っているがとても眩しかった。
「おぉ!お目覚めになられましたか!」
誰かの声が聞これる。レインでは無い。ゴブリンの門番でもない。
ボヤける視界で一生懸命ピントを合わせる。
そこには座っていたのは緑色の肌をしたゴブリンだった。
「おっお前は?」
「この集落の長を務めておりますメリルと申します 」
「メリルさん……ありがとう…ございます。」
「いえいえ敬語など結構でございます。なんなら貴方様に命令を頂けるなら椅子にでもなりましょう」
「いやっそれはいいかな」
「失礼いたしました。我々どもが椅子などとんでもない。踏み台にして下さい」
「そこじゃないから!」
ったく。ドMゴブリンが……。
「では、」
「いやいい……」
「そうでございますか。では私にできることがあれば何なりと」
「俺がどのくらい寝てたか分かるか?」
「はいおよそ2時間程です」
俺は2時間も寝ていたのか。
そしてもう1つは俺には聞かなければならないことがあった。
「この集落の現状について教えてもられるか」
辛いであろう。長なら尚更。踏み入った質問で悪い。
そう心の中で思った。
多少の罪悪感が身を襲った。
「はっはい……現在ここら周辺のゴブリンの集落は3つあるのです。その3つの集落は互いに牽制しあっている状態なのです。」
「牽制って、めちゃくちゃ怪我してんじゃねぇかよ」
「はいそうなのです。ここ最近で急に行動が激しくなりまして。昨夜ゴブリンの集団に襲われました。どっちの集落のゴブリンかは明らかではありません」
夜の犯行……レインのと同じやつか?
いやこれは他のゴブリンだという可能性の方が高いだろう。だが頭の片隅に置いておこう。
犯行時間。反抗行為。
「他のゴブリンの集落はどんな状況か分かるか?」
「申し訳ございません。それにおいては情報が不足しており……」
「そっか、場所は?」
「他の集落の事でしょうか?」
その後地図を使って説明してくれた。
1つの集落は北西に1km程、もう1つは北東に1.5kmの位置に存在しているそうだ。
行くならば北西の集落からだな。
「レインはどこに?」
「レイン様なら向こうにいらっしゃいますよ。お呼び致しましょうか?」
「いやいい。俺はこのまま集落を出る」
「お礼がまだです」
「礼はいい、」
そう言い残し俺は振り返ることなくその部屋を出た。
「レイン!」
「はっはい!」
レインは1人、部屋で窓の外を眺めていた。
何してんだこいつ。
「北西のゴブリンの集落の様子見に向かう。今からだ。準備しろ」
「了解しました」
俺らはすぐさま準備を整え集落を出た。その滞在時間およそ2時間と少し。そのうち2時間は寝てたんだけどね!アハハ!
ゴホン……では行こう、2つ目のゴブリンの集落へ!
ゴブリンが出て来ましたね。
北西の集落はどのような現状なのでしょうか?
次話をお楽しみに。
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ディルガスキル
○常用スキル
ㅇ『管轄者』の下
・『物理耐性』・『環境効果無効』
・『身体能力強化』・『炎属性耐性』
・『思考加速』・『意識拡張』
・『生存能力強化』・『座標認識』
・『暗視』・『光属性耐性』
・『再生』・『状態異常耐性』
○スキル
・『魂保存』・『時間の管理者』
・『切断者』・『虐殺者』
・『消化』・『分身』
・『蒼炎』
〇属性適性
・『地属性適性』・『炎属性適性』




