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故郷への遠い道(第三話)黒幕自白する…

「さて、今度は正直に話してもらえるのかしら?」


 私は縛り上げて正座させた男たちに向けて質問する。


 男たちの頭上には、大きなトリケラトプスの足が、今にも踏み下ろされる形のまま静止している。

 右の男の頭上にセキホウの左足、左の男の頭上にハクウンの右足という具合だ。


 二頭は待ての命令でその姿勢を維持しているが、普段あまりさせない姿勢に少しあげた足がぷるぷるしている。


「そろそろ白状してくれないと二頭ともきつそうなのよね…

 まあ、私はどっちでもいいんだけど」


 男たちは自らの頭上を見上げ、巨大な足が今にも落ちてきそうな状況を改めて確認し、お互い顔を見合わせる。


 もう一押しという所か。

 私は、二頭に声をかける。


「ハクウンもセキホウも我慢できなくなったら足下ろしてもいいからね」


「わっ分かった。

 しゃべる。今度こそしゃべるからこいつらを何とかしてくれ!」

 ついに我慢できなくなった公爵の手下が音を上げた。


「オーケー!

 騙したらノータイムでのしイカ並みの平面生物になってもらうわよ。」

「のしイカが何かは知らないが、俺たちにとってよくないことだということは分かる。了解した。

 それで、何が聞きたいんだ。」


 私はハクウンたちを下がらせ、質問を開始する。

 ハクウンたちには近くの草原で食事を取らせる。


「まず、ここから先にもあんたたちみたいな妨害するよう雇われた人間がいるのかということね」

「それに関してはたぶんいると言うことしか答えられない。

 俺はヨークシャー公爵家、そいつはステットブルグ公爵家で警備を担当している公爵家の衛兵だ。

 公爵様の子飼いという意味では俺たちしか派遣されていないが、他にも依頼が出されている可能性がある。

 犯罪ギルドには喜んで引き受けるような輩も多いからな」


「犯罪ギルドってなに?」


「犯罪者を雇っている非合法組織だ。

 表向きにはないことになっているが、今回のような件では、かなりの身分の貴族も利用している。

 対象の殺傷や強盗を引き受けるのは、まっとうな集団ではまず無いからな」

「裏の冒険者ギルドみたいなものなの?」

「そういうことだ。金額次第で人殺しもするようないかれた集団だ。」


「公爵家がそこまでやるものなの?」


「今回の件は5兆マールもの大金がかかっている。

 やらない方がどうかしている」


「次に仕掛けてくるとしたらどこが怪しい?」


「まあ、俺たちなら最後の訪問地のゲルマノイル帝国だな」

「どうしてそう思うの」

「まず、期日に間に合いそうかどうか正確に判断できる。

 間に合わないのなら仕掛ける必要は無い。

 さらに、ゲルマノイルは現在アルタリアに対して対立する場面が多々ある。

 これは、二国間に近々戦争が起こる兆候でもあり、だからこそそこでハイゼンベルグ公爵に何かあっても、公爵家は疑われない可能性が高い。」


「他に危ない場所はないの」

「地形的に危ないのはここから2つ先のヤーレソール連邦のヤーレ山脈にあるヤーレンソの渓谷だな。

 あそこで足を踏み外せば谷底に真っ逆さまだ!」

「他には?」

「他には知らない。

 本当だ」


 もう一人の男も頷いている。

 これ以上の情報収集は無理だろう。私は二人の男をハクウンたちの担ぐ輿に放り理込むと、男たちを官憲に引き渡すべくボゴワの街に戻った。

 そろそろお父さまも目を覚ましていることだろう。



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